2003年8月18日(月)「しんぶん赤旗」
「長袖を着ないと寒い」というのは「ササニシキの古里」といわれてきた宮城県古川市の農民です。東北の太平洋側を中心に長引く低温と日照不足による冷害が心配され、消費者への影響も懸念されはじめました。
冷夏で「夏商戦」が大きな打撃を受けた大手スーパーは「夏に見切り」をつけて、「秋物商戦」を前倒し。本格実施に入った十七日、その目玉は「新米入荷セール」です。
青森、岩手、宮城、福島四県の作況の「著しい不良」が伝えられ、九州・四国の早場米産地では卸値が急騰し「安定供給ができずに困っている」というのは都内のダイエーの米担当者。「昨年並みの五キロ千九百八十円で販売していますが、この先予想がつかない。産地を北上しながらお客さまの要望に応えられるようにしている」。イトーヨーカ堂の店頭担当者は「宮崎産が品薄で高知産のコシヒカリをスポット買いして対応しています。五キロ二千百八十円で昨年より少し割高です」と話します。
宮崎産コシヒカリ四百九十六トンが自主流通米価形成センターの入札にかけられたのは十二日。六十八業者が入札を申し込み、落札したのは四業者。業者の競争は十七倍にもなり、六十キロあたり、八日の徳島産、熊本産の一万九千円台から二万四千九十一円もの高値になりました。宮崎産コシヒカリとしては十年前の大冷害で急騰した二万五千六百四十九円以来の高値です。
宮崎県農民連の村尻勝信書記長(59)はいいます。「資金力のある大手卸業者しか落札できなかった。農水省が七月二十九日に低温・日照不足対策本部を設置すると、大手卸業者の仲買人が一軒一軒農家をまわり買いあさった。七月の終わりから八月初めには県内の米農家には売るものがなかった」
こうした大手卸業者の買い占めの動きは関東地方でも始まっています。千葉県の早場米産地の農民は「農協の値段より高く買うと仲買人がいって回っている。収穫が昨年より減るのは確実で、千円、二千円程度の高値では減収です。コシヒカリで六十キロ二万円の声が聞けるだろうか」。
農水省の担当者は「六月末現在で二百六十九万トン(輸入米含む)の備蓄があります。十年前の大冷害のときは備蓄が二十三万トンしかなかった。買い占めなどのパニックにはなりません」と胸を張ります。
しかし、前出の村尻書記長は「政府のいっているのは九六年ごろからの備蓄米と輸入米を含んだもので、餌米にするものも含んでいてそのうちどれだけ食料に回せるのか」と危ぶみます。
「買い占め、便乗値上げなどを許さず、国の責任で国民の主食を確保させるたたかいをすすめたい」と話しています。