2003年8月6日(水)「しんぶん赤旗」
指定暴力団山口組系暴力団が複数のヤミ金融業者を指揮し、組の資金源にしていたとされる事件で、警視庁生活経済課と広島、愛知両県警などの合同捜査本部は五日までに、出資法違反(高金利)容疑で、ヤミ金融業グループの最高責任者で静岡を拠点とする山口組系五菱会幹部の梶山進容疑者(53)を指名手配しました。また、同会組員の松崎敏和容疑者(34)を逮捕するとともに、五菱会東京事務所など関係先数十カ所を家宅捜索しました。
捜査本部は一連のヤミ金融事件で、梶山容疑者が暴力的な取り立てを行う山口組系業者の元締め的存在で主犯格と断定。ヤミ金業者の上納金が同組の大きな資金源になっているとみて、金の流れを追及します。
調べによると、梶山容疑者らは「スタート信販」など延べ二十五店舗のヤミ金融店舗を経営。二○○二年四月上旬から十二月中旬までの間、札幌市内の主婦(47)ら六人に約二百万円を貸し付け、法定利息の約四十九倍に当たる百二十五万円の金利を受け取った疑い。
捜査本部は東京都豊島区内の金融機関の貸金庫や松崎容疑者の関係先から、ヤミ金業者が取り立てた現金二千八百十万円を押収しました。
梶山容疑者が設立した金融会社は連携しながら顧客情報を管理する計約二十の「センター」をつくり、その下に十―二十店舗のヤミ金業者を組織。捜査本部は未確認の店舗を合わせると、都内だけでも約千店が五菱会系列とみています。
指定暴力団山口組系暴力団山口組系五菱会組員松崎敏和容疑者(34)のヤミ金融業グループがこれまでに、不法利益で約百億円を荒稼ぎしていたことが五日、警視庁生活経済課と広島、愛知両県警などの合同捜査本部の調べで分かりました。
捜査本部は、松崎容疑者らは各業者の売上金計約百億円のうち約七十億円を五菱会への「上納金」に充てていたとみています。
一方、梶山容疑者は二十以上の同様のヤミ金融業グループを指揮し、それぞれ売上金の七割を上納させていたとされ、少なくとも約千四百億円以上を集めていたとみられています。
全国で二万にも上るとされるヤミ金融業者は、暴力団とつながる業者が多いのが特徴で、山口組など指定暴力団の有力な資金源になっているとみられています。警察庁の調べでは、昨年一年間のヤミ金融被害者は十二万人に上り、摘発件数の約四分の一に暴力団が絡んでいます。
今回、主犯格の幹部が逮捕された山口組系五菱会は、都内だけでも約千店をもつ、ヤミ金融を資金源とする典型例です。警視庁などは、都内での初の本格的摘発として今年一月末に山口組系ヤミ金融業者を逮捕、半年以上を経てやっと主犯格逮捕までこぎつけました。五菱会が単独でおこなった犯罪なのかどうか。上部組織の関与や資金の流れなど解明すべき点は残されています。
多重債務問題に取り組む各地の民主商工会や被害者の会、弁護士らは、日本共産党の国会議員とも協力して、警察や行政に取り締まり強化を繰り返し要請。全国ヤミ金融対策会議などは、昨年来から合計一万を超えるヤミ金融を告発してきました。
こうしたなかで警察の取り締まりもすすみはじめています。しかし、二〇〇二年度のヤミ金融事件での逮捕者は三百二十人にすぎず、一審での実刑判決はまだ十二人です。
深刻な被害は後を絶っていません。六月には、大阪府八尾市でヤミ金融業者の執拗(しつよう)な取り立てを受けた親族三人が電車に飛び込み心中するという悲劇が引き起こされています。
サラ金などが利息制限法(上限金利15―20%)に違反する高金利で貸し付ける違法事態が公然とまかり通っています。一度かりれば雪ダルマ式に借金がかさみ、多重債務者が増え、その結果、ヤミ金融による被害者も増え続けています。この深刻な状況打開には一刻の猶予も許されません。
ヤミ金融への規制強化の法案が成立するなど、世論と運動の高まりのなかで、ヤミ金融に対する包囲網が強まっています。この機会に取り締まりをいっそう強化することが求められています。(森近茂樹記者)