2003年8月5日(火)「しんぶん赤旗」
厚生労働省所管の特殊法人、雇用・能力開発機構(旧雇用促進事業団)は、全国二千七十カ所の「勤労者福祉施設」の売却を進めていますが、これまでに売却した千五百六十三施設のうち、半数以上の八百五施設が、消費税分を上乗せして「一万五百円」以下で売られていたことが四日までにわかりました。これらの施設は、雇用保険を使って建設したもの。うち三施設は千五十円という超安値で、大損のツケは結局、労働者に回されることになります。
雇用・能力開発機構は、自前で保養施設を持てない中小企業に働く勤労者の健康増進を目的に、一九六三年から宿泊施設や体育センターなど勤労者福祉施設の建設を進めてきました。神奈川県のスパウザ小田原や東京都の中野サンプラザなど十施設以外は、自治体から借地して、その土地の上に建てられました。
同機構が来年から独立行政法人に移行するのにともない、二〇〇五年度末までに全施設の売却・整理を決め、関係自治体に購入を持ちかけてきました。
すでに全体の七割を超す千五百六十三施設を売却しましたが、問題はその価格。小田原市が買収、国際的なホテルチェーンに運営を委託する運びになった宿泊施設付き健康施設、スパウザ小田原は、総工費四百五十五億円をかけたのに売却は約八億円。さらに、消費税込みの「一万五百円」で売却されたのが、八百二施設もありました。埼玉県川越市の「川越武道館」など三施設(別表参照)は、千五十円です。「建設費八億四千万円の「伊勢志摩いこいの村大王」(三重県大王町)など、十万五千円というのも三百施設以上もあります。
この結果、これまでに自治体などに売却した千五百六十三施設の建設費(増築費込み)の総額千九百八十億円に対して、売却額は八億四千万円(0・4%)というありさまです。
さきの国会で、自民、公明、保守新の与党三党が、失業手当の給付削減など雇用保険法の改悪を強行しました。日本共産党の小池晃参院議員、小沢和秋衆院議員は、数千億円もの雇用保険料をつぎこんで施設を建設しながら二束三文で売却しようとしていることを指摘、「乱脈、失政のつけを労働者や地元自治体に押し付けることは許されない」と批判しました。
こうしたなか、厚労省は残り四百七十七カ所について、売却交渉がまとまっている施設を除き、自治体との話し合いをいったん中止。価格算定方法の見直しを検討しています。
施設名(通称含む) 建設費 川越武道館(埼玉県) 2880万円 わかしおテニスコート 485.5万円 (和歌山市) 川内プール 2770万円 (鹿児島県川内市)