2003年8月5日(火)「しんぶん赤旗」
二〇〇二年度でのべ三百六十六日にものぼる日米共同演習―。本紙の情報公開請求にたいし防衛庁が開示した資料は、米軍と自衛隊との軍事一体化がどこまできているかの一端を明らかにしています。(田中一郎記者)
海上幕僚監部作成の報告書「平成14年度小規模基礎訓練の実施成果について」は、六十回にのぼった同訓練について「いずれの訓練も短期間の調整にもかかわらず、整斉かつ円滑に実施できた」と指摘。「日米共同運用態勢が定着した証左」と評価しています。
さらに今年三月、イラク戦争に出撃した空母キティホークに代わり日本周辺に展開した空母カールビンソンとの小規模基礎訓練を積極的に実施したと指摘。「通常機会のない部隊との訓練であっても全く問題がなかったことから、日米共同運用態勢の一層の強化に寄与できた」として、米海軍と海上自衛隊との共同作戦態勢を誇っています。
同報告書はまた、航空管制訓練である「AIC訓練」を積極的におこなったことを「極めて有益であった」と評価しています。
AIC訓練は三回実施されましたが、海自からは、いずれも高性能レーダーをもつイージス艦が参加。米軍からは、空母キティホークやカールビンソン、その艦載機が参加しています。
海自は、訓練の具体的な内容を明らかにしません。しかし、軍事専門家は「空母艦載機が敵味方に分かれておこなった対空戦訓練や対潜訓練を、海自がイージス・システムを使ってモニターし、日米でその情報の共有化ができるかといった訓練をおこなったのではないか」といいます。
航空幕僚監部作成の「小規模日米共同訓練実績」によると、空自の南西航空混成団(那覇基地)のF4戦闘機が今年二月に二回、沖縄の米空軍嘉手納基地に配備されている特殊航空部隊と要撃訓練をおこなっています。
同文書は、米側の参加機を、第三五三特殊作戦群第一特殊作戦中隊(1SOS)所属の「C130」としています。同中隊にはMC130特殊作戦機が配備されており、「C130」とは、この特殊作戦機の可能性があります。
防衛庁は、同特殊作戦部隊との共同演習は「めずらしいこと」と説明します。
MC130は、敵地侵入や敵地にいる部隊への補給などを任務としています。沖縄の伊江島で、兵員や物資のパラシュート降下訓練を繰り返し、日米の要撃訓練のあった二月二十七日と同じ日に、MC130から特殊部隊兵士が基地のフェンス外に降下する事故が起きています。
防衛庁によると今回の訓練は、空自の戦闘機が、米軍機を侵入してきた仮想敵にみたてて迎え撃つ訓練。一方、米軍機も戦闘機に要撃を受けた場合の回避訓練をしたといいます。
また、今回開示された統合幕僚会議情報本部作成の報告書「平成14年度統合情報訓練の成果について」は、「周辺事態」を想定した「統合情報訓練」をおこなっていたことを明らかにしています。
「周辺事態」とは、米国のアジア太平洋地域での介入戦争によって引き起こされるもの。一九九九年成立の周辺事態法は、日本が米軍を軍事支援することを定めています。
同報告書によると、「統合情報訓練」は、昨年十一月の日米共同統合実動演習のなかでおこなわれた「在外邦人等の輸送に関する指揮所演習」の一環として実施されました。訓練では、「統合情報見積り」を作成し、統幕事務局に提出したとあります。
「情報見積り」とは、統幕作成の用語集によると、「我が任務達成に重大な影響を及ぼす敵の可能行動」や「我の乗じ得る敵の弱点を明らかにすること」とされていますが、演習の細部について防衛庁は明らかにしません。
また、弾道ミサイルの発射を想定した「早期警戒情報等対処訓練」の実施時期については、米国に「不当な不利益」を与えることなどを理由に不開示とされました。
主な演習名 回数 日数 統 幕 日米共同統合実動演習 1 12 日米共同統合通信訓練 1 3 早期警戒情報等対処訓練 1 ※ 統合情報訓練 2 4 小計 5 19※ 陸上自衛隊 日米共同方面隊指揮所演習 2 26 米国における市街地戦闘訓練 1 22 米陸軍との実動訓練 2 29 米海兵隊との実動訓練 2 25 小計 7 102 海上自衛隊 小規模基礎訓練 60 76 日米共同訓練 1 4 日米共同指揮所演習 1 11 掃海特別訓練 3 38 基地警備特別訓練 1 2 自衛艦隊総合訓練 1 12 リムパック2002 1 29 小計 68 172 航空自衛隊 コープノースグアム02 1 25 防空戦闘訓練 2 3 指揮所演習 1 11 救難訓練 1 2 小規模日米共同訓練 32 32 小計 37 73 総計 117 366※ (注)回数、日数ともにのべ数 ※早期警戒情報等対処訓練は、実施日数が不明なため、ゼロとして計算