日本共産党

2003年8月4日(月)「しんぶん赤旗」

また池子の森を壊すのか

米軍住宅 約束破り800戸

原子力空母配備にらむ


 神奈川県逗子市と横浜市にまたがる米海軍・池子住宅地区(総面積約二百八十八ヘクタール)には、すでに八百五十戸余の米軍住宅があります。政府はここには、「追加建設はしない」との県、逗子市と結んだ約束を破って、新たに八百戸の米軍住宅を建設する計画を打ち出しました。米軍との関係を最優先する政府の姿勢に批判の声があがっています。(神奈川県 岡田政彦記者)


横浜市部分に追加 国が建設計画発表

図

 旧日本軍の弾薬庫跡で手つかずの豊かな緑と生態系に恵まれた池子の森。この森を破壊して米軍住宅の建設がすすめられ、現在、逗子側の約八十二ヘクタールに八百五十四戸の米軍住宅(一九九八年三月完成)があります。

 米空母機動部隊を抱える横須賀基地の住宅不足を解消するための「適地」として、横須賀に近い池子が選ばれた経緯があります。

 この米軍住宅建設に対し、逗子市民は十数年間にわたり市長選挙、市議選挙などで九回も「米軍住宅ノー」の審判を下していました。

 その反対の声を押し切って米軍住宅を受け入れさせるために当時、国が持ち出したのが、「池子への米軍住宅追加建設はない」とする国、県、逗子市の三者合意(一九九四年)でした。合意書では「住宅建設戸数の限度を遵守すること」などの逗子市の要望に対応することが明記されています。

 ところが、政府は突然、「三者合意は横浜市には効力は及ばない」と言い出し、池子住宅地区の横浜市部分(金沢区、約三十七ヘクタール)への米軍住宅約八百戸の追加建設を発表し、逗子市を無視する態度をとっています。

 嶋口防衛施設庁長官は、中田宏・横浜市長、松沢成文県知事には政府の方針を説明しながら、逗子市には何の説明もしていません。

「追加なし」は明白 地元・逗子が抗議

 しかし、当時の政府の文書をみても政府が逗子、横浜の区別をせず、池子の基地全体を対象に「米軍住宅の追加建設はない」と市民に約束していたことは、明白です。

 横浜防衛施設局が、「池子の米軍家族住宅建設事業」について八八年一月に発行したパンフレットをみると、「全体施設配置図」として、逗子市、横浜市にまたがる池子の全体を「提供区域」と明示し、「知事調停案を尊重して最大限環境に配慮しました」と強調しています。

 「知事調停案」は、三者合意に先立つ八七年五月、当時の長洲一二知事が、米軍住宅受け入れを逗子市に迫る立場から示した文書ですが、同調停案でも「米軍住宅の追加建設は無いものとする」と明記していました。

 また、米軍住宅建設の環境アセス手続きで、国がまとめた「環境影響予測評価書の概要」でも、池子の全域を対象に「本事業は、提供用地290haのなかの約80haを予定している」と明記。横浜市部分については「平坦部が約14haであり、本事業の住宅建設用地としては狭小であること、道路状況及び交通の利便性等を検討した結果、必ずしも、良好であるとは言い難い」として、「適地から除外」とまで書いてあります。

 今回の追加建設は、こうした経緯と約束を根底からくつがえすものです。

 日本共産党逗子市議団の岩室年治団長は「国、県、市の三者合意に横浜市部分は含まれないなどというのは、とんでもない話」と怒りをぶつけます。

 長島一由・逗子市長も、米軍住宅追加建設は「三者合意をくつがえすもので、到底認められない」と抗議し、市民、市議会と一体で追加建設に反対しています。

 一方、松沢県知事は「遊休施設は早期返還をお願いしたい。三者合意の経緯を徹底して精査する」とのべ、中田横浜市長は「市民、市議会の意見を聞き、慎重に対応の方向を定める」としています。

遊休化基地の返還 共産党「無条件で」

写真
米軍住宅の追加建設に反対している長島・逗子市長(正面)と懇談する(右へ)大森、小泉、はたの(左)の各氏=7月30日、逗子市役所

 日本政府が、このように地元自治体、市民との約束をほごにして米軍住宅建設にこだわる背景には、横須賀を母港とし、二〇〇八米会計年度中に退役予定の空母キティホークに代わって、米軍がより大型の原子力空母を横須賀に配備し、基地を強化する動きがあります。

 もともと、池子への住宅建設にあたり、米軍は「住宅不足は約千三百戸」としていました。さらに原子力空母が配備されれば、乗組員は、キティホークを約六百五十人上回るといわれます。

 今回の米軍住宅建設は、老朽化した根岸住宅地区からの移転分四百戸と、住宅不足に対応する追加分四百戸の計八百戸ですが、それだけでは米軍の住宅不足は解消されません。今回の追加建設を許せば、上瀬谷基地などへのさらなる追加建設も懸念されます。

 日本共産党は大森たけし衆院議員(比例代表・神奈川五区候補)と小泉ちかし(参院比例代表候補)、はたの君枝(同神奈川選挙区候補)両参院議員をはじめ国会議員団、県議団、逗子、横浜両市議団が県内の米軍基地の無条件全面返還の主張をかかげて、遊休化している上瀬谷、深谷、富岡の三基地の無条件即時返還とともに、池子への米軍住宅追加建設撤回を求めて全力をあげています。


3施設使用されず

 防衛施設庁は、横浜市内の米軍基地四施設(上瀬谷、深谷、富岡、根岸)返還の日米協議で、引き換え条件として池子への米軍住宅追加建設計画を出してきました。四施設のうち、現に米軍住宅がある根岸を除く三施設は、住民と日本共産党の調査と追及で、すでに基地として使用されず遊休化していることが明らかになっていました。

 上瀬谷基地内に土地を持つ地主の森茂徳さんが土地返還訴訟を起こすなど、県民のねばり強いたたかいが、四施設返還の日米協議の内容に反映しています。

 瀬谷区に住む上瀬谷基地問題懇談会・代表委員の臼井虎吉さん(75)は、「私たちは、基地の無条件返還を要望し、米軍住宅建設に反対してきた。基地返還は当然ですが、池子への米軍住宅建設はとんでもない」と批判します。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp