2003年8月3日(日)「しんぶん赤旗」
北朝鮮の核不拡散条約(NPT)離脱と核兵器開発宣言は東アジアと世界の平和と安全保障に大きな問題となっていますが、地球上には米国とロシアを中心に三万発の核兵器が蓄積され、そのうち約一万七千発がいつでも使用できる状態にあると推定されています。米ロ両国を含み国連安全保障理事会常任理事国でもある五大核兵器国には、NPTで核兵器廃絶への努力が義務付けられています。しかし、この義務の実行はほとんどすすんでいません。その中でブッシュ米政権が突出して核戦力の強化をすすめています。
米誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』に連載されている米シンクタンク、天然資源防衛評議会(NRDC)のニュークレア・ノートブックや最近の報道から、世界の核兵器状況をみます。
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| 保有国 |
米国とロシアは世界の核兵器の96%を保有してます。
米国の保有する核兵器は推定約一万六百発。このうち、八千発近くがいつでも使用できる状態で配備されています。昨年明らかになったブッシュ米政権の核態勢見直し(NPR)では、「実戦配備された戦略核弾頭」を二〇一二年までに千七百−二千二百発に削減することになっています。しかしこの計画は、現在、ミサイルなどに装着されている核弾頭をいつでも使用できるように備蓄しておくもの。二〇一二年段階でも、米国は現在と変わらない約一万発の核兵器を保有することになると推定されています。
NPRは、ブッシュ・ドクトリンの核心をなす先制攻撃戦略と核兵器使用構想を組み込んでいます。そのために“使用できる”新たな核兵器開発に着手しています。
ロシアの保有する核兵器は一万八千六百発と推定されます。このうち八千六百発が実戦配備されているとみられます。
二〇〇二年の米ロ戦略攻撃兵器削減条約は二〇一二年までに、配備された戦略核弾頭を両国がそれぞれ二千二百発以下に削減することを定めています。
英国は、一九七〇年代に三百五十発の核兵器を保有していました。労働党政権が九八年に、爆撃機に搭載していた戦術核兵器を廃棄し、実戦配備する核兵器をトライデント型原子力潜水艦配備の海洋発射弾道ミサイル用核弾頭二百発以下とすることを宣言しました。保有する原潜四隻のうち一隻が常にパトロール任務についており、一隻には四十八発の核弾頭が搭載されています。英国は同年までに戦術核兵器の全廃を完了しています。
フランスの核兵器は九二年の五百四十発から削減され、現在三百五十発。このうち、二百八十八発が三隻の原潜に搭載された四十八基の中距離ミサイルに装着されています。フランスは地上発射弾道ミサイルと海軍爆撃機の核爆弾を廃絶しています。
中国の核兵器は九三年の四百三十五発をピークに削減され、現在約四百発と推定されます。このうち、二百五十発が戦略兵器で、約二十発が大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載、約百二十発が中距離ミサイルに搭載されています。また、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)十二基を保有しているとみられます。
| 実質的保有国 |
両国は核兵器保有を宣言しています。インドは核兵器四十五発から九十五発分の核分裂物質を生産したと推定されていますが、製造された核兵器は三十発から三十五発と推定。パキスタンも三十から五十二発分の核分裂物質を生産、二十四発から四十八発の核兵器を組み立てたと推定されています。
イスラエルは、公式には核兵器保有を確認も否定もしていません。しかし六七年に最初の核兵器を生産、約二百発を保有しているといわれています。
| “疑惑”国 |
国際問題シンクタンク「インターナショナル ・クライシス・グループ」(本部ブリュッセル)は、北朝鮮が向こう二、三カ月以内に核爆弾六発を、二〇一〇年までに二百発以上を製造する能力と意思を有しているとしています。
フセイン政権下のイラクは、七〇年代に核兵器製造計画を開始し、その後、湾岸戦争や国連の査察のなかで計画を停止したとされ、今日に至っています。イランは独自の核兵器能力を追求しているといわれます。リビアも七〇年代に中国から核兵器を輸入しようとしたといわれます。
| “廃棄した国 |
南アフリカ共和国は白人政権下にあった一九七九年ころに六発の核兵器を製造しました。しかしアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃の流れの中で、九一年に核兵器計画を中止し、九三年に公表しました。
ブラジルも九〇年に核兵器計画放棄を公表、アルゼンチンも八三年に軍事政権下での核兵器計画を終結しました。
旧ソ連のウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンはソ連崩壊後、自国内に配備されていた核兵器を九六年までにロシアに移管しています。