日本共産党

2003年8月1日(金)「しんぶん赤旗」

中南米系米兵 イラクで犠牲に

市民権獲得、奨学金で誘う

「不正義の戦争のために…」友人ら米政権批判


 イラクで攻撃を受けて死亡した米兵はブッシュ米大統領の戦闘終結宣言後、五十人を超えました。開戦から数えると百六十人以上です。中には貧しい中南米出身の若者が勧誘されて米兵になり、戦場で犠牲になった例があり、怒りを呼んでいます。(メキシコ市で菅原啓 写真も)


写真=モレノさん(左)と友人のロメロさん

おいが米軍兵士としてイラクに派遣されたモレノ さん(左)と友人のロメロさん=メキシコ市内

 メキシコ・ハリスコ州生まれの兵士フランシスコ・マルティネスさん(21)は三月末、イラクで命を落としました。いとこのマリア・コンセプシオン・フロレスさんは悲しみをこらえて語りました。

 「フランシスコは毎年、生まれ故郷のこの家に、母親や兄弟といっしょに遊びにきていました。いまだに彼が死んだことが信じられません。この戦争はまったく正しくありません。彼のように、何の罪もない若者が死んでいくのですから」

怒りに体震えた

 メキシコ市の大学生ルイス・モレノさん(25)のおい、ミゲル・アンヘル・モレノさん(25)も、三年前に入隊し、今回のイラク戦争に派遣されました。九年前まで近所に住んでいて、「兄弟のように遊んだ仲だった」とふりかえるモレノさん。

 「ミゲルは、両親が職を求めてニューヨークに渡ったときに連れられていった。彼が、今回のように意味のない戦争に従軍していることを知ったときは本当に怒りに体が震えたよ。なんとか無事帰国できたと知ってほっとしている。この戦争で、米国は弱いものを打ち破って、最強の国であることを示そうとしているにすぎない」

 ブッシュ大統領は昨年七月、米国市民権をもたずに米軍に所属している外国出身の兵士にたいして市民権獲得の手続きを簡素化する方針を打ち出しました。

 米軍は、市民権を得て大学に進学し、人生を豊かにするには軍隊が一番の早道だと、中南米系の若者を誘っています。入隊勧誘のために高校を回る軍関係者は、大学卒業までの奨学金支給をえさに、貧しい中南米出身の高校生を獲得しようとしていると報じられています。

入隊者が3割増

 米紙が報じる米国防総省の資料では、現役の米軍兵士百四十万人のうち、ほぼ3%にあたる約三万七千人は市民権をもたない外国系兵士。海軍のホームページではスペイン語で「海軍。君の人生にアクセルを」との呼びかけが出ています。

 過去十年間で中南米系の入隊者は三割増加したともいわれています。

 しかも、中南米系住民組織の調査によると、登録されている米軍兵士の中で中南米系は9・5%にすぎないのに、実際に銃をとって戦闘にかかわる任務についた兵士の割合は17・7%にも達しています。「イラク戦争に反対するラティーノ(中南米系住民)たち」の代表カルロス・モンテス氏は「私たちの仲間の若者を連れていき、戦争させるのは、人種主義的な戦術だ」と厳しく非難しています(米アリゾナ・リパブリック紙四月三日付)。

 「市民権獲得や大学進学資金のために多くのラティーノ(中南米系の米国在住者)が、入隊を決意し、優先的に最前線に送り込まれている。戦争の口実だった大量破壊兵器についての情報さえうそだったのではないかといわれている。不正義の戦争のために、弱い立場の人々が真っ先に犠牲にされるのは絶対におかしい」−モレノさんの友人、スラシ・ロメロさん(19)は、ブッシュ政権に怒りをぶつけました。


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