日本共産党

2003年8月1日(金)「しんぶん赤旗」

岩国沖への核持込み問題

今も続く核密約体制

日本が米の核出撃基地化


解説

 山口県岩国市沖に長期停泊した米海軍揚陸艦サン・ホアキン・カウンティ号が核兵器を積載していたことを、日本政府は米側から知らされながら、ひた隠しにしていた――新たな米政府解禁文書が明らかにしたこの事実は、一九六〇年に日米両国政府が核密約を交わしたもとで、米国の核兵器持ち込みが容認され、その事実を日本国民の目から隠そうとしていたことを示しています。

 岩国基地は、五六年十一月、極東米軍によって「原子兵器配置場所」に指定され、五八年三月には核爆弾積載能力を持つA4Dスカイホーク攻撃機一個中隊(十六機)が配備されました。

 そうした態勢下の五九年九月、サン・ホアキン・カウンティ号は核兵器を積載して岩国沖に出現しました。

 ダニエル・エルズバーグ氏の証言によれば、岩国沖合二、三百ヤールに停泊した同号船内のトラックに岩国基地向けの核兵器が積まれており、接岸すればトラックがそのまま岩国基地の滑走路に走り、戦闘爆撃機がその核爆弾を積み込んで出撃できるようになっていたといいます。

 今回明らかになった六六年五月十三日付機密電報が発信された背景には、同号が核兵器を積載していることをめぐる米政府内での議論がありました。

米と共謀し隠す

 同号は六六年一月二十三日、電動発電機室から出火し、岩国基地の消防隊に出動を要請。こうしたなか、ジョンソン国務副次官はマクノートン国防次官補にあてた六六年五月二十二日付書簡で、核兵器積載の事実が日本国民に露見すれば「政治問題化する」と懸念を表明。六月十九日にも火災事故が発生し、結局、同号は同年七月十五日に岩国から退去しました。

 電報には、「相互防衛条約交渉の日本側代表」が具体的にだれを指すのかは言及がありません。しかし「相互防衛条約」は現行安保条約であるとみられ、五八年から六〇年にかけて行われた同条約改定交渉の過程を通じて、日本政府関係者に同号に関する情報が伝えられていたことがうかがえます。同号が岩国に停泊した時期は、交渉が本格化する時期とも符合します。電報は「後者(日本側代表)が知っていたことは日本政府の強い要請で用心深く記録から消された」としています。日本国民に事実を知られることを恐れた日本政府が、まさに米国と共謀して隠ぺいをはかったものです。

 日米の核密約は、六〇年一月の安保改定に至る交渉を通じて交わされました。「討論記録」と題されたその密約全文は二〇〇〇年三月に日本共産党の不破哲三委員長(当時)が国会で公表しています。それは、安保条約六条で定めた「事前協議」について、米軍の軍用機の飛来や艦船の港湾への立ち入りをその対象としないということを取り決めています。

 その後、六三年には大平正芳外相とライシャワー駐日米大使との会談でそれを再確認。さらに六八年四月の小笠原施政権返還に際しての「有事」核持ち込みの密約、六九年十一月の沖縄施政権返還に伴う核持ち込みの密約がそれぞれ交わされています。

密約の破棄こそ

 それらによって、日本が米国の核出撃基地として利用される仕組みがつくられています。そのことはいまも変わりありません。ブッシュ政権が核兵器の先制使用も辞さない戦略をとるなかで、日本が核出撃基地とされる危険性は増大こそすれ、消えることはありません。

 それだけに、核密約とそれにもとづく米国による核持ち込みの事実を日本政府が明らかにし、いっさいの密約を破棄することが求められます。(山崎伸治記者)


裏切られた気持ち

 八〇年代から岩国基地の核兵器持ち込み問題を追及してきた岩国平和委員会副会長の久米慶典さんの話 安保条約下での日米関係が虚偽とペテンで塗り固められた体制だということを実感した。爆心地広島に近く、市民の百人に一人が被爆者という岩国市に、日本政府も知っていながら、核兵器が恒常的に持ちこまれていた事実を知って、本当に裏切られたという気持ちが強い。

 国民の平和と安全を脅かすだけでなく、こんなウソで固めた日米軍事同盟体制は一刻も早く終わらせるべきだ。


岩国機密電報

 統合参謀本部議長から

 太平洋軍司令官へ

 シャープ大将あて機密特電

 表題:ライシャワー大使との話し合いの報告(秘密指定なし)

 一、(秘密指定なし)リベロ大将から表題の件について、海軍の考えと見解が伝えられたことと思うが、それに私は同意している。

 二、(機密)入手できる背景情報から、東京の大使館スタッフが、サン・ホアキン・カウンティ号に関する諸措置について知っていたことははっきりしている。相互防衛条約交渉の日本側代表も知っていた(後者が知っていたことは日本政府の強い要請で用心深く記録から消された)。ライシャワー大使がこの件を知っているかどうかは、ここでは確認できない。

 三、(秘密指定なし)大使との話し合いの結果をお知らせいただければ幸いである。


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