日本共産党

2003年7月29日(火)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第5部 米帝国の足元で (2)

米兵家族に募る怒りと疑問


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息子ジョーさんの写真を掲げボストン市 内をデモ行進するナンシーさん(中央右) とチャーリーさん(同左)=4月29日

 「世界で最も訓練された兵士が、射撃練習場のような場所に入れられていることを憂慮している」。七月九日に米上院軍事委員会が開いた公聴会。ケネディ上院議員がラムズフェルド国防長官とフランクス前中央軍司令官に批判を込めて語りました。ほかの委員からも「イラクへ派遣している米兵はいつ帰るのか」と質問が相次ぎました。

抗議メール殺到

 イラクで連日のように襲撃を受け犠牲になる米軍兵士。議員たちには早く交替させよとの地元からのメールが殺到しています。議員たちのけんまくに、ラムズフェルド長官は交替が遅れている第三歩兵師団の兵士一万六千人の撤退を夏に始め九月までに終えると約束しました。

 ところが国防総省は十五日、「(イラクでは)現状レベルでの部隊展開が必要。どの部隊と交替するかは作業中」(ディリタ報道官代行)と帰還時期の設定に難色を示しました。一万七千人の部隊派遣を求められていたインドが拒否を決めたことをうけたものでした。

 イラクに展開する十五万の兵士からはいら立ちが伝えられ、ABCテレビは十六日、「ラムズフェルドは辞任しろ」との第三師団兵士のコメントを流しました。

 中央軍のアビザイド司令官は十六日、国防総省で記者会見を開き、「プロの兵士としては残念なことだ」「米軍の制服を着る者に、大統領や国防長官のことをけなす自由はない」と批判しつつ「部隊は九月までに帰らせる」と言明しました。

 しかし不満の声は収まりそうもありません。退役軍人や学生、労働者などからなる反戦組織「米軍連合・支持ネットワーク=SNAFU」は、司令官の発言に反発。「兵士は戦争とその大義についてうそを聞かされてきたことに憤っている。安全で楽に暮らしている司令官と幹部たちにだまされたことを知っているのだ」との声明を発表しました。

増える家族の会

 イラク戦争が始まる前の昨年十一月に二つの米兵家族で発足した、反戦を唱える米軍家族の組織「ミリタリー・ファミリーズ・スピークアウト」(MFSO=声をあげる米軍家族)は、現在も毎日のように会員が増え、六百家族、数千人規模の会となりました。

 ボストンに住む会の創設者の一人、チャーリー・リチャードソンさんは、「会員はいろいろな考えを持つ人たちだが、大量破壊兵器をめぐる偽情報など、戦争の理由がうそだったことで、みんな怒りに震えている。米国が仕掛けた戦争に以前賛成していた人たちが今度は反対に回った。イラクへの侵略戦争に疑問を投げかけている」と語ります。

 もう一人の創設者であるナンシー・レシンさんは二十二日、サダム・フセイン前大統領の息子、ウダイ、クサイ両氏死亡のニュースを受け、地方ラジオ局に出演しました。レシンさんはいいます。

 「米兵への攻撃はなくなるのかとディスクジョッキーから聞かれたので、なくならないと答えました。米兵への襲撃はフセイン一家の問題というより、米国による侵略と占領への抵抗だからです。世界には独裁者がたくさんいるのに、米国はなぜサダム・フセインだけを狙ったのでしょうか。結局、この戦争の目的は石油の利権であり、大企業や米帝国のためのものです」(ワシントンで遠藤誠二、写真も)

(つづく)


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