日本共産党

2003年7月28日(月)「しんぶん赤旗」

フィリピン 一部将兵が反乱騒ぎ

ホテルを一時占拠

大統領の退陣要求 交渉で兵舎帰還へ


 マニラからの報道によると、フィリピンのマニラ首都圏マカティ市で二十七日未明、国軍将校や兵士約三百人が「大統領退陣」などを求め、ショッピングセンター内にある高級ホテル兼アパートメント「オークウッド」を占拠しました。しかし、反乱将兵は同日午後、政府との交渉の末、兵舎に戻ることで合意しました。

 アロヨ大統領は二十七日夜、テレビで演説し、「危機は去った」と述べ、マニラ首都圏での国軍将兵の反乱事件は終結したと宣言しました。同大統領は約三百人の将兵が兵舎に帰還し、軍事法廷による訴追を受けることに同意したと明らかにし、「これは民主主義の勝利だ」と強調しました。

 同大統領はこの日、反乱軍の占拠を受けて、全土に「反乱状態」を宣言し、投降への説得と武力による鎮圧の両にらみの構えを見せました。国軍当局はシマツ前国軍司令官らを交渉役として派遣し、反乱将兵たちに投降を促すなど終日説得に当たりました。

 この説得の結果、反乱将兵は兵舎に戻り、さらに罰を科せられることに同意、一方、政府側は汚職調査を約束しました。

 これに先立ち、反乱将兵は同日夕、占拠した建物内で記者会見し、アロヨ政権がイスラム過激派などに武器を売却しているほか、ミンダナオ島ダバオの爆弾テロは国軍の策略だとして政権幹部の辞任を要求、改革のために「国家復興計画」を直ちに実施するよう訴えました。

 反乱将校は占拠したホテルの周囲などに爆発物を設置。「オークウッド」には一時、日本人やオーストラリアのピアース大使ら外国人百人前後が閉じ込められましたが、同日午前中に無事離脱しました。


解説

アロヨ政権への不満に乗じたが

国民の支持はなし

 フィリピンの反乱軍兵士は、アロヨ大統領の辞任を求めるとともに、一九八九年の国軍反乱事件の首謀者、ホナサン現上院議員がつくった「国家再建計画」の実行を主張しました。

 計画は、失業や貧困への対策、国税庁汚職の根絶、軍と警察の強化による犯罪対策などをあげていますが、「国家再建」というようなまとまった政策ではなく、人気とりを狙ったと思えるような要求の羅列です。ホナサン議員と反乱軍の関係はいまのところ不明ですが、同議員は「彼らはばかではない」と理解を示しています。

 反乱がアロヨ政権に対する国民の不満に乗じ、来年の大統領選挙を前に揺さぶりをかけたものであることはまちがいありません。

 アロヨ大統領は二〇〇一年、賭博献金疑惑でエストラダ政権が崩壊した後、副大統領から昇格しました。汚職一掃、貧困克服などを公約に掲げましたが、目に見える成果はなく、支持率は低迷しています。アロヨ家自身が大財閥の一族で、貧困層の反発も強い。外交ではイラク戦争で米国を支持し、派兵を決めていますが、国民の反対で実行できずにいます。アロヨ氏は次期立候補しないと表明しましたが、これを翻して出馬することへの警戒感があります。

 ただし、国民の間で反乱を正当化する声は聞かれません。八九年に反乱の舞台となったのも今回と同じマカティ市でした。外国大企業の事務所や駐在員の住宅が多いこの地区で騒動を起こし要求をアピールする点は共通していますが、反乱の規模は八九年と比較にならないほど小さく、ビル一つを占拠しただけ。支持、呼応する動きはありません。(山田俊英記者)


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