日本共産党

2003年7月27日(日)「しんぶん赤旗」

命綱の国保証 守って運動

不況、国の改悪で…

高すぎる保険料払えない


 国民の四割近くが加入する市町村の国民健康保険(国保)制度―。国が国民の健康を守る責任を後退させたため、高すぎる保険料が払えず滞納する世帯、滞納を理由に正規の保険証(国保証)を取り上げられ、安心して受診できない世帯が増え続けています。こうしたなか、各地で「国保証取り上げやめよ」「国保料を引き下げよ」の声と運動がひろがっています。


減免へ集団申請 1600人が10年間で実現

〈岐阜市〉

写真
不況で負担がたいへんと、減免申請する市民=8日、岐阜市役所

 「岐阜市国保を良くする会」は八日、国民健康保険料などの集団減免申請をおこないました。一日で七十数人が申請。四年前に一度申請して二度目という松村浩幸さん(40)は、「子どもも中学・高校生で一番お金がかかる時。景気がよくないから自営業者はみんな大変。千円でも二千円でも減額されるとありがたい」。

 岐阜市の国保料滞納世帯は、一万七千四百三十世帯で全加入世帯の21・89%(二〇〇三年三月十二日現在)。正規の国保証をとりあげられた資格証明書と短期保険証の交付世帯は全加入世帯の約一割にもなります。

 同会は一九九三年、民主商工会、生活と健康を守る会、新日本婦人の会などが参加して「岐阜市国保を考える会」としてスタート。地場産業の不振のなか、「不況による減収のとき、少しでも減免できないか」と運動を続け、今年、「良くする会」に名称を改めました。

 集団減免は九四年から始まり、十年間で千六百人の減免が実現しました。何度も交渉を重ねた結果、市側が、収入減などを「特別の事情」として減免を認める対応をするようになりました。

 「うちは空調設備の仕事ですが、年々、収入は減る一方。減免してもらっても、納入が遅れることもしばしばです」という三島史子さん(64)。「そういう状況だから、一割でも軽減はありがたい」と、最初の年から、毎年申請をしています。

 同会は、「保険料の引き下げ」「保険証の無条件発行」を求める請願運動にとりくみ、毎年、請願書を提出してきました。この請願に賛成するのは、残念ながら日本共産党議員団だけで、他党派は、財政難等を理由に賛成しません。

 日本共産党議員団は、一貫して「国保料の引き下げを」「保険証の発行を」と質問するなど、市民と一緒に、この運動を支えてきました。

 (岐阜県・上村順子記者)


所得減の資料添え申請 3人世帯で20万円減額

〈札幌市〉

 札幌市では、今年度の国保・保険料賦課方式が大幅に改悪され、納付通知書が届いた六月中旬以降、値上げや変更に驚いた市民から市・区役所への問い合わせが殺到し一万九千件以上にもなります。

 十年間続けている国保・介護一一〇番連絡会が札幌市内の全区で六月に実施した定例相談・集団申請日では、五区で計四十五件の相談が持ち込まれました。また国保・介護の集団申請は、参加者が百五人、減免申請を含め保険料の申請や支払いをしたのは四十五件でした。

 相談内容の特徴は、保険料請求額の大きさへの驚きと「とても払えない」との悲鳴です。

 豊平区の保険外交員をしている女性は、二人の高校生がいる母子世帯です。昨年の保険料四十二万円が、今年は六十万円になり驚きました。区に「とても払えない」と訴えると、担当者は「計算は間違いない。十二回分割支払いもある」と言うだけで、所得激減による減免制度を教えませんでした。一一〇番に相談し「事業所得が約百万円も減収になるとしたら、二十万円程度減免に該当する可能性がある」とわかり、早速、資料をそろえて区と話し合い、その通りであることがわかって少し安心したといいます。

 このほか親子二人世帯だったが息子が失業して別居したため世帯分離の手続きをとって七割減額になったケースや保険料法定減免への該当が判明したり、区役所に説明し資格証明書が短期保険証に切り替った例もあります。

 集約にかかわった「北海道生活と健康を守る会連合会」(道生連)の佐藤宏和事務局長は十五日、市民の声、実態を直接聞くよう上田文雄市長に申し入れたあと、日本共産党札幌市議団と懇談、「国保問題を重視していく」ことを確認し合いました。(北海道・小野真実記者)


悪循環

国庫負担切り下げ 保険料の引き上げ 滞納 国保財政の悪化

グラフ

 国民の四割近く、約四千六百万人が加入する市町村の国民健康保険(国保)制度は、重大な危機に直面しています。

 国保には低所得者や自営業者、高齢者が多く加入しており、長引く不況の直撃を受け、国保料(税)が支払えない滞納世帯が急増し、昨年六月時点で加入世帯の18%に達しています。

 しかも、国が一九九七年の国保法改悪で、滞納世帯からの正規の保険証(国保証)の取り上げを市町村の義務としたため、各地で取り上げが急増。昨年六月時点で、いったんかかった医療費全額を支払わなくてはならない資格証明書の交付世帯は、前年度の二倍以上の約二十二万五千世帯、正規の国保証より有効期限の短い短期保険証の交付世帯は約七十七万八千世帯にのぼります。

 しかし、国保証取り上げの義務化以降も滞納は増え続け、国保証がなくて受診をあきらめ、手遅れで死亡するという事件があとを絶ちません。

 こうした国保の危機の根本原因は、八四年の国保法改悪を皮切りに、国が次々と国庫負担を切り下げたことにあります。

 国庫負担切り下げ→市町村の国保財政の悪化→国保料の高騰→滞納世帯の増加→市町村の国保財政のいっそうの悪化→国保料のさらなる値上げ→滞納世帯の増加に拍車…。まさに悪循環です。

 ところが、厚生労働省は、今年二月の都道府県担当者会議で国保証取り上げ義務化の徹底を図るように求め、そのさいの留意点として市町村が「資格証明書の発行対象者を絞り過ぎていないか」という点を、わざわざあげました。

 日本共産党の井上美代参院議員は十七日の厚生労働委員会で、こうした厚労省の姿勢が、市町村の国保証取り上げに拍車をかけていると批判し、国保証取り上げをやめるように求めました。

 市町村に対して(1)滞納世帯や取り上げ世帯の実情を具体的に示しながら、取り上げ中止を求める(2)高すぎて払えない国保料の引き下げ、減免制度の周知徹底と運用の改善、制度の拡充などを求める―この世論と運動を大きく広げていくことが急がれます。

 また、この運動のなかで、国に対して国庫負担の引き上げなど、抜本的な制度改善を迫る世論を大きくしていくことが重要です。(地方部 村崎直人記者)


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