2003年7月23日(水)「しんぶん赤旗」
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夏は海や川で水に親しむシーズン。でも、目の前で子どもがおぼれたら…。水の事故から子どもを守るためにどうしたらよいかを、日本赤十字社救護・福祉部の三井俊介・健康安全課長に聞きました。
−最近、おぼれた子どもを助けようとして、父親もおぼれる事故がよくありますね。
三井課長 ここ十年くらい、そういう事故をよく耳にするようになりました。子どもを助けるためにとっさに飛び込んだ父親や親せきの人がおぼれ、これを助けに入った第三者は無事というケースが多いですね。
右も左も見ずに飛び込んだ親よりも、第三者は飛び込むまでに時間的余裕があり、ある程度心の準備ができます。私はここにポイントがあると思っています。
すぐに水に飛び込むのではなく、三十秒−四十秒の間、確実に助けられる方法は何かを考えてほしいと思います。自分がおぼれたら助けることはできません。
私はいつも救助方法の選択を強調しています。図のように、二個ずつのボールが入った四つの箱から、それぞれ一個ずつ四個のボールを集めるように考える。周りの状況を見てベストの救助方法を選ぶことで、失敗が少なくなります。保護者の方には、ぜひこの方法の選択を覚えていただきたい。
−子どもが水の事故に遭わないようにするにはどんなことが大切ですか。
三井 昨年の水難事故で事故に遭った人二千十八人の内、死者・行方不明者は九百七十七人で、致死率は48%と非常に高い。これが水難事故の特徴です。
また、水難事故の全死者数に占める着衣状況の水死者は、全体の84%を占めています(別表参照)。服を着たまま海や川、用水路などに落ちる事故は、水着で泳いでいるときの事故よりも何倍も多いのです。着衣のまま川などに落ちたとき、泳ぐのではなく、体を浮かせて自力で少しでも時間かせぎをできるかどうかが決定的なポイントになります。
いま学校などで、着衣のままプールに入り、水の中で何ができるかを疑似体験する機会を設けているところがありますが、これを夏のシーズン前にやることは必要なことだと思います。
危ないからといって水から遠ざけるのではなく、水に親しむとともに危険教育をすることが大切です。親の役割は、子どもが危険を避けたり、万が一のときは自分で三十秒−一分ぐらい浮くことができたり、自分で身を守れるようにすることだと思います。
−夏休みは、家族や学童保育などで海や川に出かける人もたくさんいますが、事前にどんなことが…。
三井 遠方だと下見をすることは困難ですから、地元の観光協会や漁協に手紙やインターネットで、潮の流れや干満、河川の水量や流れの速さなどの情報を得ておくことが大切です。
そのとき、一般的な海や河川の知識と、行く場所の海や川の特性の二つの情報が必要です。これらの情報を親として知っているだけでなく、お子さんと一緒に学習しておくといいですね。そして、現地に行ったら、地元の人と会話してさらに情報を得るようにすることをお勧めします。
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日本赤十字社の各都道府県支部では、水の事故防止・安全についての「水上安全法講習会」を一般向けに開催しています。問い合わせ電話03(3437)7085
子どもの水の事故で最も多いのが、海や川、池での水遊びによるものです。決してひとり遊びをさせてはいけません。
▼泥底の池などでは遊ばせない。
▼池や川岸の草の生い茂っている所には近寄らない。
▼丸太や漂流物の上で遊ばない。
▼波の高いときは岩場に近寄らない。
▼増水に注意する。
(日本赤十字社『安全で楽しい水泳・水遊び』から)