2003年7月17日(木)「しんぶん赤旗」
政治資金規正法違反事件で辞職願を提出した土屋義彦埼玉県知事(77)の後援企業である運送会社が二○○○年、同県吉田町で倉庫事業を始める際、土屋知事と同社社長(58)との間で、県公文書の保管委託を検討していた疑いが十六日、関係者の話で分かりました。倉庫に直結する町道も新しく建設され、建設費約八千万円のうち約七千万円は県補助金や県が配分する過疎債などで賄われました。
この運送会社は同県吉川市の「丸和運輸機関」。同社は○○年十一月、倉庫会社「秩父緑の森」を設立。のちに同町の出資を求め、文書保管事業を始めました。
関係者によると、土屋知事は同年初め、同社社長に「(吉田町は)東京に近いのに過疎地になっている。何か有力な産業があるなら」と進出を提案。これを受け、同社長は知事の長女、市川桃子容疑者(53)らと事業の構想検討会を開きました。
同社長らは、県の公文書を倉庫で保管することを計画、土屋知事とも検討したといいます。この際、同社長は「土地はいくらでも出る。道路を通せば有利になる」などと話していました。知事は「行政の文書は外に出せない」とし、結局、民間の文書を中心に扱うことになったといいます。
吉田町は一九九九年から○二年にかけ、倉庫の敷地に直結する町道整備を工費総額約七千九百八十万円で実施。このうち約七千万円は、知事の裁量がきく「彩の国づくり助成金」(県単独事業)や、県が配分する過疎債などでした。
「丸和運輸機関」は、こうした動きのあった時期から、市川桃子容疑者側に計約四千万円を提供したとされ、東京地検特捜部は知事周辺の資金の流れの全容解明を進めています。
吉田町企画財政課は「丸和運輸機関から進出したいという話があった。町として企業誘致のアプローチはしていなかった」と話し、丸和運輸機関は「担当者がおらず、お答えできない」としています。
問題の倉庫は、関越自動車道や、国道140号などで首都圏へのアクセスが便利な地域にあります。土屋知事後援企業の丸和運輸機関はこの立地条件にも注目。公文書保管や磁気テープなどの巨大物流拠点をつくる「秩父グリーンロジスティックタウン構想」の第一次計画としてこの文書専用倉庫を建設しました。
同社の和佐見勝社長は九九年八月二十七日、吉田町議会全員協議会で同構想を説明。このなかで土屋知事のすすめる「彩の国づくり」のシンボル、「さいたま新都心」への省庁移転で膨大な公文書の保管が必要になる、と文書保管倉庫の必要性を強調しました。また「町が出資すれば信用力がつき、営業的にも有利」と「秩父緑の森」への出資を要請、町は二百万円の出資を決めました。町道と町の出資はこうした戦略を実現する要でした。
土屋知事と親交の深い企業関係者は、「丸和進出には知事側近が関与している。吉田町の猪野町長も地元ダムに『西秩父桃湖』と長女名をつけるなど知事びいきは有名だ。倉庫は知事をめぐる人脈から周到に準備されたと思う」と、指摘しています。(北関東総局 山本眞直記者)