日本共産党

2003年7月15日(火)「しんぶん赤旗」

自衛隊の交戦 当然視

危険な本質 答弁で浮き彫り

イラク特措法案


 「戦って相手を殺す場合がないとはいえない」(小泉純一郎首相)。政府は、イラク特措法案に基づき派兵された自衛隊が、イラク国民と砲火を交え、殺し合うことを当然視するかのような発言を繰り返しています。憲法をじゅうりんした戦場への派兵という、法案の危険な本質を浮き彫りにするものです。(田中一郎記者)

 首相の発言は、九日の参院外交防衛・内閣委員会の連合審査会でのものです。「夜盗や強盗のたぐい」から襲撃を受けた場合、自衛隊員が「正当防衛」としてイラク国民を殺傷する場合を認めたものでした。

 首相は「自衛隊員が殺される可能性があるかもしれない」とも述べ、派遣隊員が襲撃によって死亡する場合がありうることも認めました。

「戦闘地域」での応戦

 政府が想定しているのは、「夜盗や強盗のたぐい」による襲撃だけではありません。

 石破茂防衛庁長官は、自衛隊に加えられた攻撃が、旧フセイン政権残存勢力といった「国又は国に準ずる者」による計画的組織的な攻撃であっても「正当防衛、緊急避難に基づく武器使用はできる」(十日の参院外交防衛委など)とし、応戦可能という見解を繰り返しています。

 PKO(国連平和維持活動)法の国会審議のとき、政府は、海外での武器使用について「国ないし国に準じる組織に対するものは武力の行使になる」(一九九一年九月、工藤敦夫内閣法制局長官=当時)とし、憲法上認められないことを言明していました。PKO法による自衛隊の派兵は、紛争当事者間の停戦合意が前提。政府の立場からいっても、「国ないし国に準じる者」による攻撃など想定しようのない事態だったのです。

 政府は、イラク派兵について、自衛隊は「国又は国に準じる者による計画的組織的な攻撃」=「戦闘行為」が行われていない「非戦闘地域」で活動するとしています。

 しかし、石破長官の見解は、実際には「非戦闘地域」がいつでも「戦闘地域」に変わり得ることを事実上認めた形です。だからこそ、これまでの政府見解も平然と踏み破ることになるのです。

 防衛庁は、イラクに派兵した自衛隊員が死亡した場合を想定し、特別功労金の増額措置の方針も決めています。こうした方針を決めるのも、自衛隊員がいつ攻撃を受け、交戦することになるか分からないからです。

奪還作戦で武器使用

 石破長官は、自衛隊員が武装勢力に拉致された場合を想定し、これを奪還するための武器使用も事実上可能とする見解も示しています(十日、参院外交防衛委)。

 これも「武器を使って救い出す行為は、武器使用を自己又は自己と共に現場に所在する隊員等の防衛に限定している趣旨からいって、行えない」(九一年十一月)とした従来の政府見解から逸脱したものです。

 石破長官の見解は、自衛隊員が拉致された自衛隊員の救出に向かった場合、結果として「自己と共に所在するという(武器使用の)条件が充足する」ので、拉致された隊員の「正当防衛」の権利を、救出に向かった自衛隊員が代わりに行使できるというもの。石破長官自身が「言葉遊びと言われるかもしれない」というように、苦し紛れの見解としか言いようがありません。

 しかも政府は、自衛隊員の武器使用について「急迫不正の場合は必ずしも相手から実際的な攻撃を受ける前であっても対応できる」(十日の参院外交防衛委、西川徹矢防衛庁運用局長)としています。実際に攻撃を受けていなくても、自衛隊の側から発砲することもできるというのです。

 イラクでは米英占領軍への国民の敵意が広がり、「一日十件から二十五件」(米中央軍のフランクス前司令官)の頻度で、占領軍への攻撃が繰り返されています。無法なイラク戦争につづき、国連安保理も合法と認定していない、大義なき軍事占領だからです。

 海外で自衛隊が他国の国民を殺傷することを当然視する主張が相次ぐのは、自衛隊のイラク派兵が、こうした米英の軍事占領への支援だからにほかなりません。


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