日本共産党

2003年7月13日(日)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第4部 2つの欧州から (2)

「新しい欧州」の内側


 「ポーランドは米国のイラク侵略に手を貸すべきではありませんでした。イラクの内政問題に介入する権利も能力も私たちにはないからです」―ワルシャワの旧市街近くで、ダグマラ・トゥルスカさん(31)=金融関係会社勤務=は怒ったように語りました。

多数が戦争反対

 イラク戦争では東欧諸国の多くが米国を支持。特にポーランドは実際にイラクに派兵しました。ブッシュ米政権は、こうした諸国を「新しい欧州」と称賛。制圧したイラクを三つの区域に分割し、中南部の治安維持を担うようポーランドに要請しました。同国軍は最大で二千五百人を派兵し、約七千五百人の各国部隊を指揮します。

 しかしポーランド国民は、こうした決定に納得していません。四月の世論調査では、53%が米国支持は間違った決定だと主張。68%は派兵が誤りだと回答しました。スロベニアで79・5%、チェコでも70%など、他の諸国でも戦争反対が多数です。

 政府は国民の説得に腐心しています。国際社会での発言力が強化される、経済活動が有利になる、米国の援助を得られることなどが強調されました。スロバキアのズリンダ首相は、イラク戦争を支持したことにより米国など「大国」と同等に扱ってもらえ、「スロバキアは国際舞台で対等の役割を果たしつつある」と自賛しました。

 しかし、これには疑念の声もあります。ニューヨーク大学プラハ校のユィジ・ペへ校長は、「イラクの収入源である石油を握っているのは米国だ。利益を得るのは欧米の企業で、チェコの企業が得られる契約は、せいぜい下請けどまりだろう」と指摘します。

 それ以上に、米軍への抵抗や攻撃がイラクで続いていることで派兵への懸念が強まっています。ポーランドのCBOS調査会社が六月二十日に発表した世論調査では、53%がポーランド兵が攻撃の危険にさらされると心配。主要紙ジェチポスポリタに五月に掲載された世論調査では、派兵賛成45%に対して、反対が46%となっています。

今すべきことは

 チェコの首都プラハの北約九十キロのリベレツ市にある、生物・化学兵器対応部隊。施設を訪ねると、夫のスタニスラフ・クライチさん(34)が任務についた、妻のダナクライチオバさん(33)の心境は複雑でした。「兵士として重要な任務についている」と考えつつ、「電話の向こうで爆発音を聞くと心配になった」と語ります。

 同部隊の約二百九十人は、今回のイラク戦争でクウェートやイラクに一月から六月二日まで駐留し、イラクによる化学兵器使用の有無について調査に当たりました。

 ポーランド国防省は、派遣部隊が二〇〇三年末までイラクに駐留した場合の費用は、一億三千六百万ズロチ(約四十二億円)未満と推定。八十五人の工兵部隊をイラクに派遣する予定のスロバキアでは、約三億スロバキア・コルナ(約十億円)が必要と見積もっています。

 派兵する東欧諸国はいずれも、八九年の体制転換後も依然、西欧諸国との経済格差が開いたままです。失業率も高く、ポーランドは17・9%、スロバキアは14・81(いずれも五月)です。

 ワルシャワ中心部でイラク問題について意見を聞くと、図書館勤務の男性、ミハル・シュチェパノウスキーさん(38)が言いました。「今ポーランドがすべきことは、戦争ではなくて、自国の経済を立て直すことです。失業、インフラ整備、投資の促進…。軍隊を外国に送っている余裕があるはずがありません」

 (ワルシャワ、プラハで岡崎衆史)

 (つづく)


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