2003年7月9日(水)「しんぶん赤旗」
![]() 中田宏市長(前列中央)を囲む「ヨコハマから日本を変える会」のメンバー。後列左端が佐藤行信市議=同会のホームページから |
自民・公明などが推す現職を破って中田宏市長が誕生して一年三カ月がたつ横浜市で、市発注の下水道工事の入札をめぐり、市の局長級部長、現職の与党市議、業者二社の役員が一日、逮捕されました。鈴木宗男、加藤紘一両衆院議員の疑惑など自民党の金権腐敗政治と市民不在の前市政への市民の怒りが、中田市政誕生の追い風となったといわれるだけに、「中田市政に大逆風」(神奈川新聞二日付)と波紋を呼んでいます。(神奈川県 岡田政彦記者)
いっせい地方選挙後の五月二十日、中田市長を支える市議会会派「民主党・横浜みらい」副団長の佐藤行信市議(当時、現在無所属=旭区選出)が、市発注の公共工事受注業者から違法な選挙資金を得ていた公職選挙法違反(特定寄付の禁止)容疑で逮捕、起訴されました。同区の建設会社、京浜工業と新栄興業が、佐藤市議に違法資金計百万円を提供していたというのです。
佐藤市議は、昨年の市長選で中田市長を擁立した中心人物の一人で、「市長誕生の『立役者』」(「朝日」同月二十一日付)と評されています。四月の市議選では、中田市長が顧問をつとめてきた政治団体「ヨコハマから日本を変える会」(ヨコハマ会)の公認で立候補していました。
佐藤市議の公選法違反での逮捕は、「しがらみのない」クリーンなイメージとは正反対の実態が、市長の足元から噴き出した格好。この直後から、入札をめぐる汚職疑惑が表面化しました。
市の下水道工事(同区内)をめぐる今年二月の入札で、京浜工業と新栄興業を含む三社が、最低制限価格より一万円だけ高い同額(八千三百八十九万円)で応札していたことが判明。佐藤市議が絡んだ入札情報の漏えいの疑惑が持たれました。
日本共産党横浜市議団の大貫憲夫団長は、五月二十七日の市議会・都市経営総務財政常任委員会でただちに質問。深川邦昭財政局長は、「三月に内部調査をしたが問題はなかった」と答弁していました。
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中田市政で起きた疑惑に、市民は敏感に反応しました。「佐藤行信議員の選挙違反などの真相究明と辞職を求める会」を立ち上げ、市長、市議会議長、横浜みらいなどへの要請を重ねました。
そして七月一日、市民の怒りが広がるなか、神奈川県警は偽計入札妨害の容疑で、当時の市契約部長で現総務局担当理事兼行政部長の菊池晁容疑者を逮捕し、佐藤市議を再逮捕、京浜工業社長の佐藤哲夫、新栄興業役員の畑野圭一郎両容疑者も逮捕しました。
市幹部、与党議員、業者が癒着した汚職事件−。中田市長は同日、緊急記者会見を開き、「あってはならない不祥事」として、「ヨコハマ会」の顧問を辞める意向を表明しました。
汚職の構図は、佐藤市議が入札情報の漏えいを迫り、菊池容疑者が、予定価格と最低制限価格に近い額を教え、佐藤市議が業者に伝えたというもの。菊池容疑者は「(佐藤市議は)市長に近い人物なので人事に影響力があると思い、断れなかった」として、容疑を認めています。「(佐藤市議は)入札価格を教えるよう要求する際、菊池容疑者を所属会派の議員控室に呼び出していた」(「毎日」四日付)などの生なましい状況も報じられています。
さらに、日本共産党市議団の調査で、京浜工業が、昨年十二月二十四日の下水道工事二件の入札でも、最低制限価格スレスレ、入札成立の最高限度額である予定価格の76・4%、75・0%の低額で落札し、工事を受注していた事実が判明。これにも佐藤市議、菊池容疑者が関与していた疑いが持たれています。
じつは、市議会で疑惑を否定した市の「内部調査」は、当時契約部長だった菊地容疑者のもとで実施され、下水道局の担当係長らに事情を聴いた程度のもので、肝心の菊池容疑者は「調査」の対象外でした。
四日に開かれた市議会・都総財常任委員会で、深川財政局長は「関係職員が逮捕され、調査は不十分だったと言わざるを得ない」「(契約部での情報漏えいは)まず起こり得ないだろうという甘さがあった」と認めました。大貫市議団長は「実態を徹底調査すべきだ」と厳しく迫りました。
一方、事件の渦中にある佐藤市議は、公選法違反で起訴され、「佐藤市議が辞職届」(「読売」六月十二日付)とも伝えられましたが、居座りを続けています。
日本共産党市議団は、佐藤市議に対する議員辞職勧告を要求していますが、他会派は消極的な態度に終始しています。
七日に横浜地裁で開かれた公選法違反事件の初公判で、佐藤市議は起訴事実を否認しました。
公判を傍聴した「真相究明と辞職を求める会」のメンバーで旭区に住む重田和子さん(60)は「佐藤市議が起訴事実を認めず、辞職の意思も見せないことに怒りを感じます。ことは横浜市政全体の汚職問題です。市民の運動を広げ、佐藤市議の辞職までたたかいます」と怒りを込めます。