日本共産党

2003年7月8日(火)「しんぶん赤旗」

イラク特措法案に対する

小泉議員の質問(大要)

参院本会議


 七日の参院本会議で日本共産党の小泉親司議員がおこなったイラク特措法案にかんする代表質問(大要)は次のとおりです。

法案の核心――自衛隊の派兵で米英の占領を支援

 私は、いぜんとして戦争がつづくイラクに、戦後初めての地上軍を派遣する重大な本法案が、衆院でわずか四十数時間の審議時間で、与党三党によって強行されたことに強く抗議します。

 イラク特措法案は、自衛隊のイラク派兵によって米英軍によるイラク占領を支援することに核心があります。

 米国のイラク戦争は国連憲章に照らして、なんの道理もない無法な戦争です。人命を奪い、子どもや女性をはじめイラク国民に惨劇を与えるものでした。今回の法案が、この無法な戦争を正当化していることを断じて容認できません。

 重大なことは、ブッシュ政権がイラクへの戦争を合理化する最大の理由とし、小泉首相がそれを支持する最大の根拠としてきた大量破壊兵器がいまだに発見されていないことです。米英の議会で、両国政府が情報操作をおこない、戦争を仕組んだのではないかという重大な疑惑が深まっています。首相は、この重大な疑惑があるいま、戦争をいち早く支持し、後押ししてきたことをどう総括しているのか。ブッシュ大統領の言い分さえきいていれば間違いはないという考えか。

 首相は、「イラクが大量破壊兵器を保有している」と断定までしたのだから、その根拠と責任を明らかにすべきです。

 イラク戦争は、フセイン政権転覆を目的とした征服戦争にほかならないことが明らかになっています。にもかかわらず、イラク戦争支持についての総括もせず、ただ自衛隊派兵に狂奔するのは、あまりに無謀で言語道断です。

 国連安保理常任理事国をはじめ、圧倒的多数の国が米英のイラク戦争を正当性がないと批判し、軍隊の派遣をはじめとする支援をいっさい拒否しているなか、征服戦争につづく占領体制に、自衛隊を派遣することにどんな「大義」があるのか。

停戦合意のないイラク―― 占領軍への協力は交戦権行使

 首相は衆院の審議で自衛隊派遣について、軍隊派遣は安保理で全会一致で決められたから当然だと答弁しましたが、わが党の追及に「そこまでは言っていない」と修正しました。こんないいかげんなことで自衛隊派兵が強行されていいのか。

 自衛隊派兵はどこから要請があったのか。「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」とブッシュ政権に言われただけではないか。

 米英両軍による軍事占領も、国連決議にもとづかない無法なものであることが、衆院の審議で明らかになりました。

 国際法学者の参考人は、「安保理決議一四八三は、米英軍のイラク攻撃を正当化していない。米英が強硬に事実上の占領に踏み切った以上、ハーグ陸戦法規やジュネーブ条約を順守すべきだと言っているだけだ」と証言しました。正鵠(せいこく)を射た見解です。首相は衆院で、安保理決議が米英による戦争と占領支配を正当化していないことを認めましたが、法案との整合性をどのように考えるのか。

 首相は、自衛隊を派兵しても占領軍には加わらない、指揮・命令も受けないから憲法違反ではないとしています。しかし、自衛隊はイラクに入るうえで、占領軍の「同意」を得るのではないか。ブッシュ政権に影響力をもつ米外交専門機関はイラクの「法と秩序」のすべてをCPA、米英占領機構が掌握しているとしています。イラクで占領軍の了解なく、自衛隊が独自の行動ができるのか。これでも占領軍の傘下での活動ではないというのか。

 しかも、イラクでは停戦合意がない。防衛庁長官でさえ、法的には戦争状態だと答弁しています。自衛隊の占領軍への協力は、憲法違反の交戦権行使以外のなにものでもないではないか。

 米英軍がイラク国民から歓迎されず、逆に反感と憎悪を増幅させていることは、わが党をはじめとする野党の調査報告で明らかです。首相は、自衛隊が米英軍を支援しても、無法な占領に対するイラク国民からの反感・抵抗は起こらないというのか。

 安保理決議は、安全・安定の確保は占領機構の任務だとしています。米英軍の指揮を受けないで支援活動ができるという根拠を示してほしい。

 米英軍はイラクを三つの区域に分けて、「砂漠のガラガラヘビ」作戦を行っています。自衛隊はこのような戦闘作戦を支援することも可能なのか。

復興支援は非軍事的手段で積極的におこなうべきだ

 戦闘地域か非戦闘地域かの区別ができるという政府見解の虚構も明白です。

 政府は調査の上決めるとしていますが、自衛隊が支援対象とする米英軍から離れて、安全なところにいるなどということが実際に許されるのか。米英軍のフセイン政権残党掃討作戦などは、どこを攻撃地域にするかさえ、米英軍自身もわからないとしています。日本政府が線引きできるなどというのは、砂上に楼閣を築くようなものではないか。特定できる論拠を示してほしい。

 そうした虚構のもとに、戦闘地域に自衛隊を派兵するのは、憲法違反の武力行使となることは明確ではないか。

 わが党は、今回、イラクに調査団を派遣し、イラク復興に力を尽くす国連機関をはじめNGO(非政府組織)の人々からの意見を聞いてきました。これらの人々はこぞって、「イラクの国民にとって必要なのは、軍隊の派遣ではない。イラク国民の水や医療体制を整えることだ」と言っています。最近、イラクから帰国したボランティア団体のお医者さんも「必要とされているのは自衛隊ではない。専門の看護師や医療機材だ」とのべています。イラク復興への日本の支援は、自衛隊ではなく、憲法の平和原則にもとづいて、食料、水、医薬品、学校用具、上下水道や発電施設の修理など、国連機関への協力をはじめ、非軍事的手段で積極的に行うべきです。

 今回の法案は、米英占領軍への支援法であり、自衛隊の海外派兵を恒常化する希代の違憲立法です。日本共産党は本院での徹底審議を強く求めるとともに、イラク特措法案は廃案にすべきであることを強く要求します。


小泉首相の答弁(要旨)

 小泉親司議員の質問にたいする小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次の通りです。

 【イラクの大量破壊兵器問題】イラクには多くの大量破壊兵器に対する疑惑があり、査察への非協力をはじめ、イラクが関連安保理決議への重大な違反をおこしてきたことは、国連の査察団による累次の報告で明らかだ。武力行使なしには、大量破壊兵器の脅威を除去できない状況になり、わが国としては国益にてらし、同盟国である米軍などによる関連安保理決議にもとづく行動を支持した。

 【法案提出の理由と意義】イラクでは、現状でも医療やエネルギーなど、社会の生活基盤が不十分であり、治安も良好でない地域もある。国際社会は復興支援、促進にとりくんでおり、わが国も安保理決議一四八三をふまえ、わが国にふさわしいいっそうの貢献をおこなうことが必要であると考え、本法案を提出した。

 【軍隊派遣要請した安保理決議】安保理決議一四八三は加盟国にたいして、特に軍隊の派遣だけを要請しているものではないが、イラク復興への国際社会が具体化するなかで、わが国にふさわしい貢献のあり方を幅広い見地から検討してきた結果、自衛隊の派遣をふくめて、すみやかにわが国としてイラク復興支援を行う必要があると判断した。

 【自衛隊派遣の理由】厳しい環境下でも活動を遂行できる自己完結性を備えた自衛隊の能力やこれまでの国際協力の経験などを活用することはきわめて合理的かつ自然である。自衛隊の派遣はわが国の主体的な判断によるもので、米国からの要請だけによるものではない。

 【イラクにたいする武力行使、占領の正当性】決議一四八三には、武力行使の正当性について直接の言及はないが、同決議を引用するまでもなく、イラクにたいする武力行使は、決議六七八、六八七、および一四四一など関連安保理決議で正当化される。決議一四八三は、「当局」に国際法上の特定の権限、責任、義務を確認し、当局にたいして、領土の実効的な施政を通じた、イラク国民の福祉の増進にたいする権限を付与していることなどから、米英がおこなう施政は、国際法上正当なものである。

 【イラク現地における米英軍の指揮】国連安保理決議で施政機関としての地位を認められた米英当局と連携を図ることとなるが、自衛隊が米英軍の指揮下にはいることはまったく想定されていない。活動地域の設定変更などについても、隊員の安全性に十分配慮し、業務の実施上の便宜をも踏まえた上で、わが国として主体的に判断する。

 【自衛隊派兵と交戦権との関係】本法案にもとづく自衛隊の活動は、武力の行使にあたるものでなく、他国の武力行使と一体とならないよう「非戦闘地域」に限っている。わが国はイラクにたいして、武力を行使したことのない非交戦国であり、本法案による支援活動の内容は、占領行政そのものではない。憲法第九条で禁じている交戦権の行使にあたらない。

 【自衛隊派兵へのイラク国民の反感】イラクの復興支援に際しては、安保理決議一四八三の趣旨を十分に踏まえ、イラク国民の主張を的確に把握しつつ国づくりを支援し、イラク国民から評価を得られるようつとめていく。

 【掃討作戦への支援】イラクの国内における安全および安定を回復する活動に含まれないような軍事戦闘作戦は、本法案にもとづく支援の対象とはならない。

 【「非戦闘地域」の線引き】「非戦闘地域」の設定にさいしては、わが国が独自に収集した情報や、諸外国などから得た情報を総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性なども含めて合理的に判断することが可能である。

 【自衛隊以外の支援】わが国はこれまでに約八千六百万ドルの対イラク人道復興支援を国際機関およびNGOを経由して実施、表明している。


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