日本共産党

2003年7月7日(月)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第3部 中東・周辺国から (6)

「民主化」構想への批判


 ブッシュ政権は戦争でイラク国民を解放し、民主化を実現し、中東全域の民主化のモデルにする、といっているが、との問いに、エジプトの著名ジャーナリストの一人、ラガブ・アルバンナ氏は言下にこう答えました。

親米の政権づくり

 「民主主義は無論必要です。しかし、それは米軍の力で行うものではない。アラブ人を殺して、それでどうやってアラブの民主化ができますか。われわれは社会を変えていくべきだと思っています。それはアラブ社会全体の問題でもあります。しかし、それは自分たち自身の力でやることなのです」

 こうした見解はエジプトの識者、市民にほとんど共通しています。

 ブッシュ米大統領は開戦前の二月二十六日、共和党系シンクタンクの会合で「解放されたイラクは…この重要な地域を変革する自由の力を示すだろう」「イラクの新体制は域内の他国に対し印象的で勇気を鼓舞する手本として貢献するだろう」と述べました。「解放」したイラクを「手本」にして中東全体に米国のいう民主国家・親米政権をつくっていくというものです。

 さらに同大統領は四月二十八日、ミシガン州で在米イラク人らを前にした演説で「平和で自由なイラクは全中東の模範となりうる」と述べ、中東「民主化」構想を強調しました。米国主導の中東再編構想です。

 しかし、その肝心のイラクで、いま米国は手を焼いています。

 イラクの暫定政権樹立は、米占領当局が右往左往し、計画より大幅に遅れています。ある外交官は「親米政権の担い手を見つけていないからだ」と指摘します。

先制攻撃戦略を強調

 親米政権の担い手の育成が混迷し、暫定政権を遅らせて直接占領が長引けば長引くほど、イラク国民の反米独立の要求は高まらざるをえません。

 七月四日、米独立記念日の演説でブッシュ大統領はいいました。「米国はなお戦争のなかにある」。そして、「必要なら、いつでも行動する」「攻撃を受けるまで待つことはない」と、先制攻撃戦略の立場を強調しました。

 その二日前。イラクで米軍が毎日のように襲撃されていることについて聞かれたブッシュ大統領はこういいました。「彼らへの私の回答は、かかってこい、だ」

 イラク情勢についての理解もないままに軍事力で他国民をねじふせることしか考えない米国の指導者。中東「民主化」構想の本音と矛盾がくっきりと浮かび上がって来ています。

 (カイロで小玉純一)

 (つづく)


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