2003年7月6日(日)「しんぶん赤旗」

ニュースと話題の？Ｑ＆Ａ

食品安全委員会ができたね

消費者の権利としての視点必要

　五月に食品の安全を確保する法律が成立して、七月一日から「食品安全委員会」が発足しただろう。一万四千人の集団食中毒をおこした雪印乳業事件、牛海綿状脳症（ＢＳＥ）の発生や、輸入ホウレンソウなどの残留農薬汚染、遺伝子組み換えトウモロコシ問題など食品がらみの事件が相次いだからね。食の安全確保を期待したいが…。

食品安全委員会の第１回会＝１日午後、東京都千代田区

　何が安全な食べ物か信じられなくなったものね。それまでも日本の食品安全行政の不備は問題になっていたけれど、ＢＳＥ事件をきっかけに、食品安全基本法が新たにつくられ、食品衛生法が改正された。

　二つの法律には目的に「国民の健康保護」と「食品の安全確保」が初めて明記された。消費者団体や日本共産党が国会内外で要求してきた内容も盛り込まれ、食品の安全確保への第一歩ね。改正食品衛生法には直接国、自治体の食品安全確保の責務が盛り込まれた。消費者の不安の高まりにこたえ、新しい枠組みがようやくできた。

　厚生労働省や農林水産省から独立した機関として、内閣府に食品の安全性を評価する「食品安全委員会」を新設したのも、食品安全基本法のポイントなのよ。

　イギリスには食品基準庁、フランスには食品衛生安全庁、ＥＵ（欧州連合）にも食品安全委員会がある。それぞれ食品の安全を確保する権限のある仕事をおこなっているというね。日本の「食品安全委員会」は、どんなことをするの？

　これまでは、食品添加物、農薬、容器を含む食品とか、遺伝子組み換え生物・作物などについて、食品安全性評価も、それにもとづく安全管理も、厚生労働省、農林水産省がすべてやっていた。こんどは、安全性評価は食品安全委員会にゆだねられるの。

　でも、委員会には、両省に必要な安全対策を「勧告する」権限が与えられているだけなのよ。食品安全委員会の評価にもとづく安全管理の方は、これまでどおり厚生労働省と農水省なんだ。

　委員は七人（常勤は四人）、事務局五十五人、予算は二十億円でスタート。一日の初会合で、委員長に互選された寺田雅昭・元国立がんセンター総長は「中立、公正で科学的な評価を基本とする食品安全行政を確立することが任務だ」と所信を語ったというけど、問題は実行ね。

　モデルになったのはＥＵの食品安全委員会というわ。日本の食品安全委員会はやらない安全管理もやる。委員会には消費者代表も入り、幅広い政策権限を行使している。そのため、専門家は二百五十人というわ。

　イギリス、フランスも同様で、日本と格段に違う欧州の体制や予算をみると、権限ある仕事ぶりの違いも察しがつくでしょう。実際「今の食品安全委員会の体制ではもたないのではないか」との不安が、専門家からもあがっているよ。

　日本では、食品安全委員会に消費者代表が入らなかったのは問題よ。これは、食品安全基本法に、国民が求めていた「消費者の権利」が明記されなかったことと無関係ではないわ。

　なるほど。これまでの食品安全行政を根本的に改めるうえで、まだまだ課題があるんだ。食の安全は、いのちや健康にかかわる大事な問題だ。この法律を生かして、食品の安全を確保するにはどんなことが大事なんだろう？

　日本は食料の六割を輸入に頼っている、世界一の食料輸入大国。だけど、輸入食品の安全対策はお寒い限りなんだ。輸入食品は増大しているのに、それを検査する食品衛生監視員は、全国三十二カ所の検疫所に計二百六十八人（二〇〇二年度）だけ。食品衛生監視員が一人という検疫所は八カ所というありさまなんだから。国がおこなう行政検査は、輸入食品届け出件数のたった２・８％なのよ。

　しかもその検査は、モニタリング検査といって、検査結果が出る前に輸入食品は流通していて、結果が出たときは、もう胃袋のなかということなの。

　遺伝子組み換え作物として問題となっている大豆の七割は、「計画輸入制度」といって、輸入届け出も必要なく、無検査で輸入されている。輸入飼料に至っては、輸入食品検査の四十分の一なのよ。アメリカなど食料輸出国の圧力に屈しないで、自給率の向上とあわせて、検査員を増やして安全対策と検査体制を抜本的に強化することが大事ね。

　市民の立場から食品安全行政を監視する「食の安全・監視市民委員会」が四月に発足したけど、政府に食の安全への責任を果たさせる市民運動や世論を広げていくことがいよいよ重要になっているね。