日本共産党

2003年7月4日(金)「しんぶん赤旗」

イラク特措法案 委員会採決

大義もニーズもなく

「とにかく派兵」の暴挙


 自民、公明など与党三党が衆院特別委での採決を強行したイラク特措法案は、戦後初めて、戦闘がおこなわれている戦場に地上軍を派兵するものです。きわめて重大な問題をはらむ法案をわずか六日間の委員会審議で押し通した与党三党の責任がきびしく問われます。


他国民を殺す立場に

 法案にもとづき自衛隊が支援するのは、無法なイラク戦争の結果生じた占領統治であり、フセイン政権残党の大規模な掃討作戦をおこない、多くの市民を巻き添えにしている占領軍です。

 実際、フセイン政権崩壊後も米軍の大規模掃討作戦がつづき、多くの市民が殺害されたり、拘束されるなどしています。三月二十日の開戦以後、七千人以上の民間人が犠牲になったという数字もあります。

 治安も雇用も改善されず、占領統治に対するイラク住民の反発も強まり、占領軍との衝突も繰り返されています。

 こうした渦中に、占領軍支援のために自衛隊を派兵すれば、イラク国民と砲火をまじえ、アジア侵略戦争以来初めて他国民を殺傷することにもつながりかねません。そうなれば、とりかえしのつかない重大な禍根を残すことになります。

 政府は、自衛隊は「非戦闘地域」でしか活動しないと繰り返しています。しかし、ブッシュ大統領が「勝利宣言」を行った五月以降も、米英軍に百人近い死者が発生し、「軍事的には全土が戦闘地域」(マッキャナン連合軍司令官)となっています。攻撃はしだいに組織性・計画性を強め、占領当局(CPA)のブレマー大使も、「軍・諜報機関の経験者に指揮された軍事作戦であり、失業した労働者による怒りの行為ではない」と言明しました。

 政府のごまかしはもはや通用しなくなっています。

派兵が目的化 支援とは無縁

 しかも重大なのは、自衛隊派兵がイラクの人道復興支援とは無縁だということです。

 日本共産党調査団が報告したように、いまのイラクには水、電気、医療、教育、治安など、巨大な支援が必要です。

 しかし政府は、現行法でもできるこれらの分野の議論をいっさい排除したまま、自衛隊派兵だけを自己目的にしてきました。だからこそ審議のなかでも政府は、自衛隊にたいするニーズ(需要)をなんら具体的に示せませんでした。

 唯一、政府が例示したのは、「水の浄化・補給」でしたが、「米兵は水の配給が少なくて困っている」という与党調査団の報告を受け、「支援業務の有力なオプション」(内閣官房関係者)に浮上したもので、イラク国民のためではありません。

 与党が「採決前に委員会として現地調査を行うべきだ」という野党側の最低限の要求を踏みにじったのも、政府が現地で自衛隊にニーズがあるのか詰められ、「法案成立後、現地に調査団を派遣する」と逃げまわったのも、派兵先にありきの姿勢を何よりも証明するものでした。

地上部隊派遣 米に迫られ

 政府・与党はなぜ、自衛隊のイラク派兵にこだわるのか。すべては米国から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊の派遣)と迫られ、五月の日米首脳会談で、小泉純一郎首相が自衛隊派兵を約束したからにほかなりません。だからこそ、今国会の会期を大幅延長してまで法案成立に突き進んでいるのです。

 政府・与党はことあるごとに「十五カ国がすでに部隊を派遣している」と繰り返します。しかし、彼らの脳裏にあるのは、混乱のなかで苦しむイラクの人々の顔ではありません。ただただ米国につき従うためです。そのための自衛隊派兵の強行を絶対に許してはなりません。

(竹下岳記者)


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