日本共産党

2003年7月3日(木)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第3部 中東・周辺国から(3)

「体制は国民が決める」


 ウルフォウィッツ米国防副長官が「米国に役立つことを考えよ」という米国の対トルコ要求とは何か。英字紙ターキッシュ・デーリー・ニューズ六月十日付は、「トルコと米国の戦略的パートナーシップは終わっていない」と題して、米国のシンクタンク、戦略国際研究センター(CSIS)の見解を紹介しています。

 CSISは、ブッシュ政権の狙いが、イラン、イラク、トルコなどにまたがって居住するクルド人の問題で、トルコが一方的に行動しないようにすることに加え、「シリアやイランへの起こりうる(米国の)行動に対してトルコの支持を確実にすることにある」と分析。そして「シリアやイランに対するトルコの政策はすべて米国と一致するべきだ」というウルフォウィッツ氏の発言を引用しています。

「民主化ドミノ」論

 イラク後の米国の中東でのターゲットがトルコの隣国イラン、シリアにあることは「民主化ドミノ」論として知られています。言葉は「民主化」でも狙いは米国の価値観にそった国づくり、体制の押し付けです。しかも武力行使の可能性を排除していません。最近、ボルトン米国務次官はイランの核問題にかこつけて「米国はイランに対する武力攻撃の権利を持っている」と述べています。テレビ局NTVのベレケト外信部長はこう説明します。

 「ブッシュ大統領はイラク、イランを『悪の枢軸』といった。イラクの次にはイランの体制を変えなくてはならないということだ。そしてトルコにそれを支持させようとしている」

 トルコ側はどうするのか。野党・共和人民党(CHP)のバツー氏は「イランが平和への脅威であり核不拡散条約に違反していると国際的に明らかになれば、米国の立場を支持することは一般的にはありえる」「トルコは政教分離が原則だ。私は他のイスラム諸国もそうなることを望む」と指摘しつつ、「しかし、それは軍事力で体制を変えることを意味しない。体制の問題はもちろんイラン国民が決めることだ」と強調します。

 与党・公正発展党(AKP)の国会議員チャウシュオーリュー氏も「米国から公式に要求があったとは聞いていない」としながら、「米国は他国の体制を変える立場にはないはず」と述べました。

支持は簡単でない

 トルコ政府は欧州連合(EU)加盟を外交の最優先の課題としつつ、イラク戦争で「凍結」された米国との関係修復をめざしています。それでも中東諸国に対する米国の介入を簡単に支持できません。シンクタンクCSISは、米国がイランと対決した場合、トルコ政府がイラク戦争時と「同じような苦境」に直面するだろうと分析しています。

 中東技術大学のヤルマン助教授はアンカラのキャンパスで、「トルコ世論は米国がこの地域のどの国であれ介入することに直ちに支持を与えないだろう。介入の正当性が強力に立証されねばならないからだ」と述べ、今後の中東の見通しをこうのべました。

 「米国は今回イラクに対してやったようなことをまた繰り返すことは簡単にはできない。イラクがこれから何年も米国にとって難問となるだろう。“一つ政権をひっくり返したぞ。新しい政権をつくるか”というように簡単にはいかない」

 (アンカラで小玉純一)(つづく)


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