日本共産党

2003年6月30日(月)「しんぶん赤旗」

社会リポート

続発 高速道トラック事故

背景に何が…

無理な荷主の要求/過酷な労働条件


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 高速道路で大型トラックの追突事故が頻発しています。この十日間だけでも六件発生し十一人が死亡、三十八人が重軽傷を負う惨事が繰り返されています(別表)。大型トラック事故の背景に何があるのか、調べてみると――。 (遠藤寿人記者)

不況型事故

 一連の事故は、大型トラックが渋滞や停車中の列に突っ込み、多重衝突事故を引き起こしているのが特徴です。警察は運転手の前方不注意を指摘します。

 運転手の責任はそれぞれ具体的に明らかにする必要がありますが、背景のひとつとして、運転手の労働条件が浮かび上がってきます。

 二十三日、愛知県新城市の東名高速上り線で起きた事故では、運転手が事故前日の未明まで代行運転のアルバイトをしていたことが判明しています。運転手は、事故当日も事故発生十時間前の午前一時ごろから勤務。週に三、四回は同じ時間帯で代行運転をしていたと報じられています。

 東名高速道路(大井松田―清水間)で事故・故障車の救済をする日本ハイウエイセーフティー研究所(静岡・沼津)の加藤正明所長は、一連の事故を「長引く景気低迷による『不況型』事故」と指摘します。

 不況で仕事量が極端に減っている半面、トラック事業は一九九〇年の規制緩和で許可制に。事業者は四万社から五万七千社に増えた結果、価格破壊が進んでいます。

 厚労省の基準は、連続運転時間を四時間を超えないようにと定めています。加藤氏は「荷主の無理な要求にこたえるために基準どおりにはやれない実態がある」と警告します。

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愛知県新城市の東名高速上りで衝突、炎上した車両=23日午後0時半ごろ(愛知県警提供)

 全日本建設交運一般労働組合(建交労)の赤羽数幸書記次長は「時間指定や運賃の下落、過積載など無理な発注条件は、国交省や厚労省も認め、荷主団体に改善を求めているほどだ」といいます。建交労は一月に「トラック労働者の実態調査アンケート」をおこないました。これによると、労働者の年収は平均六十一万円も減りました。二年連続の減です。過積載も半数を超す50・9%が「ある」と回答。居眠り運転についても「よくある」「時々ある」との回答があわせて58%も。赤羽書記次長は「深刻な事態だ」と語ります。

構造に問題

 さらに前出の加藤氏は直接の事故原因調査についても「運転手の前方不注意といってすませずに、なぜ不注意が起きたのか、問題点を具体的に解明し、ドライバーに教育していくことが大事だ」と語ります。

 加藤氏によると、大型トラックの運転席は、約二百六十センチで乗用車(百十センチ)より高く、「先行車」を見ながら走る乗用車にくらべ、高い位置から路面が広くよく見える半面、前方の距離感がつかみにくく、前方への注意が散漫になる傾向があるといいます。ハンドルの取り付け角度もトラックが二五度と寝ているのに、乗用車は六五度と立っています。トラック運転手は疲労が蓄積するほど、ハンドルにかぶさるようになり、あごを引いて路面を見る傾向が強くなると指摘します。

 また、前方視界に富士山や海、ビルなどが見える地点では、運転手の「注視点」が移動し、一瞬の判断を遅らせ事故に至るケースが多いといいます。

 労働条件や大型トラックの構造・特性など事故を総合的に検討し、対策をとる必要がある、と加藤氏は強調します。


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