日本共産党

2003年6月29日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

急げ グラリとくる前に

震災に強い街づくり

「三陸南」地震から1カ月


 岩手、宮城で震度6弱を観測した五月二十六日の地震(三陸南地震)から一カ月になります。幸い死者こそなかったものの百名余の重軽傷者がでました。同時に多数の建物の損壊などで被害総額は約百五十億円にのぼりました。「大災害の一歩手前」だった今回の震災から被災者支援のあり方と防災上の課題を探ってみました。


国と地方の真剣な取り組みを

被災地視察 高橋衆院比例代表候補が手記

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倒壊したブロック塀を調査する高橋ちづ子衆院比例候補(右)=5月27日、宮城県石巻市

 五月二十六日、仙台市内で地震に遭遇した私は、翌日横田有史宮城県議らと石巻市に向かいました。屋根瓦が落ちたという方からは、「波打つように揺れて立っていられなかった。二十五年前の宮城県沖地震より怖かった」「市からは何もお見舞いがこない。銀行なら国が二兆円も支援するのに」と訴えられました。

 六月三日、岩手二番の被災地江刺市に行きました(一番は大船渡市)。市の助役さんは、道路や農業施設などは国の事業で手当てされるが、一般商店や公共施設などは制度がないと困っていました。個人補償と小口災害に対する対策の確立も急がれると実感しました。

 新幹線の橋脚問題では岩手県石鳥谷町に五月三十日、瀬古由起子、大森猛両衆院議員とともに調査。JRの担当課長は、「当時の設計基準でつくられているので安全です」という驚く回答でした。一九七四年の建設で、宮城県沖地震も阪神大震災もあったのに何の見直しもされなかったのです。紫波町や江刺市でも橋脚を見ましたが、建設現場の方はJR盛岡管内で耐震補強をしなかったのは「金がかかるから」、この地域だけ崩れたのは「地盤が悪いから」とはっきりと答えたのです。安全よりも利益優先のJRの体質が浮かび上がりました。

 「次いつ来るか」という不安が広がる中、「災害に強い町づくり」へ、国と地方の真剣な取り組みが急がれています。

 (高橋ちづ子・日本共産党衆院比例代表東北ブロック候補)


個人住宅の耐震改修助成

仙台市が検討表明

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 地震防災に関して専門家たちが重視するのは、建物の耐震改修です。阪神淡路大震災では、神戸市内で三カ月以内に亡くなった人の九割は、家屋の倒壊で下敷きになったケースでした。

 一九七八年の宮城県沖地震を受けて八一年、国は建築基準法を改正し耐震基準を強化しました。いま問題視されているのは改正以前に建てられた建物です。

 仙台市では昨年度から改正以前に建てられた木造住宅を対象に耐震診断を開始しています。今月十日に行われた耐震診断の募集では、募集枠の四百戸が一日でいっぱいになり市民の関心の高さを示しました。しかし、耐震診断、耐震改修は、民間の建物とくに個人住宅については工事費の負担などが障害となり、遅々として進んでいません。

 昨年九月の仙台市議会で、日本共産党仙台市議団は、木造住宅耐震改修費助成条例を提案しました。藤井黎仙台市長は、今月十日の記者会見で、住宅の耐震改修にかかわり、「改修工事費の支援も含めて検討していきたい」と表明しています。

 (宮城県・辻畑尚史記者)


岡山県が被害想定見直し

党県議団 消防体制強化求める

 「宮城県気仙沼沖を震源とする地震は、私たちに対策強化の重要性を痛感させた」――。日本共産党岡山県議団(武田英夫団長)は四日、石井正弘県知事に、地震対策についての申し入れをしました。

 同県はこの三月、今後三十年以内に発生する確率が40%から50%とされる南海地震での被害想定を、死者最大八百二十一人とするなど従来の予想を大きく見直しました。

 これを受け、日本共産党の武田県議は総務委員会(五月十九日)で「消防体制の強化が急務」だとして、火災での消防機関の出動回数は全国十八番目と多いのに、消防職員の数は人口十万人当たり百七人で全国四十番目と遅れている体制の改善を求めてきました。

 四日の申し入れではこれにくわえ、学校の耐震診断、耐震工事を急ぐことや水島コンビナートの防災対策強化、大規模災害時の避難場所や危険個所を示したハザードマップを全市町村が早急に作製するよう援助することなど、七項目の対策を求めました。

 (岡山県・宮木義治記者)


なぜ起こる宮城県沖地震

耐震基準満たすよう建物の改修は急務

日本地震学会 大竹政和会長に聞く

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 宮城県や岩手県を襲った地震を機に、地震防災への関心が高まっています。宮城県沖地震の発生確率は、今後三十年以内に98%とされています。その発生メカニズムや備えなどについて、日本地震学会会長で地震予知連絡会会長の大竹政和・東北大学名誉教授に聞きました。

プレート同士のくっつき部分の破壊が原因か

 予想されている宮城県沖地震は、陸側プレートと、その下にもぐりこんでいる太平洋プレートとの境界で発生するものですが、五月二十六日の地震は、太平洋プレートの内部でおこったものです。マグニチュード7は、プレート内部地震としては、東北地方で観測史上最大でした。

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 前回一九七八年の宮城県沖地震のときも、その四カ月前にマグニチュード6・7のプレート内部の地震がありました。プレート境界でおこる地震とプレート内部でおこる地震との関連は、十分にわかっているわけではありませんが、なんらかの関係があると考えるのが妥当だと思います。

 七八年の宮城県沖地震のときは、約二年前から地震活動が騒々しくなりました。宮城県沖地震の震源地を取り巻くように頻繁に地震がおきました。その後の研究によると、陸側プレートと太平洋プレートとの境界には、両プレートがくっついている部分、アスペリティと呼ばれる固着域がいくつかあります(図)。小さいアスペリティがつぎつぎにすべっていくと、宮城県沖地震をおこすアスペリティへの荷重が強まり、ついには本命のアスペリティがすべり、大地震がおこるというメカニズムです。いま目の前で、これと類似した現象が進行しているように思います。緊張は高まりつつあります。

 昨年十一月三日、マグニチュード6・1の地震がありました。この地震は奇妙な振るまいをしました。地震のあとに、ズルズルとしたゆっくりしたすべりが数カ月続きました。これは、予想される宮城県沖地震の震源北側のプレート境界で、小さなアスペリティが壊れ、すべっていったことを示しています。

 いま、いちばん強調したいのは、むやみに地震を恐れてあたふたするのではなく、事前の備えをしっかりするということです。人命の損失を防ぐという点では、事前の対策にまさるものはありません。宮城県沖地震は、確かに大きな被害が予想されますが、仙台を壊滅させてしまうほどではないと思われますので、事前の備えでかなり被害を小さくできると考えます。そこで成功すれば、宮城県に住む人たちが助かるだけでなく、全国に重要な教訓を発することになるでしょう。

 備えについて言えば、家具の固定や危険地域の点検などいろいろとありますが、なんと言っても地震に強い建物をつくることです。これは究極の地震対策だと思います。耐震基準が改正された一九八一年以前の建物で、とくに木造のものは、耐震改修を急がなくてはなりません。先月の地震は、地震防災意識を高めたという点で、大きな意味を持ちます。これを機に、備えを加速させることが大事です。

 


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