日本共産党

2003年6月29日(日)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第2部 国際政治の本流を探る (8)

多国間協力の網の目


写真
ASEAN・ロシア共同宣言に調印するロシアのイワノフ外相(前列左から3人目)と議長国カンボジアのホー・ナムホン外相(その右)=19日、プノンペン(鎌塚由美撮影)

 「われわれは東アジア共同体をつくってともに繁栄していかなければなりません。戦前の帝国主義的な大東亜共栄圏ではなく、民主的な共同体です」。マレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)のソピー会長は構想を意欲的に語ります。

政治家・研究者招き

 同研究所内に東アジア経済センターを立ち上げ。域内各国の協力と統合促進、外部世界との連携について調査研究を進めています。

 研究だけでなく具体的な促進のために「東アジア会議」の設立を目指し、各国から若い政治家、研究者を招いて八月にクアラルンプールで創立大会を開きます。

 その前提となる各国との協力と互恵の関係が東南アジア諸国連合(ASEAN)と主要国の間で急速に発展しています。

 六月十九日、ASEAN外相会議の際、ロシアとASEANは共同宣言を発表し、地域の安全保障は平和的手段に徹し、軍事的手段を排除すると強調しました。宣言はまた「国際法と国連憲章の規範と原則に沿って対話と協力を強化」し、ASEANと域外諸国の関係を規定した「東南アジア友好協力条約(TAC)の重要性」を確認しました。

 ASEAN関係者によるとこの宣言は、ロシアが米国などを含むASEAN地域フォーラムによる採択を目指して提案していた「太平洋協定が置き換わったもの」。米国などが賛成するはずのない中身だから「お蔵入り」になっていたものが、「ロシアとASEANだけで」署名することになったといいます。

 一方、中国は今回、十月のASEAN首脳会議の際に、東南アジア友好協力条約に署名すると発表。インドも同時期の署名を表明し、準備を急ぐことで合意しました。

 東南アジア友好協力条約は、「ASEANの憲法」ともいうべきもの。国連憲章を土台に、(1)独立、主権、領土保全などの相互尊重(2)外部からの干渉、転覆、強制なしに自国を運営する権利(3)内部問題への不干渉(4)紛争の平和的手段による解決(5)武力行使と武力による威嚇の放棄(6)諸国間の効果的協力―を原則としています。

 こうした条約に世界人口の三分の一をしめる中印が署名し、ロシアがASEANと同じ原則にたって協力、協調していくことになります。

非核化推進の流れ

 中国もロシアも核兵器保有国ですが、ASEANが推進している東南アジアの非核化に賛成。非核地帯の実効性を保障する非核兵器地帯条約付属議定書への署名の用意を表明しています。核をもつようになったインドは多国間交渉による核兵器廃絶を主張しています。

 ASEAN十カ国も中印ロも国内にさまざまな問題をかかえ対外政策は必ずしも同じではありません。北東アジアには北朝鮮の核開発問題など緊張した状況があります。しかしこうした多国間協力の網の目が実を結び、国連憲章を土台にした平和、友好、協力の関係が広がればどうなるか。内政干渉はせず、協議を通じた合意と納得ずくで一つ一つの問題解決をはかることができれば、アジアから確実に平和の新しい流れが広がり、東アジア共同体に向けた大きな前進となることができるでしょう。

 (クアラルンプールで鎌塚由美、ハノイで北原俊文)

 (つづく)


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