2003年6月27日(金)「しんぶん赤旗」
「日本経済の再生シナリオ」のうたい文句で小泉内閣が決めた「骨太の方針」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」)第一弾から二年。第三弾が放たれようとしています。果たして「再生」の道筋は描かれたのでしょうか。(渡辺健記者)
![]() 仕事は途切れ途切れと業者。「景気回復、本当にや ってもらいたい」=東京・墨田区の板金加工所 |
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「骨太の方針」第一弾が決まったのが二〇〇一年六月末です。それから丸二年。日本経済を「再生」どころか破壊してきたのが、小泉「改革」でした。
グラフをみてください。過去十年間の中でも、小泉内閣の二年がいかに異常だったかがわかります。橋本内閣時代の一九九七年に消費税を3%から5%に引き上げるなど九兆円負担増で、日本経済を失速させたとき以上の打撃を与えています。
理由は簡単です。「経済再生の第一歩としての不良債権問題の抜本的解決」(「骨太の方針」第一弾)を最優先させたからです。
不良債権問題の解決は必要です。しかし、「不良債権があるから景気が悪くなるのではなく、景気が悪いから不良債権は生まれる」(山家悠紀夫神戸大学大学院教授・元第一勧銀総研専務理事)ということです。
小泉「改革」は、このメカニズムを無視して、「破たん懸念先」以下の不良債権の最終処理を二、三年でおこなう方針を打ち出しました。最終処理とは、融資先の企業を倒産させることなどです。
こうした「創造的破壊」を通して「効率性の低い部門」から「効率性の高い部門」へ「ヒトと資本を移動することにより、経済成長を生み出す」(同第一弾)シナリオでした。
移動させる先だったはずのIT(情報技術)関連産業は、その後、「ITバブル」の崩壊で、人減らし・リストラ競争に走ります。シナリオの前提が狂ってもなお、不良債権の最終処理を加速させれば、残るのは「破壊」だけです。
小泉首相は失業率が悪化しても大型倒産が起きても「構造改革が順調に進んでいるあらわれだ」(〇一年十二月七日)などと平然としたものでした。
しかも、小泉「改革」は、企業淘汰(とうた)に社会保障制度などの「改革」を組み合わせて推進されました。健保の本人三割負担、介護保険料の大幅値上げがされ、所得税や発泡酒などの増税とあわせると四兆円もの負担増が国民に襲いかかっています。
これで景気がよくなるはずがなく、景気悪化を反映して〇二年度も二年連続して税収不足に陥るのは確実となっています。
くらしと経済の「破壊」に拍車をかけようとしているのが、「骨太の方針」第三弾です。
「地方」に手をつけ、社会保障や教育関係を狙い撃ちにして国の負担を減らそうとしているうえ、消費税の税率引き上げに道筋をつけようとさえしています。
消費税を10%以上の二ケタ税率に引き上げることを盛り込んだ政府税調の「中期答申」を石弘光会長から受け取った小泉首相――。「私が行革をやれば、後の人が(消費税引き上げを)やりやすくなる」と“地ならし役”を買ってでて、「議論はタブー視せずやってほしい」(十七日)とはっぱをかけました。
「骨太の方針」第三弾にも、〇六年度までに「必要な税制上の措置を判断する」と明記されています。
もし、現行5%の消費税が10%になったら、四人家族で新たに年四十万円近い負担増となり、消費税だけで年八十万円近い負担になります。
「痛み」の先にさらに大きな「痛み」しかみえてこない小泉「改革」。こんな「改革」は、ただちにやめさせることこそ、家計と日本経済をたてなおす確かな第一歩です。
経済財政諮問会議とは
経済財政諮問会議とは経済財政政策に関し、「有識者の意見を十分に反映」させつつ、「内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮する」ことを目的として、内閣府に設置される合議制機関(内閣府のホームページ)。首相がトップダウンで政策を決めるための機関です。
「有識者」といっても、日本経団連会長の奥田碩トヨタ自動車会長らです。日本経団連事務局幹部は「政策的には、諮問会議での奥田の提案はほぼ採用されている。消費税率の引き上げは、選挙もあるから、さすがにすぐにとはいかないが」といいます。
小泉首相は経済政策を竹中大臣に「丸投げ」していると、よくいわれますが、財界の意向は「丸のみ」しているようです。
議長 小泉純一郎 内閣総理大臣
議員 福田 康夫 内閣官房長官
同 竹中 平蔵 経済財政政策担当大臣
同 片山虎之助 総務大臣
同 塩川正十郎 財務大臣
同 平沼 赳夫 経済産業大臣
同 福井 俊彦 日本銀行総裁
同 牛尾 治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長
同 奥田 碩 トヨタ自動車(株)取締役会長
同 本間 正明 大阪大学大学院経済学研究科教授
同 吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授