日本共産党

2003年6月25日(水)「しんぶん赤旗」

衆院本会議


 二十四日の衆院本会議で、日本共産党の木島日出夫議員がおこなったイラク特措法案についての質問と児玉健次議員がおこなったテロ特措法延長案についての質問(いずれも大要)は次の通りです。

イラク特措法案

木島衆院議員の質問(大要)

 日本共産党を代表してイラク特別措置法案について質問します。

 本法案は、米英両軍による無法なイラク戦争とそれに続く軍事占領に対し、自衛隊を派兵してこれに参加・加担することを核心とするものです。

 ブッシュ米大統領が「戦闘終結宣言」した五月一日以後も、イラク国内において、米占領軍とイラク国民との武力衝突が繰り返され、五十人以上の米軍兵士が死亡したと伝えられています。このような地域に、軍事占領支援のために自衛隊を派兵することは、初めてのことですが、これは、武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した憲法九条に違反し、到底許されるものではありません。

 軍事占領のもとになったイラク戦争の合法性について聞きます。

 米英両国が戦争遂行の最大の口実にし、総理が戦争支持の最大の理由とした、大量破壊兵器の問題をめぐって、情報の不正な操作が国際的に大問題になり、両国においても、きびしい責任追及すら始まっています。

 大量破壊兵器廃棄問題について、イラクの安保理決議違反を判定する権限は、国連安保理にのみ与えられており、安保理は、圧倒的多数でそれをきっぱりと拒絶したのです。

 ところが、本法案は、第一条には「国連決議第678号、第687号、第1441号に基づき国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使」と、米英による無法な戦争を追認・合法化しようとする、とんでもない記述があります。

 日本政府は、無法なイラク戦争を、この法律によって合法化してしまうつもりなのですか。

 イラク占領の合法性について聞きます。

 法案第一条には、「国連安保理決議第1483号を踏まえ、わが国が占領米軍に対して支援活動をする」とありますが、安保理決議一四八三号は、軍事行動の合法性や軍事占領の合法性に、直接触れてはおりません。

 日本政府は、米軍によるイラク占領の国際法上の合法性について、どのように考えているのですか。

 イラクの現状について聞きます。

 わが党は、十三日から九日間、イラク調査団を派遣し、イラク戦争による破壊の状況、治安の状況、イラク住民の実態と要求、占領軍の行動など現地の状況をつぶさに調査してきました。

 占領米軍が、いま、力を注いでいるのが、イラクの旧政権武装勢力の掃討作戦です。

 米軍の手荒な行動や、一向に改善されない雇用情勢、水・電気などの不足によって、イラク住民の占領米軍に対する反感が高まっており、それらが、米軍とイラク国民との衝突が繰り返される最大の要因になっているのです。

 政府は、イラクのこのような現状を、一体、どのように認識しているのですか。

 法案第二条は、占領米軍を支援する自衛隊が行う対応措置は、「武力による威嚇又は武力の行使にあたるものであってはならない」「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施する」と規定しています。

 しかし、イラク国内の現状の下で、戦闘行為が行われる地域と行われない地域の区別など、出来るのですか。占領米軍支援活動をする自衛隊が、イラク住民から見れば、占領米軍と同一視されるであろう事は容易に想定されることですから、非戦闘地域が、いつ、戦闘地域に変わるか誰も予測できないのではないですか。

 自衛隊員が、襲撃されるおそれがないといえるのですか。

 法案には、自衛隊が携行する武器の種別に何の規定・制限もありません。どのような武器を携行するつもりなのですか。

 不意の襲撃に対して、自衛隊が反撃すれば、それは、憲法の禁ずる武力の行使そのものではないですか。正当防衛としての武器の使用と武力の行使とを使い分ける、これまで政府が取って来た姑息(こそく)な解釈は、このような状況下のイラクにあっては、とうてい通用しないのではないですか。

 イラクに派遣された自衛隊が何をやるのかという問題です。

 法案第三条は、「安全確保支援活動」として自衛隊が行う活動として「イラク国内における安全及び安定を回復する活動を支援するために」「医療、輸送、保管(備蓄を含む)、通信、建設、修理若しくは整備、補給、消毒」をあげています。

 自衛隊は、占領米軍に対する武器・弾薬の輸送、保管、備蓄、補給、修理ができるのですか。戦闘で負傷した米兵に対する輸送や治療、野戦病院の建設、占領米軍のための兵舎や武器庫などの建設が出来るのですか。

 イラク国内において占領活動を続け、イラク住民との間で戦闘行動を行っている米軍に対する支援活動として、このような活動をする自衛隊は、明らかに、占領米軍の一部となるということではありませんか。

 憲法九条のもとで、このような海外での自衛隊の軍事行動がどうして可能なのか、重ねて総理の答弁を求めます。

 イラク、イスラム社会とわが国との友好についてお聞きします。

 イスラム社会をはじめ、圧倒的多数の国際社会の反対の声に逆らって、米英両国によって行われたイラク戦争と、これに続くイラク占領に対して、わが国が自衛隊を派兵して、占領米軍に対する軍事支援をするということは、日本が、イラク住民をはじめ、イスラム社会全体と敵対的な関係に入るということを、国際政治の上では意味します。

 戦後わが国は、憲法九条を持つ国、戦争をしない国として、アラブ・イスラムの国々と、友好的な関係をつくり上げてきました。アラブ・イスラム諸国との友好的な関係を維持してきたことは、エネルギーの多くを中東の産油国に依存してきたわが国にとって、死活的に重要なことでした。

 イラク住民からも、イスラム社会からも何らの要請もないにもかかわらず、自衛隊の派兵を占領米軍支援のために強行するようなことになれば、わが国とイスラム諸国との友好関係に、重大なヒビがはいることは明らかです。

 このような外交上の大問題をどう考えているのですか。

 安保理決議一四八三号は、イラクの主権、領土保全を再確認し、イラク国民が自由に自らの政治的将来を決定し、自らの天然資源を管理する権利を強調しています。

 そのためには、イラク国内の治安の回復、イラク国民自身による新政府の早急な樹立、国連を中心とした本格的な復興支援、人道支援こそが必要です。

 今、わが国がなすべきことは、国連を中心とした人道・復興支援を本格的に進めることであり、軍事占領に自衛隊を派兵してこれに参加・加担することではありません。本法案の廃案を求めて、私の質問を終わります。

木島議員への小泉首相答弁

 【自衛隊派遣と憲法九条との関係】

 本法案にもとづく自衛隊の活動は、武力の行使にあたるものではない。わが国はイラクにたいして武力を行使していない非交戦国であり、本法案にもとづく活動も、交戦権の行使にあたるものは含まれていないことから、憲法九条に反するものではない。

 【イラク戦争の違法性】

 本法案は、国際社会全体の支持を得て、多くの国が取り組んでいるイラクの復興に関し、わが国としてふさわしい貢献をおこなうためのものである。なお政府としては、米英によるイラク攻撃は、累次の安保理決議に合致した行動であり、違法なものとは考えていない。

 【米軍のイラク占領】

 米軍によるイラク占領の国際法上の合法性についてだが、安保理決議一四八三は、占領国としての米英の関係国際法のもとにおいての特定の権限、責任および義務をあらためて確認したうえで、実効的な施政を通じたイラク国民の福祉に関する権限等を付与している。こうした点から、米軍等によるイラク占領は、国際法にしたがっておこなわれているものと考える。

 【イラクの現状】

 イラクの現状に関する認識だが、イラクではフセイン政権残党による散発的・局地的抵抗があるものの、戦闘は基本的に終了しているものと承知している。こうしたなかで、連合暫定当局が正常な市民生活の回復につとめているほか、年金や給与の支払い等を実施するなど、イラクの国民による統治への移行に向けた努力が行われているものと認識している。

 【活動の区域】

 本法案にもとづく活動の区域を、いわゆる非戦闘地域の要件を満たすように設定するにあたっては、わが国が独自に収集した情報や諸外国から得た情報を総合的に分析し、活動中の状況変化の可能性も含めて、合理的に判断することが可能である。

 本法案にもとづき活動する自衛隊員の安全の確保については、政府全体として最大限の配慮をおこなっていく。

 【武器使用】

 自衛隊が携行する武器については、実施する業務、現地の治安等を勘案し、派遣される隊員の安全確保のために必要なものを、基本計画において定める。また当該武器の使用については、現地の状況に応じ、法案趣旨にしたがって、適切に行われるべきであることは当然だ。

 武器の使用と武力の行使についてだが、本法案に定める武器の使用は、自己、あるいは自己とともに現場に所在する一定の者の生命、身体の防衛を目的とするものだ。指摘の不意の場合における反撃の場合において、本法が認める必要最小限の武器の使用は、憲法九条で禁止された武力の行使にあたるものではない。

 【占領への参加】

 本法案にもとづく自衛隊の活動は、イラクの安全および安定の回復をおこなう国連加盟国の軍隊にたいする医療、輸送、建設等であり、それ自体武力の行使にあたるものではない。活動する地域をいわゆる非戦闘地域に限っていることなどから、他国による武力の行使との一体化の問題も生じない。さらにわが国はイラクにたいして武力を行使しない非交戦国であり、これらの行為をおこなったとしても、占領行政そのものを行うことにはならず、憲法九条に反するものではない。

 【外交上の問題】

 わが国とイスラム諸国との外交上の問題だが、わが国がイラクのために積極的な支援を行うこと自体が、イスラム諸国との関係に悪影響を及ぼすとは考えていない。

 しかしながら、無用な懸念や誤解を避けるために、これらの諸国にたいしては、必要に応じ、法律の趣旨、目的等を十分に説明し、理解を得たい。


テロ特措法延長案

児玉衆院議員の質問(大要)

 日本共産党を代表して、テロ特措法の二年延長案について質問します。

 テロ特措法は、「9・11テロ攻撃」の「脅威」を「除去する」との名の下にアメリカが開始した報復戦争に、自衛隊を海外出動させる憲法違反の法律です。

 第一に、報復戦争によってテロの土壌がなくなったのかという問題です。私がテロ特措法案の特別委員会で、戦争は憎悪と報復の連鎖を引き起こす、と指摘したことをご記憶でしょう。

 アムネスティ・インターナショナルの事務局長は、アメリカがすすめる「テロとの戦争」が「世界をより危険にした」と表明しています。

 総理はいまなお、アメリカの軍事力によって、テロの土壌をなくせる、というのですか。

 第二に、テロ特措法の下で自衛隊がどのような活動をしてきたのかという問題です。

 自衛隊派遣の基本計画には、米軍等に対する、「補給」、「輸送」、「捜索救助活動」の実施がもりこまれています。しかし、自衛隊が、いつ、どこでどのような活動をおこなったのか、秘匿されています。活動の実態を、国会にも国民にもあきらかにしないまま、法律を延長することは許されません。

 端的に聞きます。「輸送」では、自衛隊の航空機、艦船が、米軍等の兵員、武器・弾薬の輸送を行ったのか。行ったとすれば、いつ、なにを、どこから、どこへ輸送したのか、示していただきたい。「捜索救助活動」はどうか。「待機体制」に入ったことがあるかもふくめ示していただきたい。

 「補給」では、米軍などに燃料を二百五十一回、三十万八千キロgを補給したとしています。重大なことは、イラク攻撃に参加した米空母キティホークへの給油です。政府は、テロ特措法では、「9・11テロ」の脅威を除去する任務の軍隊にしか給油できない、と答弁してきました。いま、防衛庁は、キティホークは、イラク攻撃任務と対テロ任務の双方に従事していた、自衛隊補給艦から直接給油していない、などと弁明しています。これでは国民は納得しません。法律を踏み外した給油について答弁を求めます。

 第三に、アメリカのラムズフェルド国防長官は、五月一日、カブールで、「アフガンは戦闘活動の場ではなくなった」とのべ、在アフガン米軍のマクニール司令官は、来年夏までにアフガンから撤退すると表明しました。米軍が一年後には撤退するというのに、この法律を、なぜ二年間延長するのか。

 米軍はイラクに重点を移し、アフガニスタンは他国軍隊に「肩代わり」させる意向だといいます。総理は、アメリカからどのような要請を受けているのか、明らかにしていただきたい。

 最後に許すべからざる犯罪であるテロに対しては、司法と警察の国際的協力によって解決すべきであり、日本は、憲法九条をもつ国として、このことを基本に国際社会に貢献すべきであることを強調し、質問を終わります。

児玉議員への小泉首相答弁

 【テロの撲滅】

 国際テロの根絶のためには、国際社会が緊密に協調してあらゆる手段を講じることが重要だ。わが国としてはテロ特措法にもとづく支援のほか、情報収集、テロ資金対策等について諸外国との協力関係を強化しながら、主体的に取り組んでいく。

 【輸送】

 テロ特措法にもとづく協力・支援活動として海上自衛隊の輸送艦等が本年二月から三月までの間にタイからインド洋沿岸国までタイの建設用重機や人員の輸送を実施している。また、航空自衛隊の輸送機等が平成十三年(二〇〇一年)以降、在日米軍基地間及びグアム方面等への米軍の人員及び物品の輸送を合計百八十九回実施している。

 【捜索救助活動】

 捜索救助活動は出動・待機を含めて現在まで実施したことはない。

 【補給】

 相手国との確認された信頼関係のもとにおこなわれるものであり、わが国が提供した物品については、指摘の例も含め、テロ特措法の目的に合致して適切に使用されているものと承知している。

 【二年延長の理由】

 9・11同時多発テロによる国際テロの脅威は依然として深刻でありテロとのたたかいは引き続き国際社会にとって大きな課題だ。このようなことを踏まえ、テロ特措法の延長が必要と判断した。なお、政府としては米軍が一年後にアフガニスタンから撤退するとの情報は承知していない。

 【アフガニスタンに関する米国要請】

 米国から具体的要請は受けていない。アフガニスタンとその周辺におけるテロの脅威に対処するための活動を継続する必要があり、自衛隊の支援は引き続き必要とされているとの説明を受けている。


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