日本共産党

2003年6月23日(月)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第2部 国際政治の本流を探る (4)

米国民「だまされた」?


 「ブッシュ政権の信頼性は崩壊し始めているのか」――。CBSテレビの討論番組で十五日、キャスターがこう切り出しました。同日のワシントン・ポスト紙でジャーナリスト、デービッド・ワイズ氏は、ホワイトハウスが「信頼性の崩壊」に見舞われていると指摘しました。記事の題名は、「うそをついたとしても、ブッシュが最初ではない」。

最初はベトナム戦争

 政権が信用できるか、という問題は、確かにこれが初めてではありません。ワイズ氏によれば、信頼性の崩壊を意味する「クレディビリティ・ギャップ」の言葉が、最初に使われたのはジョンソン政権。一九六四年、トンキン湾事件をでっち上げて、議会に戦争権限を承認させ、「北爆」でベトナム侵略を拡大しました。

 ブッシュ大統領も米国を戦争に引きずり込みました。その最大の理由が、イラクの大量破壊兵器は「差し迫った脅威だ」という主張でした。それがうそなら、「米政治史上最悪のスキャンダル」(クルーグマン・プリンストン大教授、ニューヨーク・タイムズ紙)です。

 米軍やCIA(中央情報局)の必死の捜索にもかかわらず、大量破壊兵器は発見されていません。ブッシュ大統領が唯一「見つかった」と力を込めた移動式生物兵器実験室も「当て外れ」。いまでは口にできなくなっています。

 「ブッシュ政権は、だまされたという国民感情をまったく意に介さないのか?」(上院本会議でバード議員、五日)

 議会では、イラク戦争容認決議を支持しなかった民主党議員らが、政権追及を強めています。クシニッチ下院議員らは五日、イラク大量破壊兵器に関するすべての文書の提出を求めた決議案を提出しました。

 イラク戦争の大勢が決した当初は、フセイン政権の独裁や腐敗が明るみに出るなかで、米国民は、イラクの「体制転換」に強い支持を与えました。しかし、いまでは、軍事占領の「困難」を直視せざるを得なくなっています。

 「本日二十日、カリフォルニア州のポール・ナカムラ技術兵(二十一歳)が、イラクのイスカンダリヤで十九日死亡したことを発表する。救急隊員のナカムラは、負傷兵を輸送中、対戦車ロケットりゅう弾を被弾した」

 米国防総省は毎日のように、こうしたイラク現地での米兵の死亡発表を続けています。武装勢力の壊滅をめざして、新作戦に踏み出したものの、市民を巻き添えにし、反米感情をさらにあおる結果にもなっています。

先見えぬ占領に批判

 かいらい政権の樹立も、米政権の予定通りに進んでいません。米国が指導者として送り込んだイラク亡命者グループのチャラビ氏にさえ、イラク国民にもっと権限を与えるべきだ、と批判を浴びる始末です。

 経済面でも困難山積。国連の経済制裁が解除されたにもかかわらず、食料の配給制を復活。にせ札対策もあり、フセイン前イラク大統領の肖像が入った二百五十ディナール札を印刷しなければならなくなったことは、米国内でも困惑をもって受け止められました。

 戦争を支持した議員からは、大量破壊兵器問題よりも、イラクの「復興と民主化」の方が「より重要だ」(マケイン上院議員)との声があります。しかし、軍事占領はどれだけの期間続くのか、どれだけの兵力や費用が必要なのか。先の見えない占領に、米議会では、ブッシュ政権への批判が勢いを増しています。

 (ワシントンで浜谷浩司)(つづく)


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