2003年6月15日(日)「しんぶん赤旗」
埼玉県鳩ケ谷市で少人数学級実現の運動が広がっています。百人で市への要請行動をおこない、請願署名を有権者の二割近くから集めました。教育基本法を学習して、この法を守り生かそうという取り組みと、子どもたちに行き届いた教育を求める親たちの願いが結びついた運動です。
(高間史人記者)
教育基本法の学習をしてきたのは教職員組合や労働組合、新日本婦人の会などの団体と個人でつくる「子どもと教育を守る鳩ケ谷市民会議」。二〇〇一年に侵略戦争を美化する歴史教科書の問題に取り組むなかで、教育基本法改悪の動きを心配する声が出たのをきっかけに学習会を始め、これまで九回開催。毎回教師、父母ら三十−十数人が参加しています。
学ぶなかで、教育基本法が求めている教育条件の整備がまったく不十分なことが話題になりました。とくに問題になったのが少人数学級。鳩ケ谷市では学級規模をめぐり親たちの怒りをかう事件が起きていたからです。
埼玉県内でも志木市などに少人数学級が広がるなか、鳩ケ谷市教育委員会もいったん二〇〇二年度から実施の意向を県教委に示し、新聞でも報道されました。ところが新年度直前に市教委はこれを「事務的ミスだった」として撤回してしまいました。ある小学校では校長が新一年生の親に二十七人以下の三クラスになると説明していたのに、始まってみると四十人ずつの二クラスでした。
教育基本法の学習会に参加した人たちは少人数学級の実現を求める運動を起こそうと話し合い、議会への請願の運動を始めました。
運動は少人数学級を切実に求める親たちの間に広がりました。いままでこうした運動の経験のない母親たちもおおぜい参加して、署名や教育委員会・議員への要請行動、議会の傍聴などに精力的に行動しました。少人数になると説明を受けて裏切られた親たちは四十人の子どもがいる教室の写真を撮って訴えました。
小三、小一、三歳の三人の子をもつ柳小百合さん(40)も議員要請や署名で奮闘した一人。「いまは手のかかる子どもが多くなって先生たちは大変そう。うちの真ん中の子のクラスは三十六人ですが、やはり落ち着かない感じ」といいます。子どものころ勉強が分からなくてつらい思いをしたという柳さん。「私の子どもたちにはそんな思いをさせたくない。少人数学級になれば、ていねいに教えてもらえるでしょう」と思いは切実です。
ことし二月には市役所に百人が集まって要望書を提出。市主催の「市政懇談会」にも多くの母親が参加し、「一度見に来てください、四十人学級がどんなに大変かわかります」と訴えました。
三月議会に向けて「少人数学級をつくる会」を結成。有権者四万五千人中、八千五百人の署名を三週間で集めました。ある中学校では生徒たちが自主的に署名を集め、市に提出しました。
市議会では請願が二回にわたって趣旨採択されました。しかし、市は少人数学級には背を向けたまま。かわりに算数などのときだけクラスを「できる子」「できない子」にわける「習熟度別学習」を導入しました。母親たちは「これではうちの子どもは『できない子』とレッテルがはられてしまう。習熟度別でなく、少人数学級を実現して」と訴えています。
市民会議の事務局を務める小学校教師の上原弘道さん(58)は「教育基本法を学ぶなかで、改悪を許さず、それを生かすことが大切だと確認してきました。これからは新しく運動に参加してきたお母さんたちとも一緒に基本法を学んで、もっと運動を広げていきたい」と語っています。