2003年6月15日(日)「しんぶん赤旗」
ニュースと話題の?Q&A
公共事業の単価つり上げ
これではムダがなくならない
2財団が調査独占
談合生む官製の仕組み
国などが発注した建設資材の単価調査をめぐり国土交通省所管の二つの財団、「経済調査会」と「建設物価調査会」が談合していたんだってね。公正取引委員会が独占禁止法違反で排除勧告をだしたけれど、単価調査というのはどんなことをするの。公共事業とどういう関係があるの。
国などが公共工事の入札の際に予定価格を出すだろう。その予定価格のもとになるのが工事費なんだ。この工事費を積算する際に必要なのが労務費や材料価格だ。この労務費や材料価格は国などが直接調べるのではなく、ほとんどが単価調査として外部に委託しているんだ。それを談合して独占的に受注していたのが今回排除勧告を受けた二つの財団なんだよ。
国土交通省など国の機関の仕事を二つの財団で分け合い、道路公団など公団関係はおもに経済調査会、都道府県はもっぱら建設物価調査会とすみ分けていたんだって。受注が決まっている財団の担当者は、入札前に発注官庁側と調査の予算などを打ち合わせしていたという話も聞く。「官製談合」という指摘があるくらいだ。
国土交通省の「建築工事積算基準」では、「材料価格」について「物価資料等の掲載価格…を参考に…定める」と書いている。ここでいう「物価資料等の掲載価格」とは二つの財団の出版物を指している。国土交通省自身が談合を生み出す“合法的”仕組みをつくっていたんだよ。しかも二つの財団の報告する単価が実際の取引価格より高いとそれで積算する公共事業まで高くなるからね。
差益のもとは税金
潤うメーカー、ゼネコン
なるほど。談合の話は分かったわ。でも公共工事にはどんな影響がでるのか詳しく教えてよ。
材料単価調査とは、材料メーカーや建設業者などに聞いて、実際の取引価格をつかむ作業なんだ。でも二つの財団の関係者は、実際には人手もないため材料メーカーに聞くだけになることが多いというよ。その材料メーカーは、利益を増やすため、できるだけ高い価格をいう。その価格を採用してもらうために材料メーカーは二つの財団にさまざまな働きかけをするんだってさ。
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| 橋脚に使われる免震装置「ゴム製支承」の単価が実際の1.5倍の高値で報告されていた=静岡県内で建設中の第二東名高速道路 |
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例えば二つの財団はそれぞれ材料単価を載せた月刊誌を発行しているけど、「しんぶん赤旗」が問題にするまで、月刊誌のほとんどのページに、材料メーカーの広告が載っていたんだ。広告を出しているところは、財団に「掲載希望価格」をいってくるんだって。
他方、ゼネコンは、材料単価が実際の購入価格より高ければ高いほど「差益」が大きくなる。ゼネコン関係者も「材料単価調査には正直に答えるところなんかない」といっていると聞いているよ。そして財団には、もうかった材料メーカーやゼネコンから広告料や購読料が入ってくる。みんなもうかる仕組みなんだよ。もとはみな税金なんだけどね。
一例だけど、高速道路の橋げたと橋脚の間の免震装置として使われている「ゴム製支承」の材料単価は実際の購入単価の一・五倍だったというよ。「ゴム製支承」は一個数百万円から数千万円と高額で、一工事に数十個単位で使うため、ゼネコンには一工事で数億円の「差益」が転がり込んでいるそうだ。高い材料単価のもと全国の公共工事で同じような状況が生まれている可能性があるよ。
検査院から天下り
国交相も「精査の必要」
材料メーカーやゼネコンがもうかるなんて許せないわ。発注官庁は何をしているの。税金の使い方は会計検査院がチェックしているんでしょう。
財団関係者がこんな話をしていたよ。ある役所の単価調査業務をうけた際、役所が材料メーカーを指定して、単価をその会社の言い値にしてほしいというんだ。指定してきた材料メーカーにはその役所のOBがいて、普及品と少し違うだけで、市価より相当高い単価にしろといってくるんだってさ。おかしいと思っても、その価格を採用しないと役所がイヤな顔をするから、採用せざるを得ないというよ。
会計検査院は税金の使い方をチェックするところだけど、実はOBが二つの財団の監事にそれぞれ天下りしているんだ。会計検査院だけでなく理事長にはともに旧建設省OBがなっているんだ。
二つの財団をめぐる問題では「赤旗」や国会での日本共産党の追及で大きな変化が生まれてきているよ。扇千景国土交通相も「これを契機に(資材単価調査や建設労働者の労務費調査のあり方について)どうあるべきかを精査する必要がある」といっているぐらいだからね。材料単価調査をめぐる問題は公共事業の深い闇の一つなんだ。これからもまだまだ解明することがたくさんあるよ。

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