日本共産党

2003年6月15日(日)「しんぶん赤旗」

所得控除の縮小、廃止

庶民大増税計画

政府税調が論議

17日、小泉首相に答申

“どうせ恨まれるから、この際消費税だけでなく所得税も” 石弘光会長


 首相の諮問機関、政府税調が「中期答申」案をまとめました。十七日に小泉首相に答申する予定です。国民いじめの消費税を二ケタに、というとんでもない内容です。所得税の各種控除の縮小や廃止でお年寄りやサラリーマンへの大増税まで説いています。大悪役の消費税の陰で進むこの大増税計画も放っておけません。(石井光次郎記者)


「鬼のようなこと」

 政府税調の「中期答申」というのは、ほぼ三年に一度、十年から十五年を見通した税制のあり方を示すものです。その審議の過程は、自民党政治が招いた財政危機に小泉首相の経済失政が加わって増税論議一辺倒でした。

 議事録をみると、政府税調の委員のやり取りにもそのことははっきりあらわれています。

 −−給付も控除も両方下げる。鬼のようなことを考えなければこの世の中成立しない。

 −−税調委員は恨まれるのですよ。

 −−それはしようがない。消費税でやったって恨まれるのだから。

 こんな具合に嘆くことしきりです。

 しかし、石弘光税調会長は記者会見で、嘆く委員を一喝してこう言い切っています。

 −−消費税が現行の5%で止まることは多分ない。次の問題は所得税の基幹税としての機能回復が待ったなしだ。

 “消費税でも所得税でも増税は恨まれるから、この際両方やってしまえ”ということです。

高齢者は“優遇”?

 それでは、個人所得課税の増税の手口はどんなものでしょうか。

 「答申」の主題は「少子高齢化と税制」です。小泉首相を先頭に、厚生労働省も財務省も年金財政の「危機」を大宣伝しています。

 年金制度は、本来、労働者については企業が、それ以外の国民については国が責任を持つべきものです。ところが基礎年金部分への国庫負担割合を三分の一から二分の一に増やす約束は早々に先送りし、企業の責任には一言も触れません。

 そこで出てきたのが「世代間の公平」論です。国や企業の責任は棚上げし、国民の間に対立をあおって「危機」をとりつくろうねらいです。

 現役世代と比べると高齢者は“優遇”されているというのが「公平」論。「年金をもらっている人たちの所得のほうが、若い人たちの所得より多かったりするから、決して弱者ではない」という発言まで飛び出しています。

 高齢者の収入から控除を認めている公的年金等控除(六十五歳以上の場合、最低でも百四十万円)や老年者控除(六十五歳以上年間収入一千万円以下なら五十万円)を縮小する増税論です。縮小の規模は未定ですが、二つの控除を全廃すれば、一兆一千億円規模の増税になります。

 もともと公的年金等控除は、現役世代に比べ収入の道が限られる高齢者への配慮としてできた制度です。それをいまになって不公平だと難癖をつけ、〇四年度税制「改正」にも、盛り込もうとしています。

 財務省は、返す刀でサラリーマンの控除にも切りつけています。いまの給与所得控除(夫婦子二人で百九十万円)は多すぎるといいだしました。理由としてもちだしたのは、実際の勤務に必要な経費が収入の一割程度なのに控除は三割弱で多すぎるという計算です。

 財務省はこの控除をやめてしまえば、数兆円規模の増収になるとはじいています。

 これも、他の所得との負担調整のための特別控除という、給与所得控除のもう一つの性格を無視した乱暴な議論です。

グラフ

「空洞化」の悪循環

 「どうしても税負担引き上げという方向で」(石会長)

 政府税調の議論の出発点です。バブル景気の絶頂期と比べれば所得税収は約半分に、法人税収は六割まで落ち込み、「空洞化」しています。この落ち込みは、自民党政治が生み出した不況と高額所得者や大企業減税が原因です。

 税収を回復するには家計を温め、景気を回復し、大企業や高額所得者優遇のゆがみをただすことが対策の第一歩です。

 自民党政治が「空洞化」させてきた部分はそのままにして、不況で苦しむお年寄りや国民に増税を強いるのでは、景気は悪化し、失業や収入源でますます所得税収が減る悪循環が深まるばかりです。


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