日本共産党

2003年5月20日(火)「しんぶん赤旗」

インドネシア政府軍 和平協議決裂うけ

アチェ独立派を攻撃


 【ハノイ19日北原俊文】インドネシアからの報道によると、同国のメガワティ大統領は十九日午前零時、分離・独立運動に揺れるスマトラ島のナングロアチェ州(アチェ特別州)に大統領令で戒厳令を発動し、自由アチェ運動(GAM)に対する大規模な軍事作戦を開始しました。

 同日午前、インドネシア国軍は、GAMに対してロケット弾で攻撃。すでに七人の死者が出たと報告されています。アチェ特別州には、約四万人のインドネシア国軍が展開しており、エンドリアルトノ国軍司令官は「GAMの兵力を六カ月以内にせん滅する」と宣言しました。

 戒厳令とアチェへの攻撃は、インドネシア政府とGAMの東京での停戦協議が決裂したことによるもの。戒厳令の期限は当面六カ月間で、状況次第で延長されます。

 停戦協議で政府側は、独立要求の放棄とインドネシアの領土保全、アチェ州の特別自治、GAMの武装解除を要求しました。ユドヨノ政治治安担当調整相は「GAMは今月中に武器の六割を国家警察に提出し、停戦協議後、一週間以内に暴力行為を停止しなければならない」と求めていました。

 メガワティ大統領は、GAM側がアチェ州におけるインドネシアの主権を承認しなかったことが同州を危険な状況に追い込んだと非難。これに対しGAM側は、政府側が受け入れられない条件を出したと非難しました。

 停戦協議を調停してきたスイスの非政府組織(NGO)「アンリ・デュナン人道対話センター」(HDC)のスポークスマンは、「停戦努力が成功しなかったのは残念だ」と述べました。

 政府側は、東京での協議の前にGAM側の要求で釈放したGAM代表五人の再逮捕を命じています。

 GAM側はゲリラ戦で応戦する構えで、ゼネストで米国資本のエクソンモービル社などを工場閉鎖に追い込むよう呼びかけました。


解説

自治政府選挙で食い違い

 インドネシア政府と自由アチェ運動(GAM)が昨年十二月に結んだ和平協定は、二〇〇四年に自治政府を樹立するための選挙の実施、共同非武装化委員会による武装解除の実施、共同安全委員会による治安回復・監視、攻撃型から防衛型への国軍再編などを盛り込みました。

 しかし自治政府選挙をめぐって政府側とGAMの間に認識の違いがありました。政府はあくまでも国内の地方選挙にとどめる考えでした。GAMは独立要求の棚上げには同意したものの、この選挙を独立への過程と位置づけました。この違いは、協定後に尾を引き、両者の軍事衝突という形となって現れました。

 今年四月には国際的圧力を背景に紛争解決のための合同協議会の開催が合意されましたが、政府はGAMの提起する日程問題を理由に参加を拒否、軍事作戦を展開するために軍や警察を増派しました。

 その後、米国や日本の要請により、十七、十八日の東京での合同協議会にこぎつけましたが、決裂によって軍事的対立が再燃し、和平への道のりは困難になりました。(松本眞志記者)


 アチェ紛争 アチェはオランダの侵略に最後まで抵抗したアチェ王国の流れをくむインドネシア北西の地域で、インドネシアではナングロアチェ州となっています。人口は四百万人前後。インドネシア独立以来、石油や天然ガスなど天然資源の利益が地元に還元されなかったことを背景に政府に対する住民の不満が広まりました。この中で武力による独立を掲げる「自由アチェ運動(GAM)」が生まれ武力闘争を始めました。インドネシア国軍との戦闘や国軍による住民への弾圧ですでに一万人以上の犠牲者を出しています。


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