日本共産党

2003年5月10日(土)「しんぶん赤旗」

千代大海の横綱昇進問題

公平で明確な制度を

鼓動


 大相撲夏場所(11日初日)の最大の焦点が、大関・千代大海の綱とりです。春場所に続いて連覇すれば横綱を射止めるとみられてきました。しかしすんなりとは行かない雰囲気なのです。

 5日の公開けいこ総見のあと北の湖理事長(元横綱)は「全勝するぐらいの気持ちでやらないときびしい」と、千代大海の横綱昇進に高いハードルを示しました。同理事長は春場所優勝後も、12勝の数字にたいして「(次は)高いレベルで」と、盛んに星勘定を強調してきました。

 横綱を目指す千代大海の相撲内容や成績には確かに物足りなさが残ります。昨年名古屋場所で3年半ぶり2度目の優勝を遂げたものの次の秋場所は10勝5敗で綱とりはならず。九州場所は6勝3敗6休、今年初場所(1月)を全休しました。故障が多く、かど番はすでに5回。「北の湖発言」は、強い、安定した横綱を求めるがゆえのものでしょう。

 しかし、横綱の昇進基準を力士によって変えるような発言はいかがなものでしょうか。

 昇進のめどとされているのは、1958年につくられた横綱審議委員会(横審)の内規です。それによると、大関で2場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績を上げたもの、とされています。これにより、86年に双羽黒は一度の優勝もなしで60人目の横綱に、翌87年には大乃国が準優勝2回で62人目の横綱に推挙された例もあります。

 双羽黒がわずか1年で失そう・廃業してしまったことから、昇進基準の解釈がきびしくなりました。小錦や曙といった外国人にはとりわけ高いハードルを課す動きもありました。それでも90年以降、連続優勝を遂げた大関は、すべて横綱に昇進しています。(表参照)

 初場所を全休した千代大海は、印象としてはよくないものの、連続優勝すればこの条件を十分に満たすことになります。ことさら「高いレベル」を強調するのは、この内規に照らしてもおかしいことです。

 同じような議論は、過去にも繰り返されてきました。92年の九州場所で優勝した曙について当時の横審・上田英雄委員長は「内規は目安で、絶対ではない」「曙は風格や実績が十分でない感じ」などと発言。また協会幹部は連覇をかけた初場所中に「14勝以上のハイレベルでなければだめ」と繰り返しました。曙は結局、地力で初の外国人横綱となりましたが、力士によって基準を変える横審委員、協会幹部の発言は世間のひんしゅくを買いました。

 同じことが繰り返される最大の原因は、相撲協会が横綱の昇進を決める具体的なルールを持たないからです。唯一の根拠が横審の内規ですが、これすら責任者が「目安」というもの。優勝なしの大関が横綱に推挙されたのも「準ずる成績」の勝手な解釈の結果でした。

 相撲協会自身が、大相撲界の最高位である横綱昇進を決める明確な基準を持たないというのは、どうみても異常です。大相撲がスポーツである以上、個々の力士や国籍に左右されず、誰にも公平な制度の確立、整備が急がれます。(金子義夫記者)


主な横綱の昇進例(内規制定後)

力士名直前場所2場所前新横綱場所
若乃花(初代)13―2(優)12―3△1958・3
柏戸12―3□11―41961・11
大鵬12―3(優)13―2(優)1961・11
玉の海13―2□10―51970・3
北の富士13―2(優)13―2(優)1970・3
北の湖13―2□13―2(優)1974・9
千代の富士14―1(優)13―2△1981・9
双羽黒14―1□12―3△1986・9
大乃国13―2△12―3△1987・11
旭富士14―1(優)14―1(優)1990・9
13―2(優)14―1(優)1993・3
貴乃花15―0(優)15―0(優)1995・1
朝青龍14―1(優)14―1(優)2003・3

(優)は優勝、□は優勝同点、△は準優勝


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