日本共産党

2003年5月4日(日)「しんぶん赤旗」

「日本の安全保障を問う」

NHK憲法記念日特集

筆坂政策委員長が語る


 日本共産党の筆坂秀世政策委員長は三日、NHKの憲法記念日特集番組「日本の安全保障を問う」に出演し、各党の代表と討論しました。筆坂氏の発言(大要)を紹介します。



 北朝鮮核保有発言

「軍事的抑止力」論の誤り正す外交交渉を

 冒頭のテーマは、北朝鮮の核保有発言への対応。筆坂氏は、つぎのようにのべました。

 筆坂 これ(北朝鮮の核保有発言)は明らかに核を脅しのカードに使っているやり方で、一番の誤りだと思います。最近の北朝鮮の発言をみていると、「物理的抑止力」論や「軍事的抑止力」論をいっています。この誤りを本当にただすことが大事だと思うのです。

 北朝鮮にとって一番の安全保障上の問題は、北東アジアでまともな国際関係をもっていないということです。日本との関係でも、韓国との関係でも(そうです)。少なくとも、その一番の大きな原因は、北朝鮮の側にもあります。実際、たとえば、ラングーンでのテロ事件や、拉致事件、あるいは核合意をつぎつぎ破るとか、一番危険な道を北朝鮮自身が歩んでいる。

 だから、こういう「核カード」をもって、もてあそぶやり方が、実は北朝鮮にとっても有害だし、北東アジア全体の平和と安定にとっても有害だということを、外交を通じ、多国間協議や二国間で、北朝鮮側に教えていく(必要がある)。そして、まともな国際関係をもった国として、国際社会に復帰できるようにしなければ、北朝鮮にとって安全保障上の(問題の)本当の解決はできないと思います。


 ミサイル防衛構想

3つの危険な中身

 米国がすすめるミサイル防衛(MD)に話題が移り、自民党の中山太郎外交調査会長は「北(朝鮮)がどう出てくるかをみながら、専守防衛の考え方のなかでやるべきことはやらなければならない」と発言しました。筆坂氏はつぎのようにのべました。

 筆坂 私は(MDは)大変危険だと思うのです。

 (一つ目に)よくMDについて“飛んでくるミサイルを撃ち落とすのだから、純粋に防衛的なものだ”といわれますが、そうではない。アメリカは、相手国のミサイルを無力化し、報復の心配なしに先制攻撃ができるという、全体の戦略のなかで(MDを)位置付けているわけで、まさに攻撃システムの一環なのです。

 二つ目に、技術的に本当に可能かといえば、たとえば(米紙の)ワシントン・ポストでも、二〇〇四年配備とブッシュ政権はいっているが、これは“完成はしていないけれども、政治的理由(での配備)だ”(と書いています)。ブッシュ政権には軍需産業の代表がずいぶん入っており、軍需産業とのかかわりで、とにもかくにも未完成でも配備してしまえという面があるのです。

 三つ目が、仮に完成し、日本に配備されれば、たとえば、ある国がミサイルを撃ったとしても、どこに飛ぶかわからない。それを撃ち落とすわけで、本当はアメリカにいく予定だったということになれば、当然、集団的自衛権の行使の問題が出てきます。

 ですから私は、三つの危険という点からも、こういう構想に手をつけることには反対です。


 日米関係

従属から対等平等へ

 「国際協調」と「日米同盟」との関係がテーマになり、筆坂氏はつぎのようにのべました。

 筆坂 こんどのイラク戦争は、国連決議もなく、自衛権の行使でもないという意味で、明らかに国連憲章違反の先制攻撃です。これを(日本は)まっ先に支持することになったわけです。

 よく最近、「国連無力」論ということがいわれますが、私は違うと思います。ベトナム戦争のときは、国連安保理でただの一つの決議も、措置もとれなかった。

 しかし今回は違います。(国連安保理の)一四四一決議は、査察で解決しようと(いうもので)、イラク問題での国連の最後の決議です。こういう決議ができるようになったのは、国連安保理がかつてに比べ、はるかに大きな機能を発揮し始めている(ことを示している)。それは、地球を覆った反戦平和の世論とも結びついていると思います。

 そのときにアメリカが暴走してしまった。これを同盟国である日本が止めることができなかった。ここに、私は対米従属、追随といわれるゆえんがあると思うのです。

 私はよくいうのですが、戦前はアメリカと敵対(関係)だった、いまは従属だと。そうではなく、文字通り、対等平等の友好関係をつくっていくことを二十一世紀に展望する必要があると思います。


 有事法制

米国の先制攻撃支援法

 有事法制について司会者から「政府・与党側は、イラク戦争や北朝鮮の核開発で必要性は大いに高まったといっているが」と問われ、筆坂氏はつぎのようにのべました。

 筆坂 私はまったく逆だと思うのです。二点、簡単に言いたいと思います。

 こんどのイラク戦争は、アメリカが国連憲章を踏みにじって先制攻撃だってやる国なんだということを事実で証明したわけです。

 わが党の(木島日出夫)議員がこの前、(衆院有事法制特別委員会で)質問しましたら、石破防衛庁長官は“アメリカがたとえ先制攻撃にでていったとしても、この有事法制を動かして、日本が支援することはあり得る”という答弁をしているのです。ですから、まさに「先制攻撃支援法制」になる危険性がある。

 もう一つは、海外での公然たる武力行使に道を開くことになる。

 すでに(自衛隊を海外に派兵する)周辺事態法やテロ特措法ができています。テロ特措法で、イージス艦がインド洋に行っているわけです。

 この自衛隊の艦船は、海外に展開しても(有事法制が適用される)「わが国」になるわけです。(この自衛隊の艦船は)実際には戦闘地域に行くわけです。周辺事態法(やテロ特措法)では、戦闘地域には行きませんといっていますけれども、こんなものは通用しない。相手からみれば、(米軍と)一緒にたたかっている日本の軍隊ですから。

 そこで、「わが国」とされる艦船が攻撃されるおそれがある、あるいは攻撃されるということになれば、武力行使に公然と踏み出していくことになりかねない。(有事法制は)周辺事態法ともリンクしている(と政府も説明している)わけですから、そういう危険をもっていると思います。


 憲法

現実を合わせる努力を

 最後に憲法の現状についてがテーマになり、公明党の太田昭宏幹事長代行は、環境権やプライバシー権などの「加憲」を主張。筆坂氏はつぎのようにのべました。

 筆坂 いまの憲法は、政治的社会的権利を三十条にわたって書いてある。一三条の幸福追求権で環境権だとかプライバシー権は認めるというのは、常識の解釈です。

 とくに九条は、この間の戦争の違法化の歴史のなかで世界で一番先頭を走っている条文だと思うのです。憲法が古くなったといわれるのですが、年数はたっているけれども、中身はけっして古くない。憲法に現実が遅れている。憲法に現実をあわせていく。その努力が政治に求められていると思います。


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