日本共産党

2003年5月1日(木)「しんぶん赤旗」

ブッシュ無法戦争 <25>

国防総省と戦争報道

利用、一方で破壊・抹殺


 米軍のイラク戦争でみておくべき問題の一つが、戦争報道のありかたでした。

“埋めこみ”取材

 米国防総省(ペンタゴン)は、「報道利用も戦争のうち」という構えで臨みました。そのなかで、今までにない規模での新たな従軍取材が認められました。「エンベッド」(埋めこみ)取材や、記者を戦闘部隊に完全密着同行させてのリアルタイム報道です。

 ごう音をたてて進む戦車、砂漠の物陰に身を潜めて自動小銃を構える兵士、空母から発進する攻撃機、爆撃から戻ってきた空軍兵士たち…。記者を軍に“埋め込んで”の戦争実況放送が世界中、とくにアメリカの茶の間に送り込まれました。

 湾岸戦争のときは、米軍の攻撃開始後も米国のCNNテレビチームがバグダッドにとどまり、米国と世界にイラク内部の映像を放映し続け、注目を集めました。湾岸戦争は「CNN戦争」といわれたほどです。

 ところが今回、米国内で名をあげたのはCNNではなく、徹底した従軍取材報道の映像を送りつづけたFOX(フォックス)テレビでした。

 全体的に米国のメディアが「愛国報道」の色彩を強めたなかでも、とりわけ「愛国」を売りものにしたのがFOXです。特集番組のタイトルも、他社が「イラク戦争」とした中で、FOXはそのものずばり「イラクの自由作戦」。キャスターは、星条旗がはためくかたわらで「わがテレビ局はイラク戦争でのアメリカの勝利を望む」と繰り返しました。

 この報道姿勢は、実は米政府当局が求めたものです。米国防総省は、安保理でイラク問題での真剣な論議が交わされていた一月中旬、米国内外の報道各社代表を集めて、戦争報道についての説明をしていました。それが、「埋めこみ」式従軍取材体制でした。

米軍作戦報道

 その結果は、戦争報道というより、米軍攻撃作戦報道です。画面に映るのは、勇敢に前進する米軍部隊と兵士の姿がほとんど。そこには、爆撃に苦しむイラク市民はありません。イラク市民が登場したのは、米軍のクレーンがフセイン像を倒すのを喜ぶ数十人の人々、一部の市民が米兵に花束を贈る光景などだけでした。

 ほとんどが、戦争賛美、米軍礼賛の映像と活字という事実を物語るエピソードがあります。米女性兵士ジェシカ・リンチ上等兵(19)の「救出作戦」にまつわる報道です。四月一日、作戦のなかで負傷し、「捕虜」になったリンチ上等兵を特殊部隊が病院から「救出」しました。米中央軍司令部は記者会見で、英雄物語でも紹介するようにこの救出作戦を説明。米軍礼賛報道の一こまに仕立て上げられました。

 ところが、二週間後のワシントンポスト紙は暴露しました。「あれは大げさなショーだった」

 同紙によると、米軍部隊が到着したときにはイラク人はすでにおらず、軍事作戦も必要なかった、上等兵の負傷は被弾によるものではなく「事故」による骨折といいます。その後、負傷した上等兵をイラク側は手厚く治療し、彼女を米側に返す努力までしていたことも明らかになっています。

報道機関標的に

 ペンタゴンは、こうした報道操作の一方で、露骨な「報道破壊」「報道抹殺」にのりだしたのでした。標的にされたのが、カタールの衛星テレビ・アルジャジーラ、パレスチナ・ホテルを拠点としたロイター通信などの国際報道機関です。

 いずれも、米軍のイラクにたいする猛爆撃開始後もイラクにとどまり、市民の被害の状況をバグダッドの現場から報じつづけていた国際メディアでした。米軍はこれらの報道機関を明らかに狙い撃ちし、十人近くのジャーナリストを死傷させたのです。

 FOXテレビを牛耳るのはメディア王といわれるマードック氏です。その裏には、戦争推進論の新保守主義派の影があります。米国では、戦争支持が七割をこえる裏には、戦争で何千人もの無辜(むこ)の市民が死傷している事実すら知らせない、こうしたアメリカのメディアの現実があるのは事実でしょう。

 イラク戦争は、真実を知らせる報道の大切さを浮き彫りにしましたが、それは日本のメディアにとっても大きな問題であるはずです。(ワシントンで浜谷浩司、カイロで小玉純一、アンマンで岡崎衆史)


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