日本共産党

2003年4月16日(水)「しんぶん赤旗」

危ない! 有事法制(1)

「ブッシュの戦争」に日本を総動員


 有事法案をめぐる動きが緊迫しています。政府・与党が四月中にも衆院を通過させようと狙っているからです。有事法案で、アジアと日本の平和、私たち国民の暮らしはどうなるのか、緊急連載します。

先制攻撃公言する米国の戦争に参戦

 イラク戦争では、多くの残虐兵器が使われ、おびただしい罪なき人々の命が犠牲になっています。ブッシュ米大統領は、この戦争を「敵に攻撃されて対抗措置をとるのは自衛ではない。それは自殺行為だ」と公言して始めました。

 各国が武力行使できるのは、他国から攻撃を受けたときの自衛反撃と国連安保理の決議があった場合だけです。イラク戦争は、この国連憲章が定める平和のルールを乱暴に破る先制攻撃でした。

 この戦争で、有事法案の危険はいっそう明らかになりました。

 有事法案の「有事」とは、戦時のことです。狙いは、米国の戦争に日本が本格的に参戦する「備え」をつくることです。イラク戦争型の先制攻撃に加担するテコになりかねません。なぜなら、米国は、この無法な先制攻撃の戦争を国家の基本戦略にし、アジアにも矛先を向けているからです。

 昨年九月の米「国家安全保障戦略」は、テロリストなどの敵対行動を阻止するためには、先制攻撃を辞さないと宣言。同年十二月の「大量破壊兵器と戦うための国家戦略」の極秘付属文書では、その焦点に北朝鮮などの名前が挙がっているとされます。

 米国が先制攻撃戦略を声高に叫ぶもとで、政府・与党内では「自衛隊は敵基地を攻撃できる能力を持つべきだ」という声まで上がっています。

 米国の戦争に自衛隊が参戦し、国民を強制的に総動員する有事法案の危険は、いよいよ高まっています。

攻撃の「おそれ」だけで発動する

 イラク戦争で、米国は「イラクは大量破壊兵器を使うおそれがある」というだけで先制攻撃を仕掛けました。

 有事法案も、実際に攻撃が発生していなくても、その「おそれ」だけで動きだす仕組みです。

 有事法案は「武力攻撃事態」への対処を定めたものですが、攻撃が「予測される事態」や、その「おそれのある場合」だと政府が判断しさえすれば、自衛隊の部隊が出動し、陣地を構築することなどが可能になります。自治体や国民は強制動員されます。

 しかも、この「武力攻撃事態」は、米国の無法な先制攻撃の戦争によって引き起こされる危険があります。

 いま海外には、米軍支援などで出かけている自衛隊の部隊がいます。米国のアジアでの戦争を自衛隊が支援する法律もあります(周辺事態法)。

 これらの部隊が攻撃を受ければ、「わが国への攻撃」とみなし、有事法案が発動するのです。海外での武力行使に道を開く仕掛けが組み込まれている―。ここに有事法案の最大の危険があります。

 与党は、「予測」や「おそれ」というのは「分かりにくい」と評判がさんざんだったので、「修正」案を提出。攻撃が発生した事態とその危険が切迫した場合を「武力攻撃事態」、攻撃が予測されるときは「武力攻撃予測事態」と、定義を整理し直しました。

 しかし、「修正」案は、有事法案の欠陥ぶりを証明しただけ。その危険はなんら変わりません。

「ノー・ウオー」の声が規制の対象に

 イラク戦争で高まった「ノー・ウオー(戦争やめろ)」の声…。有事法制ができれば、こんな戦争反対を訴えるパレードや集会、報道も規制されかねません。

 有事法制のもとでは、集会や報道の自由は「あくまで公共の福祉に反しない限り」(福田康夫官房長官、昨年五月九日)になるからです。「公共の福祉」とは、「武力攻撃事態への対処」、つまり戦争遂行のことです。

 規制されるのは、それだけではありません。

 有事法案は、憲法が保障する国民の自由と権利は「制限が加えられる」とはっきり定めています。制限の範囲は「必要最小限」としているだけ。今後つくる法律で定めるとしています。

 法律さえつくれば、どんな権利もいくらでも制限できる仕組みです。

 これでは、国民の自由と権利を「法律の範囲内」でしか認めず、暗黒政治と侵略戦争に日本を導いた、戦前の「大日本帝国憲法」となんら変わりません。

 政府は「国家的な必要最小限の秘匿は考えなければならない。罰則も総合的に考えなければならない」(福田長官、昨年五月八日)といって、「知る権利」を罰則付きで制限することも考えています。

 有事法案では、土地や家屋、物資の取り上げも定められており、財産権も侵害されます。(つづく)


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