2003年4月14日(月)「しんぶん赤旗」
安全が確認できるおいしい国産農産物を学校給食に使おうという自治体が増えています。国産麦のパン、大豆も積極的に導入する例も出ています。利用を増やすかぎは食材を直接利用する市町村の給食態勢です。日本共産党の議員は父母の願いにこたえ導入に奮闘しています。
東京都立川市では、国産小麦100%のパンを小学校で供給しています。「管理の目が届き、安心できる食材」として、一九九八年から始まりました。保管中の虫を殺すため収穫後に混ぜるポストハーベスト農薬残留に配慮したといいます。
同市は、「学校給食用材料調達事務要綱」を定め、遺伝子組み換え作物やダイオキシン汚染など安全を確認できない食材料は選定除外、使用自粛することにしています。地場産物は優先するとしています。
日本共産党の戸井田春子市議は七年前から議会でとりあげてきました。「安心できる国産パンができないか、野菜は特産のウドなど地場産で学校給食にと提案してきました」と振り返ります。
国産小麦のパンは残留農薬の不安はありません。一方で、課題は焼いたあと輸入麦に比べ堅くなりがちで、子どもが食べ残すことです。
同市は、食べる日の朝に製パン業者が焼いて学校に届けるシステムをつくり解決しました。食パンは前日焼きですが、給食共同調理場でトーストに焼くのは当日です。調理場の工藤良子係長は「やわらかくおいしいと好評です。子どもはパンを残さない」といいます。
価格は、国産小麦に切り替えてもパン一個一円程度高くなるだけ。「栄養士で話し合って、ほかの食材で一円分はカバーできる」といいます。
国内産小麦の学校給食パンは、新たな広がりを見せています。農水省がまとめた取り組み事例では、二十四道府県になっています。10%混入パンから100%までさまざまですが、「平成十四年度から導入する県が増えた」(食糧庁加工食品課)といいます。
このうち佐賀市は、比較的早く二〇〇一年度から国産小麦100%のパン導入です。日本共産党の山下明子市議が「外国の小麦粉を使っていると子どもの健康に問題だ。国産パンの検討を」と九一年から三度、市議会でとりあげたといいます。市民団体の日本子孫基金が佐賀市の学校給食パンにポストハーベスト農薬残留を認めたあとです。
現在はパン向き小麦の北海道産「ホクシン」を使用。今後は品種開発された西南暖地用のパン向き小麦「ニシノカオリ」を利用し地域農業振興に役立てる計画です。
茨城県総和町の初見はつえ日本共産党町議は昨年六月、同町の学校給食改善のためパンの残留農薬分析をしました。
農民連食品分析センターに依頼した結果、四種類のうち三種類から発ガン毒性がある「クロルピリホスメチル」と環境ホルモンが疑われている「マラチオン」が検出されました。
初見町議は、ほかの分析データと比較した表をつくり「子どもたちの命と健康を守るため地元の農産物を使った給食を」と町民に知らせました。(表)
議会では「輸入食品があふれるなか、子どもたちの食べる食材に何が含まれているか検査を」と要求。県産小麦を学校給食で使えるようパンの試作がおこなわれています。
現在パン用とされている国内産小麦は、北海道の気候にあう「ハルユタカ」「ホクシン」、埼玉県産の「農林61号」などがあります。しかし最近の国産小麦ブームのなかで生産量が需要に比べ少なくなっています。
「都全体で国内麦のパンを供給しようとすると一カ月もつかもたないかの量しかない。ハルユタカはすべて行き先が決まっている状態」(東京都学校給食会)と説明します。農水省は、九九年度から麦新品種緊急プロジェクトとして、タンパク質含有量が多くふっくらと焼きあがるパン用も開発しています。
生産者の側からみると簡単には増産できない理由があります。北海道の網走地方で国産小麦のパンを供給している小清水産直センター(農民連加盟)の坂本清一事務局長は「小麦は雨に弱く成熟期に雨が降ると穂発芽して売り物にならなくなる。満足なのは三年に一度くらい」と話します。
新品種「はるよこい」が穂発芽しづらい点を期待しますが、「農家の手取りが価格保障がなく六十キロ八千円程度なので生産意欲がでるか心配だ」と話します。
価格保障では、二〇〇〇年に食管制度を廃止。その後、民間流通制度で麦作経営安定資金制度となりましたが、自民・公明党の農業切り捨て策で削減されています。水田転作による奨励金も減らす「米政策改革大綱」が示されています。