日本共産党

2003年4月13日(日)「しんぶん赤旗」

動き出す産業再生機構

大銀行救済に10兆円の税金


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 国会での産業再生機構法の成立(4月1日)を受け、金融機関の不良債権を買い取り、リストラを進める再生機構が16日に発足します。再生機構は5月8日にも不良債権の買い取りを開始する予定。政府主導による大企業「再生」支援が本格的に動き出します。

国民負担が前提

 産業再生機構は、小泉内閣が銀行が抱える「不良債権」の早期解消を目指すために打ち出したものです。過剰債務を抱えて経営困難に陥った大企業の債権を再生機構が銀行から買い取り、借金棒引きやリストラを進めることで企業の経営再建を支援します。

 再生機構は五年間、「再生」業務をおこなった後、解散します。国会審議を通じ、解散段階で企業の経営再建がうまくいかず売却できない、もしくは売却価格が買い取り価格を下回ったなど、損失が発生していれば国民の税金で穴埋めされることが明確になりました。

 政府は損失の穴埋め資金として十兆円の政府保証枠を準備してます。谷垣禎一産業再生担当相は、「機構が損失を負担できないとすると、リスクの高い案件は扱えなくなって機構が機能しない」(三月十二日の衆院経済産業委)と明言、国民負担を前提にしていることを認めました。

 一方、経営不振に一番の責任をおっている銀行や企業経営者の責任は、どうなるのでしょうか。再生機構への金融界の拠出金はわずか五百億円。国民負担となる十兆円の政府保証と比べると、二百分の一にすぎません。

大企業のみ救済

 企業の経営責任の追及についても、高木新二郎・産業再生委員長は、「機構が扱うのは何百億円、何千億円という金融支援。元社長を追及して『一億円返せ』と言っている時間はない」「窮鳥が懐に入れば助ける」と述べ、責任“免罪”を表明しています。

 再生機構が支援対象にするのは事実上、数十社の特定大企業です。再生機構が買い取り対象とする債権は、複数の銀行と取引がある大型案件とするため、一部の大企業に絞られてくることは明らかです。

 債権放棄などをめぐっては、銀行同士の責任の押し付け合いがあり、これを調整して、再生機構が“肩がわり”して経営再建を進めてやろうというのが目的となります。

 国会審議で谷垣担当相は「(機構は)多数の利害関係者の調整の役割が期待されている」(三月十二日の経済産業委)と述べました。しかし、企業の経営難に責任がない国民に負担をかぶせて、銀行、特定大企業の救済をおこなう道理のなさは歴然としています。

 与党内からも、「十兆円の金を二、三十社が使う。これでは、大企業ばかりを優先してそれを支える中小企業には余りにも関心が向いていないのではないか」(同、自民党の阪上善秀衆院議員)と異論がでました。

リストラに拍車

 さらに、政府は産業再生機構法と合わせ、今年三月末までの時限立法であった産業再生法を期限延長(二〇〇八年三月末まで)する改悪を強行しました。同法の改悪は、再生機構が進める大企業のリストラを減税で後押ししてやることを狙ったものです。

 内閣府が作成した「産業再生機構Q&A」では再生機構の支援基準について、「産業再生法の認定基準と概ね共通の基準を採用しますので、債務者は産業再生法の認定を受けることにより、減税等の支援も受けることができます」と紹介しています。

 しかし、企業リストラを政府が減税で支援することは、雇用にはかりしれない悪影響を与えてきました。日本共産党国会議員団は、独自調査でこの問題を追及。それによると、これまで産業再生法で認定された大企業の人減らしは七万五千人にも及びます。減税額上位五社は巨大銀行の名前がズラリと並んでいます。(別表)

 企業「再生」の名によるリストラは、個別企業にとっては一時的な収益「改善」になっても経済全体では雇用環境を悪化させ、不況をさらに促進させる悪循環につながるものです。

 産業「再生」をいうのなら、大量リストラの加速ではなく、日本経済の主役である中小企業の経営困難を打開し、国内総生産の六割を占める個人消費を温める政策に転換することこそ求められます。

(佐藤高志記者)

産業再生法認定企業の減税 上位5社の人員削減数と減税額
企業名人員削減数減税額
みずほフィナンシャルグループ ▲3,000人25.6億円
三井住友フィナンシャルグループ ▲5,400人80億円
三菱東京フィナンシャルグループ ▲2,130人63億円
UFJグループ ▲3,800人55億円
りそなグループ ▲4,500人42億円


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