2003年3月26日(水)「しんぶん赤旗」
高水準で推移する企業倒産の増加にこのところ抑制傾向がみられます。しかし、景況が好転しているのではなく、むしろ“倒産予備軍”が増え、倒産が一気に増加する可能性があるといわれています。追ってみました。(大小島美和子記者)
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全国の企業倒産を観測し、発表している民間の信用調査会社の帝国データバンクの数字をみると、昨年(二〇〇二年)の年間倒産件数(負債額一千万円以上)は一万九千四百五十八件です。一九八四年に次ぐ調査開始以来二番目の高水準でした。しかし、月別倒産件数は、年後半あたりから、前年と比べ減少傾向です。今年に入っても一月は同11・4%減、二月は7・4%減と減少が続いています。
この間、倒産件数の99%を占める中小企業の景気感は好転しているわけではありません。帝国データバンクは、現象の背景に「信用収縮」があると指摘しています。
“本当に支払ってもらえるのだろうか”という不信から、手形などによる信用取引が縮小しているというのです。
確かに、手形の取引量を映す手形交換高は急速に縮小しています。〇二年の年間交換高は前年比19・6%減少。四半期ごとにみると、四―六月期に前年同期比21・5%減、など20%以上の減少が毎期続いています。
帝国データバンクは、手形取引の減少から「銀行取引停止処分」(手形の不渡りを六カ月以内に二度出して至る倒産)が減少していると指摘。この傾向は今年になってさらに顕著で、一月は前年同月比24・8%の減、二月は同23・2%の減少です。
実際に中小業者は手形取引を減らし、現金取引に切り替えています。
東京都の金属加工業の町・大田区で、樹脂材部品の切削加工業を営む岩田光司さんは、四年くらい前、不渡り手形被害にあったこともあり、手形取引を縮小。かつて七割だった手形取引は今や三割から四割です。
金属加工業・三桜製作所の大友冠さんは、取引先三十社のうち、一軒を除く全社に手形取引から現金取引に変えるようお願いして回り、今では九割以上が現金取引です。「手形」支払いの仕事は受注額が大きいものの「(現金取引は)自己防衛のため。不渡り手形をもらうよりまし」と大友さんはいいます。それほどまでに「信用収縮」は広がっています。
しかし、手形取引の縮小・現金取引の拡大は「うれしいかというとそうではない」と岩田さんはいいます。
つまり、額面の大きい仕事は手形で支払われており、手形取引の縮小は、通常、「取引額そのものの減少をも意味する」というのです。大口の仕事が減り、売り上げ減のなか、中小企業は過去の利益を放出しながらじっと耐えています。
帝国データバンク情報部情報取材課の鈴木好文さんはいいます。
「いまは、景気悪化から企業が守りに入り取引を縮小し、取引高・量を減らすなかで若干倒産件数が減少しているという状況」
そして、今後の動きをこう指摘します。
「倒産は、企業の資金繰りがひっ迫しておこる現象。中小企業は、長びく不況、十年にもわたる企業資産の劣化が続くという、かつてなく厳しい経営環境のもとで、コスト削減や人員削減をしながらなんとか経営を保とうとする“消耗戦”に入っている。財務内容は悪化しており、これが、たとえばかつてのような金融破たんなど、なんらかのきっかけで倒産の激増として一気に表面化することは大いにありうる」