2003年3月23日(日)「しんぶん赤旗」
地方自治体の大きな流れになってきた「少人数学級」。全国各地で積極的に取り組まれた住民運動と、前回のいっせい地方選挙で躍進した日本共産党の地方議員の活躍が推進力となりました。
愛知県豊田市。三月議会で、日本共産党の大村よしのり市議の質問に答えて、担当部長は「平成十六(二〇〇四)年度から、まず小学一年生で少人数学級を導入する」と表明しました。
大村市議は四年前の市議選で、八年ぶりに党の議席を回復して以来一貫して少人数学級を要求してきました。昨年秋、住民がつくった「保育と教育を考える会」といっしょに、議会への請願運動にも取り組みました。
請願は三月議会に提出されましたが、自民党系会派や公明党など市政与党は「市が実施を表明しているから」と反対して不採択にしました。
しかし、不採択の前に、与党幹部は大村市議にこう話しかけました。
「請願は採択できないが、あなたたちの運動の成果だということは認めている」
大村市議は「住民のみなさんとともに勝ち取った成果です。『住民こそ主人公』を貫く党の議席がなかったら実現できなかった」といいます。
徳島県では四年前に党県議団が一人から二人に増え、昨年四月には日本共産党などが与党の民主県政が誕生、新年度から少人数学級がスタートすることになりました。
昨年九月、市民団体「三十人学級・一万人署名の会」がわずか一カ月で約二万七千人分の署名を集めて請願。その直後の県議会で、大田正知事は、日本共産党の古田美知代県議の質問に答えて少人数学級の検討を約束しました。
同会代表の榎本浩一さん(74)はいいます。
「県政の流れの変化を実感しました。しかし、県の少人数学級はやっと第一歩を踏み出したばかりです。四月のいっせい地方選挙で、民主的改革を前進させる県議や市町村議員をうんと増やさないといけませんね」
| 少人数学級 | |
|---|---|
| 29道県2政令市の2003年度計画 | |
| (○印は03年度新規実施の自治体) | |
| 北海道 | モデル校の小1・2で35人以下。一部の高校で30人で編成する特例措置 |
| 青 森 | 小1・2、中1で33人以下。一部の高校で35人以下 |
| 秋 田 | 小1・2、中1で30人程度 |
| 山 形 | 小1〜5で33人以下 |
| 福 島 | 小1・2、中1で30人以下 |
| 茨 城 | 一部の小1・2で35人以下 |
| 栃 木 | ○中1で35人以下 |
| 群 馬 | ○一部の小1で30人以下 |
| 埼 玉 | 一部の小1・2、中1で38人以下。一部の高1・2で30人程度 |
| 千 葉 | 一部の小1・2で38人以下 |
| 新 潟 | 小1・2で32人以下 |
| 福 井 | 一部の高校で35人以下 |
| 長 野 | 小1〜3で30人規模 |
| 三 重 | ○小1で30人以下 |
| 滋 賀 | ○小1、中1で35人以下 |
| 和歌山 | ○一部の小1で35人程度 |
| 鳥 取 | 小1・2で30人以下、中1でも試行 |
| 島 根 | ○小1で30人以下。04年度小2も |
| 岡 山 | 一部の中1で35人以下 |
| 広 島 | 小1・2で35人以下 |
| 山 口 | 中1で35人以下 |
| 徳 島 | ○小1で35人以下。04年度小2も |
| 香 川 | 高校専門学科で35人以下 |
| 愛 媛 | 一部の小1・2、中1で35人程度 |
| 高 知 | 一部の高校専門学科で35人以下 |
| 熊 本 | ○小1で35人以下 |
| 宮 崎 | 小1で30人以下 |
| 鹿児島 | 小1で35人以下 |
| 沖 縄 | モデル校の小1で35人以下 |
| 名古屋 | 小1で30人以下 |
| 京都市 | ○小1で35人以下。04年度小2も |
二十九道県に広がった「少人数学級」は、市町村でも新年度から独自に踏み切る自治体が増えています。
本紙調査でも、愛知県で一宮市、尾西市、安城市、木曽川町の三市一町、大阪府で池田市と岸和田市の二市のほか、滋賀県水口町、広島県三次市、熊本市などで新年度実施を予定しています。
一方、すでに実施している多くの道県では、改善の努力がみられます。
山形県は、小学五年生まで拡大するとともに、「指導方法が『四十人学級』のときと同じでは教育効果は上がらない」(県教委)として、授業や生活指導の改善に向けた研究をすすめます。
日本共産党と無党派の人々が共同して田中康夫知事の再選を勝ち取った長野県は、小学三年生まで拡大します。田中知事は四年生以上も、〇四年度以降、「意欲ある市町村の協力を得て拡大したい」と表明しています。
このように「少人数学級」が大きく広がっている背景には、学力問題やいじめ・不登校など子どもと教育をめぐる困難を何とかしたいという国民の強い思いがあります。
沖縄県那覇市の教育委員会が、小中学校の保護者を対象にしたアンケート調査(昨年十月)でも、国が定めた学級編成の標準「四十人」について八割近い人が「適当でない」と考え、四割が「財源にかかわりなく少人数学級を導入した方がよい」と答えています。「新たな財源が必要なら現状のままでよい」は二割にとどまり、「少人数学級」への保護者の関心の高さ、要求の切実さがうかがわれます。
「少人数学級」に踏み出した自治体では、保護者や教職員、何より子どもたちから歓迎する声があがっています。
山形県教育委員会が昨年十二月発表したアンケート調査でも、「少人数学級」になって、学習面で75%の子どもたちが「毎日の学習が楽しくなった」と答え、67%は「先生の指導がていねいになった」と実感。学級生活の面でも「友だちが増えた」という子どもは89%、「学級が楽しくなった」も72%にのぼります。
国に対して、地方自治体まかせにせず、財政負担を含めて国の責任で、国の標準を「四十人」から「三十人」に引き下げるなど「少人数学級」に一刻も早く踏み出すよう迫る運動が重要です。
同時に、実施していない自治体にも、実施している自治体の経験に学んで実施するように求めたい。それが国の責任による実施や財政支援を実現する大きな力になることは間違いありません。(地方部 村崎直人記者)