日本共産党

2003年3月19日(水)「しんぶん赤旗」

「米国には攻撃する主権がある」

国際秩序に挑戦する米大統領


 「米国には国益を守るために武力行使する主権がある」―十七日、ブッシュ米大統領はこう述べました。しかし同大統領の最後通告宣言は、国際社会の一員として守るべき法も、国際政治の現実、道理も無視し、イラクの大量破壊兵器問題を平和的に解決する道を閉ざし、自分のいいなりの国をつくるために戦争するという無法を押し通そうとするものです。

 演説の中で六七八、六八七、一四四一の三つの国連決議をあげましたが、これら決議のどこにも今度の戦争を正当化する文言はありません。武力行使が「権限の問題でなく、意志の問題だ」というに至っては言語道断です。ある国が国際法も国連も無視して勝手に審判を下し、戦争を始めてよいという理屈は通りません。

 マレーシアのマハティール首相は、国際連盟崩壊の歴史をあげて「世界の破滅」を警告しました。戦争は違法、例外は侵略に対する自衛反撃と国連決議があったときのみ、という現在の世界秩序は人類が長い悲惨な戦争の歴史を経てようやくたどり着いた枠組みです。ブッシュ大統領の表明はそれを一挙にたたき壊すものです。

 ブッシュ大統領の最後通告は、自分勝手な主張を押し通そうとして国際的に孤立したあげくの対応です。米国の先制攻撃に同調を求めることしか考えない外交の完全な破たんの結果です。

 ところがブッシュ大統領は破たんの原因を他国に押しつけ、思い通りにならない国連を投げ捨て、戦争を拒否する同盟国を逆恨み、敵視しています。「いくつかの常任理事国はイラクを武装解除させるどんな決議にも拒否権を行使すると公言し、解決を求めようとしない」

 ブッシュ氏の主張とは逆に、現実の国際社会では圧倒的多数が戦争反対、国連を中心とする平和解決を支持しています。戦争同盟者、ブレア英首相の労働党内でクック下院院内総務が辞任したように、戦争遂行者の権力基盤も揺らいでいます。

 イラクでは査察による武装解除が着々と進んでおり、ブリクス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長はあと数カ月必要だと言明しました。国連は、機能しないどころか、着実に成果をあげています。それを乱暴に打ち切ろうとしているのは米国の方です。

 この重大局面でフランス、ロシア、ドイツが安保理の外相会合を要求し、外交による戦争回避の努力を尽くそうとしていることは重要です。戦争によって何十万という犠牲者が出るとみられています。戦争をやめさせるために今必要なのは、米国の横暴をやめさせる声を世界でさらに何倍も高めることです。(山田俊英記者)


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