2003年3月15日(土)「しんぶん赤旗」
医療事故・事件を党略的に利用しての公明党・創価学会と自民党の全日本民主医療機関連合会(民医連)攻撃に、地域住民の批判が広がっています。昨年四月、ぜんそく患者に主治医が薬剤を投与し死亡させた事件をみずから公表した川崎市の川崎協同病院(佐々木秀樹病院長)。安全・安心の病院を目指す真剣な取り組みと、地域の人々の思いを取材しました。(菅野尚夫記者)
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「病院の雰囲気が明るくなりましたね。これなら大丈夫」。川崎協同病院が事件を公表してまもなく一年。リウマチの患者会役員の山本トミ子さん(79)は、再生への取り組みについての感想をそう語りました。
一九五一年三月、川崎医療生協の前身大師診療所が発足した当時から病院を利用してきた山本さん。「なぜ!どうして。当初はみんなショック。衝撃でしたよ。しかしすべて公表されて、経過が見えると着実な歩みをすすめていると感じます。差別のない医療をおこなうという志を現代にあったように発展させようと一生懸命ですよ」といいます。
「患者にとって、お医者さんも、看護師さんも患者のほうを見ていてくれることが、一番の薬なんです」。山本さんは熱い期待で見つめています。
「『いのち』をなによりも大切にすべき医療機関でこのようなことが起きたことは身が引き裂かれる思いです。二度と繰り返してはいけない」。そう決心し、昨年四月十九日、病院長らが事件を公表し、遺族と社会におわびしました。そして「日常医療のありかたを点検・改善し信頼回復のために全力をつくす」と誓ったのです。
「よく公表した」「報道を見て心配で来た。整然としていて安心した」。病院利用者の声はさまざまでした。「こんないい病院でなぜ?…」と泣きだす患者もいました。
病院内では連日、全職員集会を開き、事件の内容と経過を病院長から職員に説明しました。
四月二十五日に第一回内部調査委員会を開催。五月に入ると、三十二ある医療生協の組合支部で説明会を開くため、三万五千人の医療生協組合員へ案内状の郵送−。
医師、看護師、職員らは患者本位の医療をと努力を重ねる一方、寸暇を惜しんで患者、組合員、地域の人たちへ説明する活動にとりくみました。 組合員の意見を聞くための「一言アンケート」も発送。返送されてきたアンケートは、四百通にのぼりました。
「今回の件で(病院との)付き合いをやめるとかはありません。患者のために頑張ってください」「信頼を取り戻すためには十年はかかる。頭を下げるだけでなく、具体的な防止策をとることが大切」−−。こんな声がたくさん寄せられました。
川崎区の医療生協組合員の対象世帯一万四千七百軒の大半を職員と組合員が訪問しました。
こうした積み重ねに立って昨年十月、「川崎医療生協とともに市民の医療を守るつどい」が開かれました。
川崎協同病院のすぐわきにある川崎区桜本商店街の渡辺正理事長があいさつに立ちました。
「地域の医療のために協同病院の改革に期待したい。商店街は全力で応援します」
この励ましは、職員の心に希望の灯をともしました。(つづく)
【メモ】川崎協同病院は、事件について遺族に謝罪するとともに、みずから公表し、内部調査委員会と有識者による外部評価委員会(委員長・岩崎榮日本医科大学常務理事)を設置しました。主治医の診療内容を再調査し、主治医の暴走をなぜ未然に止められなかったのか、事件を個人の問題にとどめずに、組織の問題としても徹底的に究明しました。
結果については、外部の専門家で構成する外部評価委員会の点検をうけました。同評価委員会は、病院組織の仕組みと運営、医師の姿勢にも踏み込み六項目の問題点を指摘し、報告書にまとめました。病院は、その提言にそって再発防止に取り組んでいます。