日本共産党

2003年3月9日(日)「しんぶん赤旗」

戦争か平和か
緊迫のイラク安保理協議

軍事で査察左右するな

フランスの発言に強い支持

「多数派は平和解決だ」 議長


米国務長官に 「国際法違反でも戦争か」

 【ニューヨーク7日浜谷浩司】「われわれが決めなければならないのは、世界はどのように統治されるべきなのか、世界のさまざまな危機をどう解決したいのか、ということだ」

 七日の国連安保理。議場を出たフランスのドビルパン外相は、待ち構えた大勢の記者団に向かってこう語りかけました。

 ブッシュ米大統領が前日、「安全保障の問題では、米国はだれの許可もいらない」と述べたことへの痛烈な反論です。

 イラクに対し、国連の枠外で戦争する意思をはっきり表明した米政権。国際社会のルールを無視した違法な行動は許さないと詰め寄るフランス。イラク問題をめぐる国際社会の対立の構図です。

修正案

 しかし、強気にみえる米、英両政権にも、国内外で高まる戦争反対の世論が重圧になっています。国連のお墨付きをなんとか得たい――。その道を探って、英国が切り出した決議案の修正に、米国も応じました。十七日までたった十日以内の「最後の機会」を与えるといって、イラクに「最後通告」をつきつけ、安保理から事実上の開戦ゴー・サインをとりつけようというものです。

 「許可はいらない」といいながら、安保理に新決議案を提出したこと。その決議案が、武力行使容認を明言せず、「決議一四四一」を確認するこそくなかたちをとったこと。それでも決議案採択の見通しがたたず、修正を余儀なくされたこと。これらすべてが、戦争推進勢力は世論に追い込まれていることを示しています。

 ところが、フランスは修正案に対しても、拒否権を発動する姿勢を強く示しました。

 ドビルパン仏外相 「軍事的な理由で査察の日程を左右してはならない。査察団が(イラクの)協力を報告しているのに最後通告を突きつけるのは受け入れられない。それは戦争を意味し、安保理が責任を放棄することだ」

 同外相が発言したとき、修正案はまだ配布されていませんでした。先制パンチの小気味よさに、記者席からは「ブラボー」の声まであがりました。

体制転換

 パウエル米国務長官は、「安保理に出席しているわれわれは、イラクで引き続いている恐怖を忘れないようにしよう」と述べ、「サダムとその体制」を非難しました。

 ブッシュ政権は昨年秋以来、大量破壊兵器の保有にイラク非難の焦点を移し、それまで掲げていた「体制転換」の主張を控えるようになりました。しかし、査察を通じた平和的解決を主張する声が強まり、イラクが査察に協力姿勢を示すようになるにつれて、大量破壊兵器から「体制転換」へと、ふたたび焦点を移してきています。

 ドビルパン仏外相は、「体制転換」論などには「乗らない」と切り込みました。

 「(体制転換は)決議一四四一の目的ではないし、武力は民主主義をもたらす最善の手段ではありえない」

証拠ないと報告

 国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長と、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は報告で、米政権が主張してきたイラクに対する疑惑に答えました。

 パウエル米国務長官が二月五日の安保理で、イラストまで使って主張した「移動式生物・化学兵器製造工場」疑惑。遠心分離機の部品であり核兵器開発疑惑を示すとされた八十一_特殊アルミ管。

 米国が主張したこれらの「違法行為」疑惑について、「禁止された活動の証拠はない」と次々に指摘しました。

 「何年もかかるわけではない。しかし、数週間ではない、数カ月だ」

 ブリクス委員長は、査察に数カ月をかければ問題は解決できることをこれまでにない明確さで示しました。ブッシュ大統領が、イラク侵攻開始までに残された時間を「数カ月ではない、数週間だ」としてきたことへの反論です。

 査察に弱音をもらしたこともある査察団に新たな力を吹き込んだのは、フランス・ドイツ・ロシアが共同提案した覚書でした。

 覚書は、査察団の根拠となっている安保理決議一二八四に立ち戻り、イラクの大量破壊兵器を廃棄する課題と査察活動の重点分野を示すよう求めました。これを受けて、査察団は百六十七nにのぼる作業文書を作成。七日に安保理に提出しました。

 査察作業の具体的な方針が改めて明らかにされたことで、平和的解決の手段が尽くされていないことが示されたのです。

 安保理議場前。会議の議長を務めたギニアのフォール外相が笑みを浮かべながら話しました。

 「多数派は平和的解決だ」

 討論では、これまで姿勢を明らかにしてこなかった非常任理事国の姿勢がより鮮明になっています。

 パキスタンのアクラム大使は、「安保理の使命は平和であって、戦争ではない」と断言。「諸国人民の心情と、国連加盟諸国、非同盟諸国やイスラム諸国会議の見解を考慮に入れなければならない」と指摘しました。

 チリのアルベアル外相は、「平和的解決に到達しうるあらゆる方途を探求すべきだ」と主張し、国連憲章が認める武力の使用は「平和的解決のあらゆる手段が尽きたときだけだ」と強調しました。

 武力行使に道を開く決議案への賛成は、共同提案国の米、英、スペイン以外には、ブルガリアだけ。

 この日のパウエル米国務長官は声がうわずり、はた目にも疲れがみえました。長官はそれでも、決議案の採決を求めることを明らかにしました。採決は十一日にも行われる見通しです。

 会見を打ち切って立ち去るパウエル長官の背中に、一人の記者が質問を投げつけました。

 「新決議案が拒否権で葬られても、戦争するのか? 国際法に違反してもか? 」


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