日本共産党

2003年3月7日(金)「しんぶん赤旗」

日本共産党が告訴・告発

反共謀略本の正体を追う(2)

鳩レース会社変身の裏で


 反共謀略本『拉致被害者と日本人妻を返せ 北朝鮮問題と日本共産党の罪』の出版社、未来書房の素顔は用意周到に準備された何重もの仕掛けで秘匿されていました。

 ――本の奥付に書かれた住所は東京都新宿区新宿七の一六の一二で訪ねても出版社は存在しない。広告に出てくる住所、東京都新宿区西新宿七の一六の一二は事務代行会社。本記載の電話にかけても事務代行会社につながり、用件の取り次ぎのみ。著者の略歴や印刷所にいたってはいっさい本に記述がない。

唯一の手掛かり

 そんな本から得られる唯一の手掛かりは、見過ごしてしまうような小さな活字の「ISBN4−902086−05−0」という数字でした。

 ISBNとは国際標準図書番号のこと。出版社が登録するもので、番号から出版社の住所、電話番号などを知ることができます。登録は義務づけられていませんが、出版取次を通して全国流通させるためには必要。これだけはごまかせなかったのです。

 明らかになった住所は立川市幸町四の五二の一にある公団賃貸住宅の一室。表札には「海野 未来書房、宇野事務所」のプレートが。この住所で会社登記をみると、奇怪な実態が見えてきます。

 現在の未来書房の代表取締役は海野安雄氏。他の取締役には妻の海野静枝、臼井克身両氏、監査役は西村伸一氏。海野氏宅が「本店」でした。

 ところが会社の設立は八年前にさかのぼる一九九五年四月。当時の社名は「チャンピオン社」。東京都荒川区東日暮里にあり、社長は石橋秀明氏。当時の監査役は「海野も未来書房も知らない。当時の社長の行方はもうわからない」と語ります。目的に「鳩の輸送」などとあり、鳩レース関係の出版をしていました。

 約六年間、登記上、役員もいない休眠状態が続き、突然、昨年十月から“鳩会社”が大変身をとげます。

 会社登記で役員を一新。本店も移転。そして、ISBNを登録し、大量出版の体制を完成…。別表のように公明党・創価学会による北朝鮮問題を利用した日本共産党への誹謗(ひぼう)中傷攻撃の開始時期とピタリ一致します。

逃げるように…

 役員はどんな人物か。

 取材班は、海野安雄社長と妻の海野静枝取締役はともに創価学会員で、地域役員をしていた――という複数の証言を得ました。直接、真偽を確認しようと繰り返し、海野宅を訪問しました。ドアごしに応対した妻に創価学会員かどうかを聞いても自分自身のことなのに「わかりません」と語るだけでした。

 取材班が未来書房の正体を追及し、しだいに実態が見えてきたさなかの二月二十七日朝。海野氏は、突然、逃げるように引っ越しを始めました。

 引っ越しに使ったワゴン車は日本図書輸送がリースしていたもの。同社は、創価学会機関紙「聖教新聞」の輸送にもかかわる創価学会企業で知られる会社です。登記上の本店からも消えてしまった未来書房。しかし、その正体は別の角度からさらに鮮明になってきました。(つづく)

謀略本と公明党の動き

 95・ 4・10 チャンピオン社設立(本社、東京・荒川区)

 96・12・ 9 チャンピオン・タイムス日本に商号変更

 02・ 9・17 日朝首脳会談

     9・27 公明新聞、北朝鮮問題で日本共産党への攻撃記事掲載

    10・ 3 チャンピオン・タイムス日本を未来書房(本社・東京立川市)に商号変更登記。海野安雄代表ら4人の役員就任を登記。この時、チャンピオン社の役員の6年前の退任届を登記し、過去6年間の役員の空白が判明

    10・10 冬柴公明党幹事長、拉致問題で反共演説

    10・21 太田昭宏公明党幹事長代行、衆院代表質問で攻撃

    11・14 未来書房、ISBN(国際標準図書番号)を登録

    12・24 未来書房、謀略本『拉致被害者と日本人妻を返せ』発行

 03・ 2・ 8 JR東日本の電車内に謀略本の中づり広告(24日まで)


(1)大手取次店文書は語る 池田大作本といっしょに

(2)鳩レース会社変身の裏で

(3)潮出版社に頼まれた

(4)創価学会人脈と裏事務所

(5)4つの名前をもつ男

(6)販売より広告自体が目的

(7)広告基準に反している

(8)中づり広告、背後に…

(9)製本所は長野だった

(10)未来書房社長の素顔

(11)問われるべきは、だれか


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