日本共産党

2003年3月5日(水)「しんぶん赤旗」

未公開株譲渡は贈賄

リクルート事件

江副元会長に有罪判決


 値上がり確実な未公開株を政治家や官僚ら七人に譲渡し、贈賄などの罪に問われた元リクルート会長、江副浩正被告(66)にたいし、東京地裁は四日、懲役三年、執行猶予五年(求刑懲役四年)の有罪判決を言い渡しました。

 政界、文部省、労働省、NTTの四ルートに及び、計十二人が起訴されたリクルート事件では、自民党の藤波孝生元官房長官(70)、公明党の池田克也元衆院議員(65)らほかの十一人はすでに猶予つきの有罪判決が確定しています。山室恵裁判長は「政界、官界および公的企業の各所に取り入ることでリクルートなどの利益にかなった国政、行政等の運営を実現しようとした」と指弾。全ルートで「値上がり確実ではなく、わいろの認識はなかった」などと無罪を展開した弁護側の主張を退けました。

 一九八八年に発覚、中曽根康弘、竹下登、宮沢喜一の各元首相や森喜朗前首相、加藤紘一元幹事長ら政権中枢を汚染した同事件。判決は、未公開株を譲渡した人数の多さ、その地位の高さ、職務権限の大きさなどを指摘、「大掛かりな疑獄事件」と認定したものの、多くの疑惑政治家は罪に問われることはありませんでした。

請託は公邸/わいろは関連会社で

 「請託は公邸」「競合相手は応援しない」――判決では、収賄側の藤波元官房長官、池田元衆院議員の犯罪が改めて浮き彫りになりました。

 江副被告が、リクルート社の主力だった就職情報誌の存続にかかわる就職協定問題で、藤波官房長官(当時)を訪ねたのは長官公邸でした。

 一九八四年三月十五日、公邸で江副被告は、民間で協定が順守されないのは、国の行政機関が公務員の採用で、協定の趣旨を守っていないからだとし、同協定の趣旨に沿った対応を請託しました。

 その年と翌年の盆と暮れに、それぞれ五百万円の小切手が藤波元長官側へ。判決は、「定期的な献金」とする被告側の主張を退け、わいろであることを認定。請託直後に二千万円を渡すより、分けて定期的に渡すほうが「外部の疑念を招かない」とし、カネの渡し方の巧妙さを指摘しました。

 池田元議員の場合、野党・公明党としての国会質問がかぎでした。官房長官に働き掛けるだけでは、足りない。国会で政府側から、就職協定順守の答弁が必要だ―。これが、当時の江副被告をはじめリ社幹部の認識でした。幹部の一人が衆院予算委員で文教委員の池田元議員と面識がありました。議員会館を訪ねた幹部に、池田元議員は質問することを了承。重要部分に下線がひかれた質問原稿案がリ社から渡されました。

 質問後、池田元議員側からカネの要求がありました。妻が役員の会社とリ社関連会社との間で架空契約を結び、計五百万円が流れました。さらに未公開株五千株も。

 「わいろでなく政治的支援」という被告側の弁明を判決は切って捨てました。池田元議員の選挙区だった旧東京三区には、江副被告の大学時代からの友人で支援をしてきた小杉隆氏(自民党)がいたことを指摘。「競合関係にある池田元議員を政治的に応援するのは不合理」として、池田元議員側への資金提供のわいろ性を認めました。


解説

“企業献金はわいろ”

 日本共産党をのぞく当時のすべての政党を総汚染したリクルート事件発覚から約十四年。贈賄側の「主役」、江副浩正前会長への有罪判決は、一つの区切りとなるものです。

 江副被告は「未公開株は値上がり確実ではなく、わいろの認識はなかった」と主張してきましたが、判決は、未公開株の取得は「一般人にとって極めて困難であったことは明らか」とのべ、「店頭登録後に見込まれる利益は贈収賄罪の客体となる」とわいろであることを認めました。

 江副被告の犯行の動機について、判決はリクルートグループの総帥として「リクルートなどの利益にかなった国政、行政等の運営を実現しようとしたもの」と強調、カネの力で政治や行政をゆがめようとしたことを断罪しました。

 同時に判決では、自民党の藤波孝生元官房長官への盆暮れの各五百万円の献金について「政治献金として正規の処理をすることと、わいろであることは矛盾しない」と指摘、リ社側が政治献金として処理しようと、わいろだったと認定しました。

 営利を追求する企業がなんの見返りも期待せず、献金をすることはありえず、いくら政治家の側も政治資金として届け出をしてもわいろ性はまぬがれないということです。

 公明党の池田克也元衆院議員については、リ社に資金援助を要請した実弟の秘書が「公明党は政治団体として献金を受け取れない」とのべ、リ社の関連不動産会社と池田元議員のペーパー会社「清雅」と架空の契約を結ぶことで合意。リ社側が「技術指導相談料」名目で三百万円を池田元議員側に送金していたことを明らかにしました。政治資金規正法に届け出をしない「抜け道」を当時、野党だった公明党議員が実践していたわけです。

 今回の判決は、いかに処理しようと企業・団体献金の本質がわいろであり、その禁止が、いま緊急に求められていることを示しています。リクルート事件後、ゼネコン汚職、佐川・暴力団疑惑、ムネオ疑惑など金権・腐敗事件は後を絶ちませんが、そのつど、資金管理団体でカネ集めパーティーを開いたり、みずからが支部長となる政党支部を「財布」とするなど、あの手この手で企業・団体献金集めをしているのが実態だからです。(藤沢 忠明記者)


リクルート裁判の判決結果(追徴金は除く)

【政界ルート】
■藤波孝生元官房長官
 懲役3年、執行猶予4年=最高裁で確定(一審は無罪)
■公明党・池田克也元衆院議員
 懲役3年、執行猶予4年=一審で確定
【労働省ルート】
■加藤孝元事務次官
 懲役2年、執行猶予3年=一審で確定
■鹿野茂元課長(故人)
 懲役1年、執行猶予3年=同
【文部省ルート】
■高石邦男元事務次官
 懲役2年6月、執行猶予4年=最高裁で確定
【NTTルート】
■真藤恒元会長(故人)
 懲役2年、執行猶予3年=同
■長谷川寿彦元取締役
 懲役2年、執行猶予3年=同
■式場英元取締役(故人)
 懲役1年6月、執行猶予3年=同
【贈賄側】
■江副浩正元リ社会長
 懲役3年、執行猶予5年(一審判決)
■元リ社社長室長
 懲役1年、執行猶予3年=最高裁で確定(一審は無罪)
■元リ社秘書課長
 懲役2年、執行猶予3年=一審で確定
■元FF社社長
 懲役1年、執行猶予2年=同
(注)リ社はリクルート、FF社はファーストファイナンス


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