日本共産党

2003年3月4日(火)「しんぶん赤旗」

JCO元所長ら有罪

東海村・臨界事故 地裁判決

「安全管理ずさん」


 茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で作業員二人が死亡した国内初の臨界事故で、業務上過失致死などの罪に問われた当時の事業所長越島建三被告(56)ら六人と、法人としてのJCO(稲見智之社長)にたいする判決公判が三日、水戸地裁でありました。鈴木秀行裁判長は、長年にわたるずさんなJCOの安全管理責任を批判し、越島被告に禁固三年、執行猶予五年、罰金五十万円(求刑禁固四年、罰金五十万円)を言い渡しました。

 ほかの五人は禁固三―二年、執行猶予四―三年(求刑禁固三年六月―二年六月)、法人としてのJCOは求刑通り罰金百万円としました。原子力事故で関係者が同罪に問われたのは初めて。被告はいずれも控訴しない方針。

 一九九九年九月に発生した臨界事故では、放出された放射線のため死亡した二人を含め六百六十六人が被ばく。国の許可から逸脱した違法作業や、臨界事故を想定しないままの安全軽視の操業実態がつぎつぎ明らかになりました。

 同裁判長は、「事故により二人が死亡したばかりか、社会に与えた衝撃はきわめて大きく、原子力の安全性にたいする国民の信頼が大きく揺らいだ」と指摘。「事故を引き起こした背景には、長年にわたるずさんな安全管理体制があった」とのべ、臨界事故の「教育訓練はほとんど実施されておらずきわめて悪質」、「安全軽視の姿勢は厳しく責められなければならない」と批判しました。

 公判で被告側は、国の監督が不十分だったなどとして情状酌量を要求。判決は、被告らの刑事責任を重大だとしながら、同社の歴代の幹部にも責任の一端があり、被告らだけが事故に寄与したとはいえないとして執行猶予を付けました。

 一方、国の責任については、被告側主張は、責任転嫁に等しいと批判。燃料発注元の旧動燃(現核燃料サイクル開発機構)の責任についても、無理な発注の事実は認められないとしました。

設置許可後も安全規制調査

原子力安全委

 政府の原子力安全委員会(松浦祥次郎委員長)は三日、原子力施設が設置許可を受けた後の建設や運転の段階で、経済産業省原子力安全・保安院などが行う安全規制をチェックする「規制調査」の実施方針を決定しました。


JCO公判の各被告の判決

被 告肩書(当時)判 決(求刑)
越島建三(56)東海事業所長禁固3年猶予5年罰金50万円
(禁固4年罰金50万円)
加藤裕正(63)製造部長禁固3年猶予4年
(禁固3年6月)
小川弘行(45)計画グループ長禁固2年猶予3年
(禁固3年)
渡辺 弘(51)製造グループ職場長禁固2年猶予3年
(禁固3年)
竹村健司(34)計画グループ主任禁固2年6月猶予4年
(禁固3年)
横川 豊(58)製造グループ
スペシャルクルー班副長
禁固2年猶予3年
(禁固2年6月)
JCO罰金 100万円
(罰金 100万円)

死者2人、666人が被ばく

 JCO臨界事故 一九九九年九月三十日午前、茨城県東海村のJCO東海事業所で、作業員三人がウラン溶液を製造中、沈殿槽内に制限量の約七倍のウランを含む溶液が注入され、核分裂反応が連鎖的に続く「臨界」が発生。付近住民ら六百六十六人が被ばくし、製造作業に従事していた同事業所の大内久さん=当時(35)=と篠原理人さん=同(40)=が多臓器不全で死亡しました。臨界状態は約二十時間継続、現場から半径三百五十メートル以内の住民に避難要請、半径十`以内には屋内退避要請が出され、国内最悪の原子力事故となりました。


事故の記憶今も/相次ぐ訴訟

 違法操業十四年。未曽有の人災へ審判が下った―。三日、水戸地裁で有罪が言い渡された茨城県のJCO東海事業所で起きた臨界事故。二人が死亡、六百六十六人が被ばくという最悪の記憶から三年半。「不安は残る」。今も恐怖におびえる住民もいます。国の監督や規制に問題はなかったのか。その後も続く検査データの偽装発覚などで、原子力産業への信頼は地に落ちたままです。

◆住  民

 事故当時、JCO東海事業所から半径三百五十メートル以内の住民には避難要請が出されました。「話題にしなくても頭にはいつもある」「ヘリが飛ぶと、また何か起きたのかとびっくりする」。住民らの脳裏から事故の記憶が消えることはありません。

 事故後、茨城県などは毎年、住民を対象とした健康診断を実施。放射線の影響による健康被害は生じていないとしています。しかし、「臨界事故被害者の会」代表世話人の大泉昭一さん夫婦は皮膚病の悪化や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などに悩みます。同会は国に医療補償などを求める要望書を提出しましたが、明確な回答はないままです。

◆補償問題

 これまでJCOと風評被害を受けた企業などとの補償交渉は一月末までに七千件近くが合意に達し(合意率99・7%)、補償総額は計約百四十七億五千万円に上りました。

 しかし、JCO側との溝が埋まらず、訴訟になるケースも相次いでいます。大泉さん夫婦も健康被害などの補償を求め、同社と親会社の住友金属鉱山(本社東京)を相手取り提訴しました。大泉さんは「なぜ住民に対する補償をしないのか」と同社の対応を非難しています。


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