2003年3月4日(火)「しんぶん赤旗」
二百人を超える死者を出した二月十八日の韓国・大邱の地下鉄火災。燃えやすい車両素材、運転士と指令室の過失が大惨事の原因として非難を受けていますが、労組や専門家は、ワンマン運転の導入など安全を無視した強引な人減らしが被害を拡大したと指摘しています。
大邱地下鉄労組は二月二十八日、安全対策の強化を求める記者会見を開き、「赤字を理由にして安全対策をおろそかにしたこと、経営改善を口実にした際限ない人員削減」などが事故の背景にあると強調しました。
とくに相次いで発表された労組の声明は一様に、ワンマン運転車両の導入が最大の問題としています。
韓国鉄道労組は、「現在、首都圏の国鉄の一部や、ソウル地下鉄五―八号線、仁川、釜山、大邱の地下鉄がワンマン運転を導入している」「少なくとも車掌が同乗していれば、ドアの手動開閉が可能で、大惨事にはならなかっただろう」と強調しています。
放火事故発生当時、火災が発生した車両の運転士が状況確認のために運転席を離れたため、中央指令室への連絡が途絶え、反対車線を走行中の車両も正確な情報を知らされず、そのまま駅に進入。上下線の車両が焼け落ちる結果となりました。
また大邱地下鉄労組は、「緊急状況で、運転士一人が列車の運行、通信、乗客保護、ドアの開閉を適切に扱うことは困難だ」と主張します。
釜山市交通公団は一九九八年、労組と合意のうえで釜山大学経営経済研究所に人員管理システムの検討を依頼しました。
同研究所が作成した報告書は、ワンマン運転は事故が増大する恐れがあり、列車運行とサービスの質を落とす可能性がある、というものでした。同研究所によれば、ワンマン運転は車掌が同乗する場合に比べ、事故発生率で約二・四倍、運行遅延率は約七・三倍になります。
同研究所は、プラットホームの安全要員の増員などを提言しましたが、公団は無視、同年七月からワンマン運転の導入を強行しました。ストライキで対抗した労組員のうち三十九人を解雇しました。
経営の効率化を理由に、ワンマン運転の導入をはじめ駅員の削減を図っているのは、韓国各地の地下鉄に共通しています。(面川誠記者)