日本共産党

2003年2月28日(金)「しんぶん赤旗」

イラク戦争は世界経済に打撃

膨大な戦費、同盟国に押し付け

原油価格上昇でGDPマイナス


 フランス、ドイツ、ロシア、中国、非同盟諸国など世界の圧倒的世論が、対イラク軍事攻撃に反対する中、米国は戦争への準備を進めています。戦争がおきた場合、はかりしれない数の犠牲者を生むだけでなく、難民流出、物的損害が、イラクをはじめ中東諸国にかぶせられるのは明白です。さらに世界経済に重大な影響を及ぼすのは必至です。すでに、不安定な中東情勢のため、石油価格はすでに上昇し、米国、日本など各国の経済を圧迫し始めています。(外信部・伊藤元彰)

 米議会予算局は昨年九月、イラク攻撃に伴う軍事作戦費用だけでも「毎月六十億―九十億ドル」(約七千二百億―一兆八百億円)と発表。戦争後の占領諸経費を「毎月十―四十億ドル」、すでに開始している兵力配備と撤退費用を合わせると「百四十億―二百億ドル」になるとの試算を明らかにしました。

 たとえば、湾岸戦争と同じく約一カ月半戦闘が続いた場合、その後一年間でイラクの民主化などを進めたとすると、その総額は、三百五十億―八百十五億ドルになります。

 戦費は、さらに膨れ上がるとする試算があります。

 「すべて発表されている資料を基に試算した」という下院予算委員会民主党議員団の報告は、議会予算局を大幅に上回る、最大九百三十億ドル(約十一兆一千六百億円)としています。

 カーター政権時代に大統領経済諮問委員会のメンバーを務めたイエール大学の経済学者ノードハウス氏は、今後十年間のあらゆる経済的影響も考慮すると一兆六千億ドル(約百九十二兆円)にも達すると警告しています。

一国のGDP超える費用

 試算はさまざま出されていますが、仮に一千億ドルぐらいだとしても、たとえば、約六千四百万人のエジプトの国内総生産(GDP)九百八十三億ドル(二〇〇〇年)を超えます。破壊と殺りくのために、ゆうに一国のGDPを超える費用が使われるのです。

 しかも重大なのは、ブッシュ政権は、その費用の大部分を同盟国に押し付けようとしていることです。この膨大な経費の八割を同盟国に負担させたい意向だともいわれています。

 二〇〇四年会計年度の米予算教書では、米国が過去最高の財政赤字となることが明らかになりました。

 この予算教書には、イラク攻撃が行われた場合の戦費は含まれておらず、戦争が起きた場合米国の財政赤字が膨大なものになるのは明らかです。

 一九九一年の湾岸戦争では、総額六百十億ドル(=当時=約七兆三千二百億円)が使われました。

日本の負担は1兆7千億円?

 とくに、日本にたいする負担要求は相当なものになるとみられています。湾岸戦争の時は、総額の約18%の負担が日本に押し付けられました。

 今回のイラク攻撃でも同様の割合で負担が押し付けられると、最も低いランクである米議会予算局の試算でも、「約七千五百六十億―一兆七千六百四億円」が押し付けられることになります。

 同盟国のうち、ドイツなど、湾岸戦争で戦費を負担した国が、今回の攻撃には否定的であることから、日本に押し付けられる負担額はさらに増えることも予想されます。

消費低迷や進む投資抑制

 対イラク戦争で、世界的な消費低迷や企業の投資抑制が進むとみられています。

 湾岸戦争時で起きたように、イラク国内の油井が破壊されるとの不安感や、湾岸地域を航行するタンカーの安全性の問題などに嫌気して、最近の石油価格は、国際的基準価となっている一バレル当たり二十五ドルを大きく上回っています。

 米原油市場では、一バレル三十六ドル四十八kと一年前より十五ドル以上値上がりする高値水準となり、米国内の燃料費を上昇させています。今年二月の軽油価格は、現在の算定方法が導入されて以来の最高値を更新しました。

 国際通貨基金(IMF)は、原油価格の上昇が国際経済に与える影響として、年間を通じて原油価格が十ドル値上がりすると世界のGDPを平均で0・6%引き下げると指摘しています。日本、米国、欧州連合(EU)などではそれぞれ0・8%マイナスになるとしています。

 豪州連邦準備銀行のマクキビン氏らは、イラク戦争が各国のGDPに与える影響を報告。一国当たりのGDP下落幅では、米国についで日本が世界ワースト2となり、三百三十億ドル(約三兆九千六百億円)減少すると指摘しています。

 さらに、前述のノードハウス氏は、オイルショック(石油危機)が起きなかった湾岸戦争後や米国同時多発テロ後にも、経済活動が下降したことを指摘。イラク攻撃後に、こうした石油価格の上昇が起きなかったとしても、二〇〇三年から〇四年の一年間に米国は、GDPの2・4%を失うと予測しています。

 すでに多くの困難を抱える世界経済がさらに混迷を深めることは明白で、日本はその影響をもろに受けるでしょう。

住民犠牲に国内から批判

 民主党のクシンニチ下院議員は「どうしてイラクを破壊するために、われわれががんばって稼いだ税金を二千億ドルも使う準備をしなければならないか」と批判。クリントン政権期に、国防予算を担当したジョージワシントン大学のアダムス氏は、ニューヨーク・タイムズ紙にイラク戦争にかかわる膨大な費用を図解し、戦争が「これだけのお金を支払うのに値するのかどうか議論しよう」とのべるなど、経済的な側面からもイラク戦争に反対する声が上がっています。

 全米二州、九十以上の都市の議会がイラク攻撃反対の決議をしています。その一つの理由として、戦争経費が住民を犠牲にする点をあげています。ロサンゼルス市議会は、対イラク戦争の準備で国から補助金が減り、教育などに支障がでているとして、「一方的な対イラク戦争」に反対する決議を賛成多数で採択しました。こうした声は、さらに広がるものとみられます。


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