2003年2月27日(木)「しんぶん赤旗」
「厳しい財政の中、地方自治体本来の役割を果たす点で、大きな希望ある予算案」。田中康夫長野県知事のもとでつくられた二〇〇三年度当初予算案について、日本共産党の石坂千穂県議団長はこう評しました。予算案は、大型開発優先のツケを福祉・教育の切り捨てにむける政治の流れに抗し、「自治体らしい自治体」をめざす方向に大きく踏み込みました。 (長野県 原広美記者)
![]() 洞入沢砂防ダムは田中知事視察後に年度内着工が見送られた=1月21日、長野県須坂市 |
旧県政は公共事業に年間四千億円、社会保障に千二百億円という典型的な「大型開発優先、暮らし・福祉・教育後回し」県政でした。福祉や医療は全国最低水準。土木費だけが突出し、全国ワースト二位・一兆六千億円の借金を背負いました。
こうした旧県政の流れを変えてほしいとの県民の期待を担って登場した田中県政は、〇二年度で公共事業二千四百億円、社会保障千四百億円にまで改善させ、借金も抑制しました。さらに〇三年度予算案は「財政改革推進プログラム」(注)のもと、より強くより意識的に、公共事業依存体質からの脱却と福祉・医療・教育・環境・雇用対策を重視しながら、財政再建を進める方向を打ち出しました。まさに、「従来型の公共事業に頼らず、福祉・医療、教育、環境、雇用に重点を置いた県政改革の方向が明確に示された」(石坂団長)予算案です。(グラフ参照)
|
〇三年度当初予算案は総額九千三百五十六億円で、前年度当初比4・9%減の緊縮型です。前年度より、公共事業・県単独事業は三百三十三億円削減する一方で、福祉・医療・教育などは実質四十億円増額。それでも、借金は二十八億円減らします。(表参照)
また、県職員給与を前年度比2・9%減額。これは、「県地方公務員労働組合共闘会議」が県政改革を進めるために、田中知事が示した給与減額提案を受け入れて実現したものです。
| 2003年度長野県予算案の概要 |
|---|
◇予算規模 |
特別保育の拡充や不登校児童・生徒の支援体制整備などには、関係者から「きめが細かい」など歓迎の声があがっています。新設される家庭介護者緊急時安心ネットワーク事業に、三浦キミさん(79)は「いざというとき、ヘルパーさんが来てくれたり、泊まりで預かってもらえるのかい? ありがたい」と語ります。
教育分野では、〇三年度に教員を二百四十五人増員して、小学校三年生までの三十人規模学級実施などに充当します。
障害児と向き合っている男性教諭(32)は「二年生までの三十人規模学級が、三年生まで拡大された。うれしい。これなら賃金減額も納得できる」といいます。
石坂団長の議会質問に田中知事が早期廃止を表明した同和対策事業。運動団体への補助金・委託料などを約一億二千万円(対前年度比40・7%)削減するなど終結に向けて動きだしています。
(注)財政改革推進プログラム 段階的に県単独の公共事業を50%、国庫補助の公共事業を40%カット。県民生活を支える分野には予算を重点配分する「長野モデル創造枠予算」を創設。財政再建と暮らし充実を両立させ、自治体らしい自治体づくりの大きな展望を示しています。
予算案に対する日本共産党の立場と提案は際立っています。
旧県政の一翼を担ってきた旧「オール与党」県議は、知事選後も公共事業削減に激しく抵抗。知事に「景気が悪くなる」「公債費が増加するにしても公共事業の増加策を」などと迫りました。
対照的に日本共産党県議団だけが、公共事業を生活密着型・環境型重視に振り向ければ、総額を減らしても地元業者の仕事や雇用を増やし、地域経済立て直しにもつながると主張しました。
三十人規模学級の拡大など県民とともに求めた多くの要望が、予算案に盛り込まれました。
日本共産党は四年前の県議選挙で、無駄な公共事業をやめて福祉・医療・教育・環境に振り向ける実績と政策を掲げ、二議席から五議席に前進。二〇〇〇年の知事選挙でもそれを争点に押し上げる中、県民は四十二年間続いた自民党官僚県政に終止符を打ちました。
今、公共事業見直し、福祉・教育・環境を重視する流れは、大きな流れになりつつあります。「この新しい流れを進めるか、押しとどめ逆流させるか」。予算案を論議する二月県議会、四月の県議選の対決軸です。