2003年2月22日(土)「しんぶん赤旗」
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四十四人が死亡した東京・新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災で二十一日、被害者二十五人の遺族が「明星56ビル」所有会社・久留米興産と、その実質経営者の瀬川重雄容疑者(61)―業務上過失致死容疑で逮捕―、同社社長・山田一夫容疑者(50)―同―ら六人に損害賠償を求めて東京地裁に集団提訴しました。
訴状によると瀬川容疑者は「経営全般について決裁を行い、管理運営について実質的最高決定権を持っていた」にもかかわらず、「ビル内の人の生命身体の防災上の安全確保をする注意義務」を怠ったり、利益追求を優先し、消防法の規則を順守することを放置したと指摘して、被害者一人あたり一律五千万円、総額十二億二千五百万円の損害賠償を請求しています。
訴状は、防火戸が正常に閉まっていたならば一酸化炭素の流入によって店舗内での致死量に達するまでに約二十分間かかり、死亡者全員が助かった可能性が実験で明らかになっていること、避難経路が確保されていなかったこと―など複合的な要因が大惨事につながったと強調しています。
三月に七遺族が第二次提訴する予定です。
提訴後に原告らは記者会見。長男の谷繁聖司さん―当時(24)―を亡くした父親孝信さん(54)は「息子が亡くなったビル現場を見て、人命軽視だったことを強く感じた。否を認めて謝罪してほしい」と訴えました。
「今後こうしたことが起こらないように責任をきっちりとって」と話すのは、篠沢勇さん―当時(38)―の親類にあたる飯田玲子さん(40)。「これまで謝罪の言葉もなかった」とビル所有者の不誠実な態度に怒りを新たにしていました。
夫を亡くした三十五歳の女性は「人の前に出るのはためらいましたが、人災であり、責任を追及していく」と語り、「何の理由もなく夫は突然亡くなりました。人生を変えられたこんなにおおぜいの人がいることを(ビル所有者は)思い起こしてほしい」と訴えました。