2003年2月8日(土)「しんぶん赤旗」
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長崎で被爆し、被爆者援護法に基づき健康管理手当を受給していた韓国人の李康寧(イ・カンニョン)さん(75)が帰国を理由に手当を打ち切られたのは違法として、国と長崎市に手当の未払い分の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が七日、福岡高裁でありました。石塚章夫裁判長は「手当を受給する要件が消滅したことを認めるに足りる証拠はない」と述べ、未払い分約百万円の支払いを国に命じた一審長崎地裁判決を支持、国と原告双方の控訴を棄却しました。
在外被爆者に手当支給を命じた高裁判断は、郭貴勲さんに手当を支払うよう大阪府に命じた昨年十二月の大阪高裁に続くもの。国と府は上告せず、この判決が確定し、国は手当の支給認定を受けた人に対し、出国後も手当を支給する方針を決定しています。
判決は援護法の立法趣旨について「根底には戦争遂行主体であった国が自らの責任において被爆者の救済を図る国家補償的配慮があったと考えられる」と指摘しました。
国と長崎市のどちらに手当を支払わせるかについて、判決は「支給認定を受けながら国外に出た被爆者については、事務を行う権限や責務に関する定めがない。この場合、国から自治体の長に機関委任した事務の費用は国が負う」として、大阪高裁とは異なる判断を示しました。